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ローソン店舗でドコモのサイクルシェアが利用可能に:まずは青森から、訪日外国人誘致や地方創生にも期待されているが……

2016.08.25

Updated by Hitoshi Sato on August 25, 2016, 14:14 pm JST

ローソンとドコモ、ドコモ・バイクシェアは、ローソン店舗におけるサイクルシェアリングサービスの提供に関する業務提携について合意し、提携の最初の取り組みとして2016年8月23日から青森県内のローソン4店舗で旅行者向けのサイクルシェアリングサービスを開始することを発表した。

訪日外国人の誘客と地方創生としても期待されるサイクルシェア

今回青森県の4店舗で提供を開始するサイクルシェアリングサービスは、復興庁が東北への外国人旅行者の誘客につながる取り組みを支援する「新しい東北」交流拡大モデル事業の一環だそうだ。青森県内のローソン店舗から開始され、コンビニなので24時間営業で提供される(ただし冬季期間(11月1日~3月31日)は休止)。

スマホかPCのサイト(日本語および英語)で事前に予約をし、発行されるパスコードを自転車本体の操作パネルに入力してレンタルサイクルが利用できる。基本プランは「1日パス」(税別1,000円)と「3時間パス」(税別500円)の2つがある。ドコモケータイ払いのほか、クレジットカードが決済方法として利用できるので、外国人やドコモ利用者以外の日本人でも利用は可能だ。また利用する人に、周辺の観光情報やおすすめサイクリングルートを案内することも予定している。

ドコモとローソンでは今後、全国のローソン店舗でのサイクルポートの設置や各種誘客施策も検討していく。ローソンは店舗でのサイクルシェアサービスの提供を通じて、全国各地の観光地の新たなインフラを目指すとともに、今後も全国の店舗網を生かし、地域のお客様の利便性向上に努めていくことを明らかにしている。

ドコモとドコモ・バイクシェアは、今後も自転車をはじめとする様々な移動手段のシェアリングや、利用分析データの活用を通じた新たな付加価値サービスの創出を進め、地域に根差した移動手段として幅広い利用者に自転車を利用してもらうことで、温室効果ガス排出量削減や地域・観光の活性化に寄与していくとのこと。

コンビニの店員さんは覚えることが多くて大変だろうな

今回、ドコモのサイクルシェアのサービスが利用できるローソンの4店舗はいずれも青森市内にある。各店舗に自転車は5台ずつで、今後店舗は順次拡大されるとのこと。東京の都心にあるコンビニでは店舗の前に自転車を置くスペースもないだろうから、実現するのは難しいだろうが、郊外型の店舗や地方では車でコンビニに行く人のために広い駐車場を併設している店舗が多いから自転車を数台置くことも可能だろう。24時間営業なので、借りたい時にいつでも自転車を借りられるのも便利だろうし、公共交通機関が発達していない地域ではバスなどが1時間に1本しかないようなところも多いので、そのような地域では利便性が高いサービスとして期待されるだろう。

ただコンビニの店員さんは覚える仕事がまた1つ増えて大変だろう。コンビニの店員はマニュアル化されているとはいえ、とにかく仕事の量が多い。接客やレジだけでなく、掃除やゴミ捨て、商品の入荷、棚卸、狭いレジ内でのフード製造やコーヒーマシンの対応、チケットやタバコの販売、ポイントカード対応、防犯対策などとにかく覚えることがたくさんある。レジでの支払手段だけでも現金以外にSuicaなどの交通系カード、クレジットカード、Edy、iDなど多種多様だ。

しかも最近は海外からの留学生がバイトをしているコンビニの店舗が多いから指導する方も苦労が多い。例えば日本人でも支払い時に「EdyかiDか」の聞き分けをするのは難しいが、外国人留学生はさらに苦労する。他にも日本人なら誰もが知っている商品でも外国人は知らないことが多いので、お客様から「その商品がどこにあるのか?」といった簡単な問い合わせに回答できないことも多い。

非常に覚えることがたくさんあるコンビニの店員だが、サイクルシェアまで始まったら、また覚えることが増える。自転車だからパンクして動かないとか、壊れたとか紛失したとかの対応もあるだろう。逆に訪日外国人に英語で自転車に関する問い合わせをされても何を言っているのかわからなくて困る日本人の店員も多いだろう。しかも郊外のコンビニの前やフードコートには多くの地元のちょっとやんちゃな少年少女らが溜まっていることもよくあり、自転車を壊されたり、盗んだりされないかのチェックや注意も必要になる。

たしかにコンビニでサイクルシェアサービスを展開していれば、全国各地の観光地の活性化や地域のお客様の利便性向上につながるだろうが、まさに自転車が設置される一番の現場であるコンビニの店員さんたちは「やれやれ、また覚えることが1つ増えたな。しかもなんだか面倒そうな業務だ。それなら時給も上げてくれよ!」と思っているかもしれない。

【参照情報】
ローソンとNTTドコモとドコモ・バイクシェアの業務提携合意について -旅行者向けに青森県内のローソン4店舗でサイクルシェアリングサービス提供開始-

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。