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上智大学、イスラム教の学生・教職員向けにハラルフードの弁当販売を開始

Different country, different culture, we are all different

2015.05.01

Updated by Hitoshi Sato on May 1, 2015, 19:28 pm JST

20150501-sato-1(提供:上智大学)

上智大学では2015年4月16日から、学生、教職員の国籍・文化・宗教など更なる多様化に対応するための施策の一環として、食事に制限のあるムスリム(イスラム教徒)の学生、教職員向けに、日本イスラム文化センターによる「ハラル認証」を取得したハラルフードの弁当販売を四谷キャンパスにて開始した。

上智大学ではムスリムの学生や教職員が祈りを捧げる部屋をキャンパス内に設けるなどの取組みを行ってきたが、ハラルフードの販売は今回が初となる。

ハラルフードとは、イスラム教の戒律に沿って調理された料理で、ムスリムが口にすることを禁じられている豚肉、調味料を含めた豚肉由来の食材、アルコール類を一切使用しない点が大きな特徴。上智大学では、ASlink株式会社の協力を得て、厨房・調理器具にいたるまで完全ハラル対応の弁当を提供している。販売されているのは、弁当、カレー類などのほか、ハンバーガーやサイドメニューも用意している。価格も350円~500円と学生向けのお手頃価格である。授業実施期間および試験実施期間の平日(月~金)であれば、毎日利用することが可能。もちろんムスリム以外の学生、教職員も利用することができ、販売車の前には連日長い行列ができるなど、盛況となっている。

上智大学はキリスト教カトリックの大学だが、「イスラーム研究センター」を擁するなど国内有数のイスラム研究拠点でもある。さらに中東やアフリカを含めた48カ国233校から成る協定校ネットワークの拡大、東南アジア4カ国7大学との交流促進を目的とした留学プログラム SAIMS の構築など、異なる文化や宗教、国籍を持つ学生や研究者が多数集う教育研究環境を有している。また上智大学では文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」事業採択校として、多様性を尊重したキャンパス環境の更なる充実を目指している。

日本で学ぶムスリムの学生や働いているムスリムの教職員を対象にハラルの食事を学内で提供していることで、ムスリムの学生は安心して食事ができるだろう。ムスリムの人にとって日本や欧米で生活するにあたって大変なのがハラルの食事である。

インドネシアのガジャマダ大学から上智大学に留学しているインドネシア人の学生は、「今まではコンビニなどで昼食を買うときも、友人に原材料を尋ね、豚肉が入っていないか確認して食べていました。ハラルフードは通常の食事よりも高価になりがちですが、学内販売の弁当は値段も良心的で美味しいので、今回の導入を喜んでいます。安心して選ぶことができ、種類もたくさんあるので、今後も利用していきたいと思います」と話している。

「そうか、ムスリムの人が日本で生活するのは、そういう苦労があるんだ」と知った人も多いのではないか。

現在では多くの大学が「グローバルや国際化」を唱えているが、上智大学は設立の当初からグローバルな大学だった。今までのグローバル化は日本人学生が海外の大学へ留学していくことがメインだったが、これからは海外からの学生が日本に多く来て学習してもらうことも重要になるだろう。

そしてムスリムの学生が日本に来るときにハラルの食事をお手頃価格で提供していたり、学内に「祈りの部屋」があることは、ムスリムの学生にとっても安心して日本で生活、学習できる環境があることだから、非常に重要なことである。こういう心遣いが「日本のおもてなし」であり、こういうことができる大学が本当にグローバルな大学なのだろう。さすが上智大学だ。

 

【参照情報】
イスラム教の学生・教職員向けにハラルフードの弁当販売を開始

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。