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[2014年第10週]2月はドコモ純増首位、IIJも音声付き格安SIM、スマホで寄付が簡単に

2014.03.11

Updated by Naohisa Iwamoto on March 11, 2014, 10:00 am JST

2014年2月末の携帯電話契約数データで、NTTドコモが1カ月おきとなる首位を獲得した。累計契約数ではKDDIが4000万件の大台に到達、ドコモのXiは2000万件を突破した。話題のMVNOではフォーラムが開催され、今後の方向や課題について議論がなされた。インターネットイニシアティブ(IIJ)は格安SIMで音声付きの新サービスを提供する。スマートフォンで手軽に寄付ができるソリューション、位置と連動したO2Oソリューションなど盛りだくさんのニュースがあった一週間だった。

ドコモが復調は本物?

電気通信事業者協会(TCA)は、2014年2月末の携帯電話契約数のデータを発表した。大手3社の契約数は合計で1億3789万2300となり、前月比0.5%の増加。純増数では、NTTドコモが26万7900件で2013年12月から1カ月空いたものの首位を確保した。KDDIは22万500件、ソフトバンクモバイルは26万6000件といずれも大きな純増となった。春商戦は例年3月がピークだが、今年は商戦が前倒しになっている様子が見て取れる。

通信モジュールの件数を差し引いた純増数は、NTTドコモが26万4600件、KDDIが19万5400件、ソフトバンクモバイルが19万件となった(報道発表資料:2014年02月末現在 事業者別契約数)。

各社の発表によるMNP(携帯電話番号ポータビリティ)の転出入状況は、KDDIが4万1600台、ソフトバンクモバイルが9000件の転入超過、NTTドコモは4万8100件の転出超過だった。ドコモは転出超過が続いているが、1月の8万1000件から状況が改善した。ドコモの復調は純増数、MNP双方の数字に表れている。ドコモのLTEサービス「Xi」は、2月に71万8900件の純増で、累計契約数を2055万4400件とし、2000万件の大台に乗せた。

また、KDDI、沖縄セルラーは、au携帯電話の契約数が、2014年2月24日に4000万件を突破したと発表している。2月末の各社の累計契約数は、NTTドコモが6258万9700件、KDDIが4002万7300件、ソフトバンクモバイルが3527万5300となった(報道発表資料:〈お知らせ〉 au携帯電話契約数の4,000万突破について

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MVNOの課題と議論、音声付き格安SIMにIIJも参入

2014年3月6日、総務省及び一般社団法人テレコムサービス協会(以下テレサ協)MVNO委員会は「MVNO2.0フォーラム」を開催した。移動体通信契約者数は約1.5億件、そのうちMVNO契約者数は1257万人にのぼるが、うち約半分はMNO間の通信ネットワーク相互利用であり、本来の意味でのMVNOのシェアは約4%にとどまる。このような現況の中、移動体通信料金の低廉化や、特に2020年の東京オリンピック・パラリンピックをターゲットにしたサービスの多様化など、MVNOに求められる役割と課題について議論が行われた(関連記事:2020年に向けたMVNOの課題とは -MVNO2.0フォーラム開催)。

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音声付きの格安SIMにインターネットイニシアティブ(IIJ)も参入する。「IIJmio高速モバイル/Dサービス」にLTE対応の音声機能付きSIMカードを追加、「みおふぉん」の愛称で、3月13日に提供を開始する。みおふぉんの料金は、パッケージ代金が3000円、月額料金と音声通話機能付帯料の合計が「ミニマムスタートプラン」で1900円(月額900円+付帯料1000円)から。ミニマムスタートプランには毎月500MB(4月1日以降は1GB)の高速データ通信が可能なバンドルクーポンが付属する。音声通話の料金は30秒20円で、無料通話は付かないが、これらは大手携帯電話事業者のLTEプランなどと同様だ(関連記事:IIJ、音声機能付きで月額1900円から使えるSIMカード「みおふぉん」を発売)。

スマホだけで寄付できるソリューションがドコモとソフトバンクから

募金や寄付がスマートフォンから手軽にできるようになる。まずNTTドコモは、個人間送金やショッピングの支払いなどが出来るサービス「ドコモ口座」で、佐賀県への「ふるさと納税」を可能にした。申し込みから支払いまでを「ドコモ口座」だけで手続きできる。支払い方法は、ドコモ口座の入金分から支払う方法と、毎月の携帯電話料金と合算する方法を用意する。寄付手数料は無料、1円単位で寄付金額を設定できる(報道発表資料:ドコモ口座を活用した「ふるさと納税」を開始)。

一方、ソフトバンクモバイルは、スマートフォンアプリで募金できる募金プラットフォーム「かざして募金」の提供を開始した。スマートフォンのアプリで、参加する非営利団体が登録したロゴ、文字、ポスターなどの画像を読み取ることで、各団体の募金サイトにアクセス。6つの設定金額から寄付金額を選択するだけで募金ができるプラットフォームだ。募金額は月々の携帯電話利用料金とまとめて支払えるため、クレジットカード番号などの個人認証の入力が不要で手軽に募金できる。アプリはAndroid向けを提供、iOS向けは2014年夏ごろをメドに公開予定。3月5日時点で、あしなが育英会、日本骨髄バンクなど37団体が参加している(報道発表資料:日本初の募金プラットフォーム「かざして募金」を提供開始)。

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音波やビーコンなど位置を使ったソリューション

NTTドコモは、音波技術を使ってスマートフォンアプリにチェックイン機能を組み込むことができるソリューション「Air Stamp」を提供開始した。ドコモのO2Oサービス「ショッぷらっと」で培った音波技術によるチェックイン機能をオープン化し、モバイルサービス提供事業者向けにソリューションとして提供するもの。チェックインサービス構築のために必要な音波装置や対応アプリの開発環境をドコモが提供する。JR東日本は、同社が提供を始めた情報配信アプリ「JR東日本アプリ」内のコンテンツ「山手線トレインネット」では、Air Stampを使用して乗客の位置に応じた車両の停車駅案内、ホーム駅案内、各号車の温度、混雑率など運行関連情報をリアルタイムで提供している(関連記事:ドコモ、音波を使ったチェックインソリューションを提供開始、JR東のアプリにも搭載)。

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特定の場所で端末に情報を提供できるソリューションとして注目されるビーコンにも動きがあった。アプリックスIPホールディングスは、厚さ0.8mmの「極薄フィルム型Beacon」を開発した。極薄フィルム型Beaconの開発により、ポスターや電車の中吊り広告などからスマートフォンに情報やクーポンなどをプッシュ配信するO2Oツールに利用できる環境が整う。極薄フィルム型Beaconは、既存のBeaconモジュールと同様、セキュリティ機能や不正アクセス防止機能を備える。センサー連携、データストレージ機能などを実現する双方向通信も可能だ(関連記事:アプリックス、フィルム型Beaconを開発しポスターや中吊り広告へ用途を拡大)。

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テレビ、ショッピングなどサービス拡充、災害対策も進む

この週のトピックを紹介する。コンシューマ向けのサービスでまず2つ。NTTぷららは、映像配信サービス「ひかりTV」のビデオ作品をスマートフォンやタブレットにダウンロードして視聴できる機能を提供開始したと発表した。ダウンロード済みのビデオ作品は、電波が届きにくい環境でも安定して高画質で楽しめる。「ひかりTV」のいずれかのプランに加入しているユーザーが、「ひかりTVどこでも」のアプリをモバイル端末にインストールすることで利用できるようになる。対応する作品数は、開始当初で約3000本。その後、順次追加を予定している(関連記事:NTTぷららの「ひかりTV」、スマホなどでビデオ作品のダウンロード視聴が可能に)。

もう1つはLINEが展開するスマートフォン向けのECサービス「LINE MALL」の出品・販売に関する手数料を、同日から完全無料化したニュース。LINE MALLでは出店・出品料だけでなく、商品の販売価格の10%を徴収していた販売手数料も含めて、手数料を完全無料化する。出品へのハードルを下げ、商品の多様化を狙う。また、LINE MALLのiPhone版を提供したことをアナウンスしたほか、アプリ内に新カテゴリーとして「LINEセール」を設けることを発表した(関連記事:LINE、スマホ向けECサービス「LINE MALL」の手数料を完全無料化、iPhone対応も)。

アプリ開発の検定も始まる。D2Cとジークラウドは、iOS、Android OS向けアプリ開発技術に関する検定試験「スマートフォンアプリ開発技術検定試験(略称:スマ検)」の受講者の募集を開始した。対象はスマートフォンアプリ開発に携わる法人および個人で、受験料金は無料。法人向けと個人向けの2コースを設けており、ASPによって提供されるので、いつでも検定試験を受験できる。法人コースでは、「スマ検」を利用する企業が設問の設定を行えるので、自社開発者向けに設問をカスタマイズすることが可能となっている(関連記事:D2Cとジークラウド、スマートフォンアプリ開発技術検定試験の受講者募集を開始)。

東日本大震災から3年の節目を前に、通信設備の災害対策も進められている。KDDIは、大規模災害が発生したときに携帯電話サービスを継続して提供できるようにするため、「災害用大ゾーン基地局」を導入した。首都直下地震への対策を主にしたもので、2014年2月26日に首都圏エリアをカバーする全10局の設置が完了した。KDDIによれば、LTEに対応した災害用大ゾーン基地局の導入は国内初という。災害用大ゾーン基地局は、1局で半径約7kmという広いエリアをカバーし、災害で通常の基地局や通信網が利用できなくなった際に通信インフラを確保する。音声通話だけでなく、4G LTEおよび3Gによるデータ通信も可能だ(関連記事:KDDI、「災害用大ゾーン基地局」を首都圏に10局設置し運用開始)。

昨年の第10週のできごと

・健康、子ども、災害時対策--ドコモの施策
・スマートフォンではない端末にも新製品
・キリ番を超えるサービスが続々
・NFC推進、知的障がい者のサポート、新しい通信技術の開発

[2013年第10週]ドコモがサービス施策を続々、特徴的な端末いろいろ、2月もソフトバンクが純増首位

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。