米携帯通信市場第4位のT-モバイル(T-Mobile USA)に対して、フランスの新興通信事業者イリアド(Iliad)が再び買収交渉を行っているとする話は既報のとおりだが、そのイリアドが欧州時間13日に新たな声明を発表し、T-モバイル買収を断念したことを明らかにした。
イリアドは今年7月、米T-モバイルの親会社で66%の株式を保有するドイツテレコム(Deutsche Telekom)に対し、1株あたり33ドルでT-モバイル株式の56.6%を取得したいとする提案を行っていたが、ドイツテレコムはこれを却下。その結果を踏まえ、今回の交渉では、条件を1株あたり36ドルに引き上げ、また取得株式の割合も67%に増やしていたが、結局両者の交渉は合意に至らなかったという。
イリアドはT-モバイルの買収について、年間20億ドル以上、総額100億ドルのコスト削減効果があると主張していたが、アナリストらの間では、この額に懐疑的な声も強かったという。またT-モバイル内部でも、買収資金を調達したイリアドの財務状態が悪化する懸念や同社の信用に対する疑問の声が上がり、それが提案拒否の直接的な理由となったという。
Bloombergではこの話題に関連して、ドイツテレコムの取締役会内でもT-モバイルの売却をめぐって意見が分かれているとする情報筋の話を先月伝えていた。この関係者によれば、ドイツテレコム側では、今年11月にある米周波数帯オークションの結果をみた上で、T-モバイルに関する戦略的決断を行うべきとする意見が広がっているという。
なお、Bloombergではこのほか、チャーリー・アーゲン(Charlie Ergen)氏率いる米衛星テレビ放送大手のディッシュ・ネットワーク(Dish Network:以下、ディッシュ)がT-モバイルに接触しており、同社の買収を検討しているとする話も伝えられていた。同報道によれば、ディッシュはドイツテレコムに対し、11月のオークション実施後に買収交渉の可能性があることを伝えていたという。
【参照情報】
・Iliad Scraps Bid for T-Mobile Stake After Boosting Offer - Bloomberg
・Iliad Abandons Effort to Gain Control of T-Mobile US -
・French telecom company Iliad gives up on trying to buy T-Mobile US - The Verge
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