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江戸時代の駕籠(かご)は、二人以上の人間が前後で肩に担いで運ぶ。舗装されていないデコボコした道を進むには好都合だが、運ぶ方は重くて大変だ。明治になって登場した、大きな車輪がついた人力車は、乗客の体重はタイヤが支えてくれるので、俥夫の人の力はもっぱら前進する方向に使うことができる。担ぎ手が乗客の体重を支えながら運ぶ駕籠よりも、ずっと高速で移動することが可能だ。

動けない怪我人や病人を運ぶための担架(ストレッチャー)も、二人の人が前後で持って運ぶので、駕籠と同様、運ぶ人が重さを支える必要があり、すばやく長距離を移動することは難しい。

イスラエル工科大学テクニオンの学生が、自転車メーカーやボランティア救命組織United Hatzalahと共同で開発したアドベンチャー・ストレッチャーは、担架の下に一輪車の車輪を装着したような形状をしており、楽にすばやく移動ができる。

被災地などで大勢が倒れているような場合に、足場の悪い現場で長い距離を運ぶ必要があると、被災者だけでなく運ぶ側の人々の疲弊は大きな問題になる。一輪車つきストレッチャーは、強度を保ちつつ軽量化が図られ、ハイキング・トレイルなど山道や災害現場での使用に耐えるよう工夫されている。うまく固定すれば、水やケーブル、機材など重たい荷物を搬送することにも利用できるという。

United Hatzalahは、バイク型の救急車を導入したことでも知られる。救急車の役目というと、病人や怪我人を、病院などの救急医療機関に搬送することを思いがちだが、実は現場での措置が生死を分けることもある。心肺停止の人などの場合には、搬送よりも前にAEDなどを使った現場での措置が生死を分ける。喉に異物を詰まらせた子供は、渋滞の道路をサイレンでかき分けながら運ぶよりも、詰まらせている場所で助けてあげた方がずっと早い。

つまり、担架で搬送するよりも先に、救急救命士がAEDなどの装備や医療機器を持って、現地に一刻も早く到着することが重要だ。一般道や高速道路での運転中に、バイクに追い越された経験がある人なら、バイク型救急車の機動性が理解できるに違いない。

自然災害やテロは防ぎにくくても、それが発生した後のオペレーションは工夫次第で効率化が可能。それが少しでも多くの命を救うことに繋がる。

【参照情報】
Technion Students Create New “Adventure Stretcher” to Hasten Hard to Reach Emergency Evacuations

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