▼上智大学四谷キャンパスにてパネル展示を行うUDトラックス社の大型トラックQUON(写真提供:上智大学)
2014年11月26日、上智大学とUDトラックス株式会社を傘下に持つスウェーデンのボルボ・グループは「グローバル人材の開拓・育成および大学とグローバル企業の新たな形での協力関係構築」を目的に、新たなパートナシップを締結した。上智大学の四谷キャンパスで行われた調印式には、マグヌス・ローバック駐日スウェーデン大使、上智大学の早下隆士学長、ボルボ・グループ人事部門統括役員のセスチン・レナード氏が協定書を取り交わした。
ボルボ・グループではこのような産学教育連携を世界6カ国10校と展開しているが、日本では上智大学が初である。この協定を通じて、学生が理論や思考などグローバルビジネスの現場で求められる素養を身につけることができるように協働していく。
今回の協定に基づくプログラムは3年間で、この間、上智大学とボルボ・グループは、グローバル企業の経営戦略の策定方法やこれに基づく組織の成り立ち、ビジネス現場での実践例などを学ぶ授業科目を共同開発し、2015年度より全学部生を対象に開講する。 またボルボ・グループの国内外の拠点で1~3カ月間のインターンシッププログラムを提供するほか、新たな奨学金制度も創設する。
早下隆士学長は「ボルボ・グループと組織的かつ緊密な連携関係を推進し、実践的・経験的な学びの機会を創出していくことは、グローバル社会に対峙していく学生のチャレンジ精神を醸成するとともに、志の高い行動力のある人材育成の強力な推進力になるものと確信しています」と抱負を述べている。
文部科学省は2014年9月、スーパーグローバル大学等事業「スーパーグローバル大学創成支援」を設置した。この事業は日本の高等教育の国際競争力の向上を目的に、海外の卓越した大学との連携や大学改革により徹底した国際化を進める、世界レベルの教育研究を行うトップ大学や国際化を牽引するグローバル大学に対し、制度改革と組み合わせ重点支援を行うことを目的としたもので、37大学が採択されている。
上智大学は、この事業にこれまでの実績を基にさらに先導的試行に挑戦し、日本社会のグローバル化を牽引する大学を対象としたグローバル化牽引型の区分に「多層的ハブ機能を有するグローバルキャンパスの創成と支援ガバナンスの確立」と構想を掲げて応募し、採択された。
今後も世界に並び立つ教育研究を支援するガバナンス改革を土台に、世界をつなぐ「叡智(ソフィア)」の醸成、グローバルキャンパスの創成を実現させ、国際競争力の強化、国際通用性の向上を目指している。
上智大学は日本の大学の中でも既に相当にグローバルな大学だろうが、今回のボルボとの提携による教育の充実も、上智大学が目指すグローバルキャンパスの創成に寄与するのだろう。このようなグローバル企業との提携と教育による学生への還元によって、グローバル意識の高い学生が輩出されることは大学にとっても、社会にとっても良いことだろう。大学は研究の場であり、会社員養成の場ではないという批判の意見をお持ちの人もいるだろうが、大学を卒業したらほとんどの人が社会に出て働くことになるのだ。早いうちからグローバル意識を醸成することは良いことだ。そこで学んだことが、他の学問や研究と繋がり学問の発展に寄与すること、人材育成に貢献することは多いにある。
今後もこのような産学連携によるグローバル人材育成に期待したい。また、定義が曖昧な「グローバル人材」だが、グローバルの基礎はローカルであり、ローカル(身近)な課題を解決できない人がグローバルな視点で課題を解決することはできない。そのことからグローバル企業以外の日本のローカルな企業との連携にも期待したい。
▼(左から)ボルボ・グループ人事部門統括役員セスチン・レナード氏、マグヌス・ローバック駐日スウェーデン大使、早下隆士学長 (写真提供:上智大学)
【参照情報】
・上智大学リリース(ボルボとの提携)
・上智大学リリース(スーパーグローバル大学)
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登録はこちら2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。