40GHz帯と60GHz帯を協調させた高速ワイヤレスアクセス、東工大などがネット構築に成功
2016.03.01
Updated by Naohisa Iwamoto on March 1, 2016, 06:33 am JST
2016.03.01
Updated by Naohisa Iwamoto on March 1, 2016, 06:33 am JST
東京工業大学、ソニー、日本無線、KDDI研究所は2016年2月29日、40GHz帯と60GHz帯協調による次世代高速ワイヤレスアクセスネットワークの共同研究開発を行い、ネットワーク構築試験に成功したと発表した。大容量コンテンツ配信を目的とし、5Gでの利用が検討されているミリ波帯による高速通信サービスの1つの将来の姿を示したものだ。
4者が構築に成功したネットワークは、40GHz/60GHzを組み合わせた新しいミリ波帯ワイヤレスアクセスネットワークで、端末側とネットワーク側が協調してギガバイトクラスの大容量コンテンツの高速配信を可能にする。構築には、4つの技術的ポイントがあるという。
▼4者が共同開発した新技術の構成(ニュースリリースより)
1つ目は、無線モジュールの開発。東工大が開発したアンテナやソニーが開発した無線LSIを搭載した無線モジュールを使い、60GHzを利用した無線ファイル転送システム全体で6.1Gbpsの高速な伝送速度を実現した。
2つ目は、端末がアクセスするワイヤレスアクセスシステムの開発。隣接して60GHz帯による複数の通信装置が設置されていても、無線区間での混信を防ぎながらそれぞれが独立した装置として働くようなシステム(Gigabit Access Transponder Equipment (GATE)システム)を開発した。またLTEとの協調動作により大ゾーンとミリ波少ゾーンのシームレスな連携サービスも可能にした。これには4者が参画している。
3つ目はGATEのアクセスポイントを収容するワイヤレスアクセスネットワークの開発。日本無線と東工大が関わったもので、40GHz帯で1Gbpsの通信を1km以上の伝送距離で実現できる構成を実証した。これはFDDやTDDの2倍の周波数利用効率を持つDDD(Directional Division Duplex)を採用し、高い周波数利用効率も実現した。
4つ目が、ワイヤレスアクセスネットワークの経路制御技術の開発で、KDDI研究所と東工大が関わった。ミリ波帯は降雨による減衰が大きく、3つ目で開発した40GHz帯のワイヤレスアクセスネットワークもゲリラ豪雨などでは回線断が起きるリスクがある。そのため、降雨予測に基づいた経路制御を開発し、降雨が予想される際にはトラフィックの一部を別のルートに迂回させる。
4者は、今後増加が見込まれる移動体通信のトラフィックの一部をミリ波帯に迂回させて、混雑を回避するための技術的な方法の1つとして、今回の新技術が利用できることに期待しているという。
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