飯田橋に近いアンスティチュ・フランセ日本にて、日仏共同によるメディアアートのイベント「デジタル・ショック」が開催されている。内容はVRやゲーム、3Dプリンターを使った作品に屋外でのインタラクション、バイオアートと幅広く、普段はフランス語を学ぶ校舎が会場となっているだけに、どこか文化祭的な雰囲気が漂う。文化庁のメディア芸術祭の協賛事業でもあり、国立新美術館での芸術祭作品の展示期間中は、協賛イベントやワークショップなども開催された。ここでは、展示内容の一部をご紹介する。
▼会場イメージ
バルタザール・オキシエートル氏によるインタラクティブ・インスタレーション「第5の睡眠」は、会場で実際に体験できるようになっている。ヘッドマウントディスプレイを装着し、3Dデータで作られた世界を移動するという内容は、ゲームをプレイするのと同じように感じるが、患者の脳内でナノロボットを動かすという設定になっていることから、今までに無い体験ができるという。とにかく、映像そのものが凝っていて、アーティストのセンスが十分に感じられる内容になっている。
▼3DVRを使ったリアリティなメディアアート作品「第5の睡眠」は会場で実際に体験してみることができる。
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インスタレーション作品「やどかりに「やど」をわたしてみる」は、Aki Inomata氏によるシリーズ作品で、3Dプリンターで作ったやどかりのための"やど"を、実際にやどかりに住まわせてみせるという内容になっている。"やど"はそれぞれ、世界を代表する都市をイメージさせるカタチになっており、それをやどかりが見て、自ら住みたい場所を選んで次々と移り住んでいるかのようにも見える。
制作は2009年に始まり、当初の"やど"は玉を丸くくり抜いただけだったせいか、やどかりには見向きもされなかったという。そこで、CTスキャンで本物の貝殻の内部構造を計測し、3Dプリンターで出力する手法を用いたところ、ようやく"やど"にしてもらえるようになったそうだ。
▼やどかりの"やど"をテーマにした不思議な味わいの作品「やどかりに「やど」をわたしてみる」
▼世界の都市をテーマにした立体の"やど"はそれだけで一つの作品になっている。
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校舎の2階を使った、ビデオ・ゲーム展「リアルのファクトリー」キュレーション:ラ・プレーヌ・イマージュでは、懐かしいゲーム機とゲームが楽しめるようになっている。フランスのリール近郊にある、デジタル・クリエイティブ産業のための複合施設「ラ・プレーヌ・イマー ジュ」とのコラボで、フランスのビデオゲーム制作会社なども紹介されている。ゲームセンターにいるような、あるいは制作会社のライブラリーにいるような、不思議な雰囲気が味わえる。
▼教室の中にクラシックから最近のものまでさまざまなビデオゲーム機が並んでいる。
▼フランスのゲーム作品も実際にプレイできる。
▼あのなつかしいゲーム機も見つかるかも・・・
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「Oubiopo(潜在的生物学工房)」は、バイオアートの実験屋台というさらにユニークな展示になっている。以前に紹介したバイオアートのユニットであるBCLの作品で、「バイオラボ」と「日本の屋台」を融合させた移動可能な実験室には、様々な実験器具が並び、実験結果が商品のように並べられている。Oubiopoは造語で、フランスの数学者による文学グループ「Oulipo」を元にしている。通常は制約と規制によって、あまり目にしないツールやバイオメディアをオープンにし、創造と発見を生み出す自給自足(冷蔵庫などの家電も置いてある)の自己充足的スペースとしている。
▼バイオラボと屋台を組み合わせた「Oubiopo(潜在的生物学工房)」では、実際に作品という名の実験が毎日行なわれている。
他にも日没後に中庭の空間を使ったインスタレーションも展示されており、3月22日まで無料で見学ができる。難解な作品もあるが、全体的には体験をベースにした作品が多いので、何も考えずに訪れてみるのが、一番いい楽しみ方かもしれない。
▼アンスティチュ・フランセ日本は校舎や敷地全体もさることながら教室の中もアートになっていて、そこを訪れてみるだけでも楽しめる。
【参照情報】
・第4回「デジタル・ショック」リアルのファクトリー
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登録はこちらフリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。