[2014年第5週]ドコモとKDDIの3Q決算、心拍数を計れる服地開発、JAL国内線機内でネット
2014.02.03
Updated by Naohisa Iwamoto on February 3, 2014, 16:30 pm JST
2014.02.03
Updated by Naohisa Iwamoto on February 3, 2014, 16:30 pm JST
NTTドコモは減収で営業減益、最終増益という決算になった。第3四半期までの通期(4月〜12月)では、営業収益が3兆3636億円で前年同期比0.2%の減収、営業利益が6887億円で同1.9%の減益だった。当期純利益は4302億円と同3.3%の増益を確保した。音声収入の減少、月々サポートの影響が、パケット収入やそのたの営業収益の増加を上回り減益の決算となった。ただし、2013年9月のiPhone導入後のドコモは様々な指標で回復基調にある。純増数は前年同期比で2倍、12月には純増シェアトップに返り咲いた。MNPの流出もiPhone発売以来、毎月順調に改善している状況だ。ドコモでは、iPhone発売後に競争力は着実に改善しているとして、若年層と家族に積極アピールする春商戦に取り組んでいく(報道発表資料:NTTドコモ 2013年度 第3四半期 決算説明会:PDF)。
KDDIは第3四半期までの通期で、増収増益の好調な数値を残した。営業収益は3兆1799億円で前年同期比17.3%の増収、営業利益は5332億円で同34.8%の増益、当期純利益は2687億円で同49.0%の増加となった。通信量増収による増益貢献が70%を占めるとともに、J:COM連結が貢献した。MNP純増が27カ月連続でトップ、通信モジュールを除いた純増数で3社トップなど、ユーザーの評価が増収増益につながっている。固定電話とのセットの「auスマートバリュー」は浸透率が18%に達し、アプリ取り放題などの「auスマートパス」が12月末に888万会員、進捗率が74%に達するなど、スマートフォンへの施策の効果が現れてきているようだ(報道発表資料:KDDI 2014年3月期第3四半期決算:PDF)。
ただし、スマートフォンシフトへの過大な期待はリスクを含んでいる。MM総研が2013年の国内携帯電話端末の出荷台数の調査結果では、市場の伸び悩みが見えてきた。2013年の総出荷台数は前年比10.2%減の3929万台。スマートフォンの出荷台数も前年比3.7%減の2928万台にとどまった。メーカー別の出荷台数は、アップルが1277万台(前年比25.3%増)でシェアを32.5%(前年比9.2ポイント増)とし、2位以下との差を広げて首位を守った。MM総研は2013年の出荷台数が低調だったことについて、2つの要因を指摘している。1つは、キャリアによる過剰なiPhone優遇施策によって他メーカーのAndroidスマートフォンと正当な競争環境が形成されていないこと。もう1つは、フィーチャーフォンユーザーによるスマートフォンシフトのペースが予想以上に早く鈍化してきていることである。iPhone頼み、スマートフォン頼みの施策だけでは将来の見通しが立たない可能性もある(関連記事:2013年の国内携帯出荷数は前年比1割減、スマホ比率は74.5%に上昇--MM総研)。
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将来の新しいサービスを感じさせる技術関連のニュースが豊富だった。東レ、NTT、NTTドコモは、服を着ているだけで心拍数や心電波形などの生体情報を取得できるようにする新しい機能素材「hitoe」を開発した。2014年中に「hitoe」を使ったウエアとスマートフォンサービスの提供を開始したい考えだ。東レとNTTは、実用化に成功したhitoeを使って、生体情報計測用ウエアの商品化に取り組む。一方、NTTドコモはhitoeを使った生体計測用ウエアなどのウエアラブル製品を活用したサービスの提供を進める。ドコモ・ヘルスケアが提供する健康プラットフォーム「WM(わたしムーヴ)」との連携や、スポーツ・健康増進分野でのサービス提供を目指すという(関連記事:着ている服が自動的に生体情報を取得、東レとNTT、ドコモが実用化へ)。
NTTは、テレビ電話やテレビ会議の拡張マイクとしてスマートフォンのマイクを活用できるようにする技術を開発したと発表した。「振幅スペクトルビームフォーマ技術」と呼ぶもので、遅延の異なる音声信号を適当に混合して、相手に聞き取りやすい音声を提供する。今回開発した技術では、テレビ会議システムなどとWi-Fiで接続したスマートフォンのマイクを拡張マイクとして使い、音声を聞き取りやすくすることに成功した(関連記事:NTT、スマホをテレビ会議のワイヤレスマイクにして聞き取りやすくする技術を開発)。
国際標準規格への貢献の話題。ソフトバンクモバイルとソフトバンクテレコムは、両社が開発した高速・広帯域移動通信システム対応の「時間・空間電波伝搬推定法」に関する国際標準勧告が承認されたと発表した。国際電気通信連合 無線通信部門(ITU-R)の標準化で、両社の提案が単独ですべて標準化されたのは初めてのことだという。標準化をすべて完了し、ITU-R P.1816-2として勧告された。標準化された推定法を使うことで、無線伝送技術の設計やセル設計のシステムにおいて通信事業者は、より効率的に移動通信ネットワークシステムを構築できるようになる(関連記事:LTE-Advancedなどのシステム評価に使う「時間・空間電波伝搬推定法」、ソフトバンクが開発した手法が国際標準に)。
災害対策に新しい手法。NTTは、東日本大震災の教訓をふまえ、東北大学、富士通、NTTコミュニケーションズと共同で推進する研究開発プロジェクトの一環として、大規模災害時に通信の即時回復を可能とするICTカーを開発した。通話や情報処理などのICT環境の提供に必要な装置類をコンパクトに収容したバンタイプの自動車で、可搬型のIP-PBXユニット、サーバー、無線アクセスポイント、電源、アンテナ等が搭載されている。ICTカーを被災地に搬送・設置することで、半径500m以内のエリアを短時間にWi-Fiエリア化する。さらにICTカーよりも小さいソリューションとして、必要モジュールだけをアタッシュケースに入れた「アタッシュケース型ICT-BOX」も開発。構成機能を限定して被災地に人が移動するだけで最低限の連絡手段を即時に提供する(関連記事:NTT、大規模災害時に通信の即時回復を可能にする「ICTカー」を開発)。
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現実的な新しいサービスのトピックを2つ紹介する。日本航空(JAL)は、国内線に機内インターネット接続サービス「JAL SKY Wi-Fi」を導入する。2014年5月に予定している機材刷新プロジェクト「JAL SKY NEXT」の一環として提供するもので、ボーイング777-200/-300型機、ボーイング767-300/-300ER型機、ボーイング737-800型機の計77機に2014年7月から2016年前半にかけ順次導入する。国内線のインターネット接続サービスの導入は初となる。インターネット接続は有料で、30分400円の「時間制プラン」と1フライトの間制限なしに利用できる「フライトプラン」の2つの料金プランを用意する。JALマイレージバンク会員には、マイルをインターネット接続無料クーポンに交換できる特典を用意する(関連記事:JAL、2014年7月から国内線に機内インターネットサービスを導入)。
電気通信事業者協会(TCA)会員の携帯電話、PHS事業者各社は、災害発生時の安否確認を目的とした「災害用音声お届サービス」の相互利用の対象にイー・アクセスとウィルコムを追加した。これまでNTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー電話、ソフトバンクモバイルの4社で相互利用を行っていたが、イー・アクセスとウィルコムの2社が加わり、携帯電話・PHSの6社で災害時に音声メッセージを送付するサービスの相互利用が可能になった(関連記事:災害用音声お届けサービス、イー・アクセスとウィルコムも相互利用可能に)。
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