[MWC2016]新しいユーザー体験を“オープン”なエコシステムで実現--ファーウェイ・ジャパン副社長
2016.02.24
Updated by Naohisa Iwamoto on February 24, 2016, 09:38 am JST
2016.02.24
Updated by Naohisa Iwamoto on February 24, 2016, 09:38 am JST
「ユーザーニーズに対してイネイブラーになることが求められる」。スペイン・バルセロナで開催中のMobile World Congress 2016(MWC2016)でファーウェイ・ジャパンは日本の報道関係者に向けてメディアラウンドテーブルを開催し、同社副社長のEdward Zhou(周明成)氏は、こう語った。
▼ファーウェイ・ジャパン 副社長のEdward Zhou(周明成)氏
Zhou氏は「これまでは技術がユーザー体験を作り出してきたが、今後は技術とユーザー体験の優先順位が逆になる。ユーザーがどのような体験を望むかによって、それに対応する技術が求められるようになる」と説明を続ける。ファーウェイでは、そのユーザー体験を「Roads」というキーワードで示す。Rはリアルタイム、Oはオンデマンド、Aはオールオンライン、Dはカスタマイズという意味のDIY、Sはソーシャルの頭文字を取ったもの。オープンな環境で「Roads」を提供できるようにするのが、目標だと語る。
通信事業者はエンドツーエンドで閉じた技術を使ってきたとZhou氏は指摘する。しかし、ネットワークのオールIP化などが後押しするオープン化により、バリューチェーンの連携やエコシステムの確立が実現すると、通信事業者の事業規模は10倍から100倍へと拡大する可能性がある。「ファーウェイではオープンなRoadsでより良いコネクテッドワールドを実現し、エコシステムを拡大したい」(Zhou氏)。
▼データセンター向けの製品群「Open Cloud」では、ファーウェイ自身がハードウエアからクラウドOS、サービスまでエンドツーエンドで提供するが、オープンソースをベースとしておりマルチベンダー対応も想定しているという
オープンの具体的な取り組みとしては、パートナー戦略、開発者向けの戦略、産業向けの戦略を実施している。パートナー向けにはすでに10以上のオープンラボを作り、600を超えるパートナー企業と協働で研究開発を行っている。開発者向けには、「豊かな社会プロジェクト」で社内の開発投資とは別に今後5年間に総額10億米ドルの開発投資を行い、オープンなSDKを提供することで新しいハード、ソフトの開発を支援する。産業向けには、パートナー企業を含めたエコシステムを作り、一緒にソリューションの開発を進めているという。
オープンをキーワードに掲げるようになったファーウェイは、日本市場のハイライトとして「5G」「NFV/SDN」「NB-IoT」「オープンアンドコラボレーション」を掲げる。5Gでは、キャリアと様々な研究開発を共同で行い、2020年の商用化に貢献する。さらに5Gの技術を現在のLTEに適用することで、5Gの商用化が始まるまでの間に「4.5G」のネットワークを提供できるようにする。
▼4.5Gのユースケースを紹介する立体模型。例えばゴミ箱の内容量をチェックしてNB-IoTでデータを集め、回収が必要なエリアだけに回収車を巡回させるといった業務効率化が想定される
NFV/SDNはすでに海外ではチャイナユニコムやドイツテレコムと開発・運用を行っており、日本でも2020年にどのようなネットワークが必要なのかキャリアと対話を続けているという。IoT分野でファーウェイは、狭帯域の周波数を使って長距離の通信が可能なNB-IoTを推進している。3GPPで標準化作業が続けられており、2016年第3四半期には製品を実際に使えるようになると見込む。
「オープン」という言葉を何度も使い、ユーザー体験の側から技術を再定義する必要があることを説くZhou氏。ファーウェイという企業自体が、オープンになることを強く意思表示しているように感じる。
▼広いブースが外部からも見通せるようになったオープンなファーウェイのブース
MWCでは例年、広大な会場でも一二を争う巨大なブースを構えるのがファーウェイの通信機器の展示ブースだ。コンシューマー向け製品のブースはもちろんオープンな展示スペースなのだが、通信機器の展示ブースはこれまで壁が設けられて中の様子が外部からはまったく見えなかった。ところが今回のMWC2016ではファーウェイは、通信機器の広大な展示ブースをオープンで明るいデザインに大転換。一般客や競合する出展者は中には入れないものの、フレンドリーなイメージを強く演出している。その上、MWC2016最終日の25日には、一般に公開する計画だという。そこには、より良いユーザー体験を実現するために、企業自身の立ち位置をクローズドからオープンへと大きく変化させるという決意が表れているようだ。
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