病気で病院に行き、別の病気に感染してしまうHAI(医療関連感染)により昨年、アメリカでは75,000人近くが命を失っており、原因の多くは手洗いのし忘れによると推測される。いくつか調査結果があるようだが、Wiredの記事によれば平均的な医療従事者が患者の病室に入る際にきちんと手を洗うのは10から50パーセント。つまり、10回のうち5回から9回は手を洗わないまま入ってしまっていることになる。
医療従事者の手首にRFID内蔵のリストバンドをさせて、手洗い場所にきちんと行って、手を洗う動作をしたかどうか調べるシステム(IntelligentM)まで開発されている。病院内での手洗い徹底は病院にとって重大な問題だ。General Sensing社のMedSenseは、消毒液の容器に取り付ける無線機器が、医者や看護師の胸につけるバッジと通信して、手を消毒したか推測し、消毒しないまま患者のベッドに近づくと、ベッドサイドの別の機器とのやり取りで、バッジのブザーが鳴る。
Biovigil社のシステムは、患者の目を利用する。医師や看護師の胸ポケットに吊るすデバイス(約57グラム)で、赤外線センサと化学センサ内蔵。赤外線センサで、病室に入ったことを検出する。洗った手をデバイスにかざすと化学センサで清潔かどうかを計測し、OKなら緑のライトが点灯する。もたもたしていると黄色いライトが、洗った手をかざすのを怠ると赤いライトが光る。
デバイスは、胸ポケットから前方に向かって光る。つまり、洗っていないことを洗っていない本人に伝えるのではなく、患者に知らせているのだ。子供でも老人でも青信号と赤信号の意味は分かる。赤いバッジで近づく医師に気づけば、「先生、赤だよ」くらいは言うだろう。医師は慌てて手を洗うという寸法だ。人間のことをよく考えたデザインと言えるだろう。
【参照情報】
・病院内の手洗いを監視するRFIDリストバンド
・MedSenseのウェブページ
・Biovigilのウェブサイト
・Biovigil badge checks to see if your doctor's hands are clean
・A Gadget Designed to Finally Make Doctors Wash Their Hands Enough
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