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手の震えを止めるウェアラブル「Emma」

2017.05.24

Updated by WirelessWire News編集部 on May 24, 2017, 07:00 am JST

パーキンソン病患者には震えや動作困難などの症状が出る。アメリカではロンドン五輪の開会式に登場したモハメッド・アリや、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のマイケル・J・フォックスがこの病気と闘っているが、日本でも難病に指定されていて根本的な治療法は今のところないとされている。

マイクロソフトの研究者が、この病気の女性、エマのために作ったウェアラブル・デバイスが、大きな注目を集めている。エマ(Emma Lawton)はイギリスに住むグラフィック・デザイナー。29歳で発症した彼女にとって、手が小刻みに震えてしまって、絵も字もきれいに書けないということは、絶望的なことだったに違いない。仮に絵を描くことがなかったとしても、手紙やメモの文字が書けないだけではなく、欧米では日本の実印にあたる本人証明となる署名(サイン)ができないということだ。

Haiyan Zhangは、中国生まれの女性エンジニア。イングランドはケンブリッジにあるマイクロソフトの研究機関で、イノベーション・ディレクターとして働いている。彼女がエマおよび数名のパーキンソン病患者の協力を得て、試行錯誤の後に開発したデバイスは、手首に巻く腕時計型の装置。このエマ・ウォッチ(Emma Watch)は、Windows10タブレットと連動して、モーターが手首にエマの症状に合わせて調整された周波数の振動を伝える。医学的なメカニズムは明らかになっていないが、パーキンソン病患者の手の震えと脳の間にはフィードバックループがあり、手の方に外部(エマ・ウォッチ)側から特定の周波数の振動を与えると、そのフィードバックループに変化が生じ、手の震えが止まるという。

エマ・ウォッチを渡されて、右手に装着し、ペンを持って小さく自分の名前の4文字を書くことができたエマは、驚きと感動で涙し、母親に電話で喜びを伝えている。

エマ・ウォッチはエマのためのもので、他のパーキンソン病患者のためには個別の調整が必要。広く使われるようになるためには、今後も多くの工学や医学の研究者が協力していく必要があるようだ。AI(人工知能)にそれぞれの患者の手の震えを自動で学習させるなどのインテリジェント化も求められる。

病気とともに生きて行く人々にとって、できなくなった何かが再びできるようになることは大きな励みになるはず。テクノロジーの研究者にとっても、受け取った人に喜びと感動をもたらすことのできる技術開発には大きなやりがいがあるに違いない。

<参考情報>
How a watch helped Emma write again
https://news.microsoft.com/en-gb/features/how-a-watch-helped-emma-write-again/#sm.0001qkcvhhevjfg8uxj2621pcxeu3#yP1II7pl7gBGVjUg.97

‘My God, it’s better’: Emma can write again thanks to a prototype watch, raising hope for Parkinson’s disease
https://blogs.microsoft.com/transform/feature/my-god-its-better-emma-can-write-again-thanks-to-a-prototype-watch-raising-hope-for-parkinsons-disease/#sm.0001qkcvhhevjfg8uxj2621pcxeu3

Meet Emma
http://www.bbc.co.uk/programmes/p04jylxm

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