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文章から「皮肉」を読み取り正しく翻訳するAI

2017.08.09

Updated by WirelessWire News編集部 on August 9, 2017, 07:00 am JST

イスラエルのMITとも呼ばれるイスラエル工科大学(テクニオン)の学生、Lotam Peled氏が開発したSIGN(sarcasm Sentimental Interpretation GeNerator)は、皮肉を翻訳するシステムだ。

ひどいことがあった日に、「今日は最高の一日だ!」とツィートする人がいる。往々にして”best”は”worst”ということだし、”terrific”(素晴らしい)が”terrible”(ひどい)という意味だったりする。対面での会話であれば、文脈や表情などの情報をベースに、その発言が額面どおりなのか、反語など複雑な表現なのか解釈できる。しかし、それが書き言葉になると、人間が読んでも解釈が難しくなる。そこで、Twitterなどに書き込む際に、きちんと伝わるようにと#sarcasmとタグを付けている人もいる。

SIGNは、#sarcasmというタグのある3,000のツィートをデータベース化し、5人のエキスパートが皮肉でない直接表現に「翻訳」して見せることで訓練したマシーン。これまでも、皮肉を検出するアルゴリズムはあった(例えば、これ)が、SIGNの目的は検出だけではなく翻訳することだ。強い感情表現の皮肉には強い単語を選ぶようトレーニングし、人間がその翻訳結果を審査して精度を高めたという。

文章の中の皮肉を解釈することができれば、例えば、企業の製品やサービスに関する口コミを正確にキャッチすることができるようになるといった商業的なアプリケーションも期待されている。だがSIGNの狙いは自閉症やアスペルガー症候群などで、皮肉や反語、ユーモアを解釈するのが難しい状態にある人々を助けることだ。

手紙と電話の時代に比べてテキストによるコミュニケーションの機会が飛躍的に増えた今、誤解なき文章を作文する能力だけでなく、他者の文章を正しく解釈して理解する能力の重要性は増すばかりだ。機械が上手に外国語を翻訳してくれるようになったこの時代に、皮肉の解釈が苦手な人を機械に助けさせるというのは、優しい目のつけどころと言えそうだ。

【参照情報】
When “Great” is Not Good At All.

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