ドコモの5Gに向けた取り組み 屋外環境で世界初の20Gbps超えに成功、実証実験共通仕様策定目指すアライアンスも
2016.02.23
Updated by Asako Itagaki on February 23, 2016, 10:12 am JST
2016.02.23
Updated by Asako Itagaki on February 23, 2016, 10:12 am JST
NTTドコモ(以下ドコモ)が5Gに向けた取り組みを加速している。2月22日、5G共同実証実験の成果として屋外環境で5G目標性能の一つである最大10Gbpsでの通信成功を発表。また同日、新たな5G共同実験パートナーの参加と、実証実験仕様の共通化に向け米韓の通信事業者と共にアライアンス立ち上げを目指すことを発表した。
エリクソン・ジャパン(以下エリクソン)との共同実験では、屋外環境で15GHz帯を用いた5G方式の通信実験を行い、目標性能の一つである受信時最大10Gbpsを超える通信速度での無線データ通信に成功したことを発表した。さらに、2台の移動局装置を用いたマルチユーザー通信実験では世界で初めて合計20Gbpsを超える無線データ通信に成功した。
横須賀市ドコモR&Dセンタで行われた実験には基地局から複数のビームでそれぞれ異なるデータを同時に伝送する「マルチビームMIMO」を利用。1ビームあたり64個(2ビーム合計で128個)のアンテナ素子を用いて電波の放射エリアを特定の方向に集中するビームフォーミングにより、70m以上離れた移動局装置へ10Gbps、120m以上離れた移動局装置で9Gbpsを超える通信速度での無線データ通信を成功させた。
また、2台の移動局を使用した実験では、マルチビームMIMOを用いて4台の基地局アンテナから複数のビームで同時に同一周波数を使用したデータ送信を行い、2台合計の通信容量が受診時最大20Gbpsを超える無線データ通信を実現した。
NTTドコモは5Gに関して世界の主要ベンダーと実験協力を進めており、エリクソンとは新無線インタフェースのコンセプトとMassive MIMOについての協力を行っている。今回の実験もその一環で、ドコモとエリクソンが協同で仕様を策定し、エリクソンが設計、製造した実験用の無線基地局と携帯電話端末に相当する移動局装置を用いて実施した。
5G共同実験については、新たに台湾の半導体メーカーであるMediaTekとも共同実験ならびに技術開発に合意したことを発表。両社でドコモが提唱するアクセス方式である非直交多元接続(NOMA)方式とMediaTekが提唱するマルチユーザ干渉キャンセル(MUIC)技術を組み合わせる方式を検討する。2017年以降に台湾または日本での伝送実験を目指す。また、5Gの新しい無線インタフェースや、5G対応端末に必要なチップセットの開発についても2018年以降の共同実験を視野に入れた検討を進める予定。
これにより、ドコモとの5G共同実験に参画するベンダーは13社となった。
またドコモ、Verizon Communications(米国)、KT(韓国)およびSK Telecom(韓国)は、5G実証実験に関する協力促進と実証実験の共通仕様策定を目的とした「5G Open Trial Specification Alliance」の立ち上げに向け協力することに合意した。
アライアンスで対象とするのは2016年から2018年までに行われるもので、6GHz以下の低周波数帯と6GHz以上の高周波数帯の両方を対象とする。通信事業者だけでなく、ネットワークベンダー、チップセットベンダー、端末ベンダー、測定器ベンダーなど、さまざま団体や企業にも参加を呼びかけ、策定仕様を公開する方向で検討している。
現在、世界各国の団体や企業で行われている5G実証実験の仕様を共通化することで、5Gのさまざまな要素技術の性能評価を効率的かつ高精度に行えるとする。また、仕様共通化により、2018年に予定される3GPPにおける5G標準化の取り組みに対する補完的検証データとして有効に活用できるとしている。
【報道発表資料】
・世界初、屋外環境で通信容量20Gbpsを超える5Gマルチユーザ通信実験に成功
・(お知らせ)MediaTekとの5G共同実験ならびに技術開発に合意
・KT、NTTドコモ、SK TelecomおよびVerizonが「5G Open Trial Specification Alliance」の立ち上げに向け合意
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登録はこちらWirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。