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INTEROP TOKYO 2014の季節がやってきました。

2014.05.30

Updated by Tatsuya Kurosaka on May 30, 2014, 15:30 pm JST

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昨年のINTEROP TOKYO 2013に引き続いて、プログラム委員を拝命しました。今年の個人的なテーマは「公共・政策」です。確かに近年、INTEROPコミュニティにおいても重要なテーマになってきたと感じます。

インターネットは日常社会のあらゆる局面に普及し、社会システムそのものをドライブする存在になりつつあります。「なりつつ」とあえて言ったのは、まだその途上にあると私自身は思っているからです。日本国民すべてがインターネットを利用しているといっても、Googleのサービスを使いこなす人から、ガラケーでフィルターのかかったキャリアメールを数日に1回使う程度の人まで、深度や習熟度には大きな差がありますし、習熟度の浅い利用者が増えたからこその問題も、改めて大きくなってきています。

さておき、人はもちろん、様々なモノや空間がネットに接続された結果、そこから生み出されるビッグデータは、経済価値はもちろん、私たち人間がよりよく生きるための不可欠な資源として、大きな注目を集めています。特に日本を含めた先進国は、人口の総数も頭打ち(ないしは減少)し、速度の差こそあれ少子高齢化が進んでいます。「コネクテッド」を前提とした社会で、効率や付加価値を追求しなければ、よりよい社会を実現することは不可能といえるでしょう。

一方、2011年春に起きた東日本大震災によって、地域の絆やコミュニティの価値が大きく見直されています。こうした、人間生活のより細やかな部分にも手をさしのべられる、インターネット技術の高度な利活用は、新たな社会システムの(リ)デザインに不可欠なものとなってきました。

私自身の経験で言いますと、三菱総合研究所に勤めていた頃、IPv6の普及活動に従事していたのですが、その頃にインターネット家電の研究開発を支援していました。当時の私自身は、「うーん、冷蔵庫にネットって、要るのかな」と思うことは、正直に言えばゼロではありませんでした。あれから10年以上が経ったいま、「接続されていてもいいよね」という段階から、そろそろ「接続されているべき」「なんで接続していないの?」という気分に、なっています。

そんないまだからこそ、あえて「インターネットはどこまで社会に普及したのか」という問いを、INTEROPに集う皆さんと、改めて考えてみたい--これが、私の担当するパートの、主な問題意識です。

たとえば「C4-05 成長戦略の柱となる通信政策の本質」では、昨年のINTEROPの前後にちょうど閣議決定された『世界最先端 IT 国家創造宣言』を支えるキーパーソンである、橋本岳衆議院議員(自民党)をゲストに迎えます。

パーソナルデータやビッグデータの利活用の検討に着手するなど、具体的な取り組みも進む一方で、2020年の東京五輪など、日本社会全体に影響を及ぼすイベントや、放送業界の再編などもスケジュールされており、通信業界から見れば「大賑わい」の様相ですが、その熱量が本当に政策現場にも届いているのか、政府としてネットをどう考えているのか、その本音に迫りたいと思っています。今年は行政の方は交えず、橋本議員との対談ですので、結構ガチンコの話が聞けるはずです。

一方、社会とネットという意味では、現場を張る主役の一人は、むしろ中央官庁ではなく地方自治体であるはずです。その自治体の活躍と苦悩を焦点に、「C4-06 自治体版IT戦略~自治体のIT化~」と「C4-07 自治体版 IT 戦略 ~クリエイティブ産業振興と連携した企業誘致を図る福岡市の事例~」という二つのセッションを用意しました。

C4-06では、広義(あるいは伝統的な意味)における自治体のIT化ではなく、そもそもいま地方自治体が抱えている課題である、都市間格差、少子高齢化によるコミュニティの衰退等について、ITがどこまで課題解決に迫れるのかを考えます。その際、課題が起きたあとに事後的に解決するという「旧来型のパラダイム」を越えて、どのように未来へ進めばいいのかを、都市の先進事例である千葉市の三木CIO 補佐監に、また課題を先取りした事例として被災地の自治体に詳しいKDDI復興支援室の阿部室長に、また中央官庁の政策についてJIPDEC大泰司主任研究員に、それぞれお話をうかがいます。

またC4-07では、地方自治体がIT企業の誘致を通じて産業振興を目指すという、ある意味でオーソドックスだが成功が難しいアプローチについて、代表的な成功事例といえる福岡市の富田課長と、企業誘致も含めた街づくりの最前線に精通される白鴎大学小笠原教授を迎え、「なぜ福岡はうまくいったのか」と「そもそも誘致を成功させるためには何が必要なのか」を明らかにします。

さらに、「C4-08 オープンデータで儲けるために必要なこと~ビジネス事例の分析~」では、昨今のIT業界で欠かすことのできないキーワードとなった「オープンデータ」について、単なる公共利用を越えて、いかにビジネスにつなげるか、より平たくいえば「いかにオープンデータでカネを稼ぐか」というテーマで討議します。登壇者は、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター庄司主任研究員と、国際社会経済研究所東主幹研究員という、おそらくこのテーマを日本で論じるにはこのお二人しかいないであろう、エキスパートです。

インターネット商用化が20年を過ぎ、普及が進んだことで、先進的に取り込む人や組織と、まだ道半ばという方々のギャップも顕在化しています。そうした課題をいかに克服していくのか。地域やコミュニティの現場はもちろん、政策立案も含め、様々な最前線で奮闘されるエキスパートを集め、次なる20年に向けたインターネットの役割を、来場される皆様とも一緒に考えたいと思っています。

INTEROP TOKYO 2014のカンファレンスは6月9日(月)・10日(火)、AP品川で開催されます。ぜひ足をお運びいただければ幸いです。

【関連情報】
Interop Tokyo 2014
Interop Tokyo 2014 カンファレンス情報

【クロサカタツヤ氏よりお知らせ】
Interop事務局からクロサカに、講師枠でカンファレンス受講料5%の割引コードをいただいています(1日受講券:通常価格54,000円→51,300円、2日受講券:86,400円→80,280円、いずれも税込)。抽選で10名様にプレゼントいたしますので、興味のある方は以下のフォームからお名前、連絡先メールアドレス、所属をご登録下さい。締切は6/3(火)22:00とさせていただきます。6/4(水)12:00までにお送りする当選通知をもって結果発表と代えさせていただきます。いただいた個人情報は結果発表後に消去いたします。<br/ >
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クロサカタツヤ(くろさか・たつや)

株式会社企(くわだて)代表。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)在学中からインターネットビジネスの企画設計を手がける。三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、次世代技術推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事。2007年1月に独立し、戦略立案・事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策・ M&Aなどのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。