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悪意のないスパムに思う。或いはeメールはもう時代の遺物なのか

2015.02.16

Updated by Ryo Shimizu on February 16, 2015, 09:08 am UTC

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一昨日はバレンタインデーでした。
週があけてメールボックスを見ると、Happy Valentine's Day!というタイトルのメールが来ていました。

中身はLittle Bitsという、電子おもちゃの広告です。

確かに私はLittle Bitsを何度か購入し、どちらかというとファンです。
しかし、バレンタインデーを祝ってもらうような関係ではないはずです。

お正月やクリスマスに比べると、バレンタインデーにダイレクトメール、要するにスパムを送ってくる会社は少ないので、「すごく迷惑」というわけではありませんが、メールボックスにメールがどんどん溜まっていくと、iCloudやGoogleから、「容量が一杯なのでアップグレードしてください」という嫌がらせを受けることになります。

アップグレードすべきかどうかは、ユーザーである私が判断することであって、サービス側から求められることではないはずです。

こういうのが地味に不愉快になってきます。

Little Bitsとしては、「どう?バレンタイデーに電子機器なんて、イケてるでしょ?おしゃれでしょ?」という意図があるのかもしれませんが、正直言って何の関係もないですし、特に信仰しているわけでもない宗教のお祭りを勝手に祝われても迷惑です。

そういえば、最近、突然Twitterからのメールが激しくなったような気がして、設定を変更しようとメール通知設定をみると愕然としました。

スクリーンショット 2015-02-16 9.09.41.png

なんと22項目に渡って、メールを通知するかしないかを選択するようになっていました。デフォルトは全てOnです。

「無効にする」という一見無害なボタンも実は罠で、これを無効にするとTwitterアカウントが認証されていないことになってしまいます。

つまり、Twitterからのメール通知を一切受けとりたくない場合は、22回もこの小さなチェックボックスをクリックしなければならないのです。

eメールというものがごく当たり前に使われるようになってからもう20年近く経ちますが、いつしかメールボックスとは、ゴミ箱のようなものになってしまいました。

現実の郵便受けにも、大量のポスティングがありますが、それは例えばそれなりにセキュリティのしっかりした所に引っ越せば回避できますし、ひと目で見ていらないと解るものはマンションに設置されているゴミ箱に直行させればいいわけですからそれほど大迷惑というわけでもありません。

しかしインターネットのメールは基本的に削除しないものなので、全く不要なメールをより分けて捨てる、という作業は気が遠くなります。
これが完全な迷惑メールなら、迷惑メールフォルダに直行するわけですが、完全な迷惑メールではない、たとえばLittle BitsにしろTwitterにしろ、注文に関するやりとりなど、届かないと困るメールの場合もあり、そういうアカウントであるのをいいことに、スパムを送りつけてくるというのはどうも理解できません。

Twitterに至っては、ここまで詳細にメールで通知してくると、もはやTwitterにログインしなくてもたいていの情報はメールボックスにたまってることになります。それはもう自己否定なのではないかとさえ思うのです。

そして、何かの拍子にオプトインにチェックしてしまったメールマガジンやWebサービスからの通知めいたものも、とにかく、不愉快なほど余計な情報を送りつけて来ます。

私はそれをひたすら仕分けするのです。
こうするともうメールボックスなんか見たくもなくなっちゃって、メールボックスを開くのが3日に一回とか、一週間に一回とかの人も居ます。

私も時々、「一番確実に連絡を取る方法は何だ?」と聞かれると、「会社宛に封書かFAXを送ってくれ」と冗談で言ったりします。

封書かFAXなら数日以内には確実に私の机の上に届くからです。

スパムを送ってくる人々の心理としては、「我々のことを忘れないでくれ」ということに尽きるのでしょう。まるで捨てられた子犬が「くぅ〜ん」と鳴いているようで心が痛みますが、忘れさせてください。メールを見ている間はTwitterのことなどできるだけ考えたくないのです。

Twitterに至っては、むしろリプライが来るということはけっこうな頻度で書き込んでるということです。

もう少し想像力を働かせれば、リプライが来たりリツイートされる度にメールで通知するなんていうバカな仕様は却下できたはずです。

そうこうしてる間にまたへんなメールが来ました。

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面倒なのでUnsubscribeしてなかったんですが、もうUnsubscribeすることにします。

この「解除手段があるんだからOK」という風潮もなんとかならないものでしょうか。
いっそメールそのものを辞めたくなります。
しばらく前から携帯メールはもう誰も使っていません。FacebookやLINEがあるからです。

ただしメールがやめられない理由もあります。
それはたいていのサービスがまだまだメール認証を必要とするからです。

FacebookやTwitterですら、そうです。

とはいえメールアドレスを個人認証の手段として使うなんて、もう前時代的という気がします。
メールアドレスが個人性を保証していたのは20世紀までです。なぜなら当時はメールアドレスといえば、大学か個人で契約したプロバイダーで決まるものだったからです。

しかしその後、 iモードが登場して携帯メールでインターネットのメールアドレスを取得できるようになり、メールアドレスを一日単位で変更できるようになってしまった時点で個人の特定をするには不適切なものになってしまいました。

引きぬき防止の為、社員のメールアドレスを非公開にしている会社もありますし、転職が常態化した昨今の社会では会社と完全に紐付いたメールアドレスを要求するのはナンセンスです。

会社のメールに関しては、私も以前、非常に手痛い失敗をしました。

長年勤めた会社を退職する時、中学校の頃からずっと好きだった女の子を呼び出してデートすることになりました。彼女とは、高校も一緒で、大学時代は月に一度は一緒にご飯をたべたり、部屋を片付けたりしてくれていました。

でも恋愛関係にはいちどもならず、彼女が大学院に進学することになって東京を離れてからずっと会っていなかったのです。

私自身は会社を退職してアメリカに移住するつもりでした。そこで日本を離れる前に一度会って関係をハッキリさせておこうと思ったのです。ちょうど25歳で、少なくとも5年はアメリカにいるつもりだったので、その間にどちらかが結婚していてもおかしくない、と思いました。

彼女の返事は「気持ちは知っていたし、嬉しい。けど、私はあなたについてアメリカには行けない」というものでした。私自身は付いてきて欲しい、とまでは思っていなかったので、意外でした。それよりも、彼女の気持ちをハッキリと聞かせて貰えなかったことが心残りでした。

それから一ヶ月して、もやもやした気持ちのまま、成田の出発ゲートを超え、乗り継ぎのロサンゼルスに到着し、私は空港の端末で電子メールをチェックしました。当時はスマートフォンも無ければWiFiもなかったので、手持ちのPCではネットに接続できなかったのです。

すると、会社のメールアドレスに彼女から長い長いメールが届いていました。20Kbytesくらいはありました。

私はなんらかの返事をもらえたことが嬉しくて、そのメールを開きましたが、LAXの空港に設置された端末では、日本語フォントが入っておらず、読むことが出来ませんでした。

仕方ない、シアトルでじっくり読もうか。

そう思った私がシアトルに到着すると、日付が変わり、サラリーマン時代の私のメールアドレスは削除されていました。

その直前まで、ほとんど会社に骨を埋めようと思っていたので、私のアドレスがなくなってしまったことは本当に衝撃でした。でも、考えてみれば当たり前、私はもう会社に所属する個人ではなく、自分自身が一人の男として自立しなければならなくなっていたのです。

そして私が一番読みたかったはずのメールは、会社のアドレスとともに消滅してしまいました。
今ならFacebookのメッセージで受け取っておけばいいんでしょうが、どうも、そういう手紙というのは、チャット向きではないかな、とも思いますね。一方的に送りつける、くらいがちょうどいい。
そう考えると、会社のメールアドレスというのは、今や形骸化した記号のようなものになっています。
困るのは、本人は退社してしまったけれども、そのメールアドレスは生きていると思ってメールを送ってくださる方です。

そこで仕方ないのでメールアドレスは削除するのではなく会社に残る誰かに転送する形式になっています。そういう会社は今は増えてきました。

これを知らずに個人的なメールを退社してしまった方に送ると大変恥ずかしいことになるのでご用心を。

ただ、そんなメールという文化も、どうもこの先、いつまで続くかわからないと思えてきました。

とにかく嫌なのです。メールボックスを見るということそのものが。

会社で使っているメールボックスは、嫌でも見なければなりませんが、たとえばYahoo.co.jpで放置しているメールボックスとか、iCloudのメールボックスとか、どうせろくな内容が入っていないのに日々スパムだかそうでもないんだかわけのわからないものが蓄積されていて、本当に困ります。
FacebookもLINEも、いまのとろあんまりスパムが来ないからそれほど不愉快じゃない、というのもあますし、相手ごとに整理されているのでやりとりを思い出しやすいというメリットもあります。

また、メールだとどうしても文章が長くなりがちです。

ただ「こんにちは」というだけのことなのに、ついつい挨拶だの近況報告だのを書いてしまうのです。

長い文章になればなるほど、読む方は疲れます。倍は疲れます。
だからメールは不愉快なのです。

その点、Facebookは、あまりに長い文章を一度に打つと、自分でも「やりすぎたかな?」と思えます。
相手が「既読」になったタイミングを見て、少しずつ文章を打つことになります。これはメールに比べるとだいぶ健全です。

Twitterの140文字制限もそういう意味ではやはり健全な気がします。

しかしLINEやFacebookの欠点は、深夜でもメッセージを受け取れてしまうことです。
良くも悪くも同期的なところです。

できれば深夜にメッセージを受け取ったら、翌朝までは通知しないようになればいいのにな、と思ったりします。そういうのは無粋でしょうか。

どちらにせよeメールの時代は早く去って欲しいと思っています。
たぶん人類はもう少しマシな方法を見つけることができるはずです。

どういうものになるのか、まだちょっと想像もできませんが。

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清水 亮(しみず・りょう)

ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長CEO。1976年新潟県長岡市うまれ。6歳の頃からプログラミングを始め、16歳で3DCGライブラリを開発、以後、リアルタイム3DCG技術者としてのキャリアを歩むが、21歳より米MicrosoftにてDirectXの仕事に携わった後、99年、ドワンゴで携帯電話事業を立上げる。'03年より独立し、現職。'05年独立行政法人IPAより天才プログラマーとして認定される。