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テリロジー

ステルス暗号化や高精度位置制御でコネクテッドカーに安心安全を提供──テリロジー

2017.11.28

Updated by Eitarou Suda on November 28, 2017, 15:11 pm JST

東京モーターショー シンポジウム2017では、セキュアIoTプラットフォーム協議会が主催した「安心・安全につながる車社会の実現を目指して 〜コネクテッドカーのセキュリティを考える〜」シンポジウムが開催された。シンポジウムでは、ネットワーク/セキュリティソリューションの設計、構築から運用管理までを提供するテリロジーのエグゼクティブフェロー 新美竹男氏が、自動車そのものや、様々な製品を製造する工場も含めた安心安全の対策について講演した。

 

2020年には新車のほとんどがコネクテッドカーになると言われている。車のセンサーがインターネットに接続することで、走行データを活かした数々の新サービスが生まれるだろう。また、リアルタイムの高精度地図や道路交通情報を得ることでスムースな自動運転が可能になる。

こういった環境では、不当な遠隔操作やサイバーアタックといった脅威に対して、社会全体を俯瞰した総合的な対策が必要となる。実際、クライスラーのJeep Cherokeeは遠隔操作でECU(車載電子制御ユニット)を乗っ取られる可能性があるという脆弱性が見つかり、140万台がリコールになった。また、ITセキュリティ企業のカスペルスキーが、テスラモーターズの電気自動車モデルSの乗っ取りに関する記事を同社のブログで公開するなど、コネクテッドカーのセキュリティ対策は自動車メーカーにとって大きな課題だ。このときテスラは、自動アップデートで対応している。

自動車ではないが実際の被害の事例もある。2017年5月には、ランサムウェア「WannaCry」の被害がヨーロッパを中心に広がった。ドイツの鉄道では時刻表が表示できなくなり、ルーマニアの自動車メーカーでは生産ラインが停止するなどの大きな被害が出た。

それでは、コネクテッドカーのセキュリティを高めるには、どのような対策が可能なのだろうか。そして「つながる工場」のセキュリティとの関連についても見ていきたい。キーワードは、「ステルス暗号化ネットワーク」「高精度位置制御」「情報のリアルタイムな取得・管理」である。

ハッカーから「見えない」ように自動車をステルス化

一つ目のステルス暗号化ネットワークとは、車両制御系データを車両とサービスセンターとでやり取りする際、外部からエンドデバイスが見えないネットワークを用いて、通信をセキュアにすることだ。対象を見えない状態にすることから「ステルス暗号化ネットワーク」と呼ぶ。

セキュア通信の必要性

これは、「つながる工場」を守るセキュリティソリューションとして使用されている技術だ。次世代のセキュアな通信プロトコルであるHIP(Host Identity Protocol)技術を利用して、デバイスをステルスモードにして外部から見えなくする方式を採る。Tempered NetworksのHIPスイッチに代表される技術である。HIPはIETFで標準化されたセキュアな通信プロトコルで、HIPを従来のIP(Internet Protocol)の代わりに用いることでユニークな暗号化IDを使った相互認証による通信が可能だ。

ステルスネットワーク

世界中の様々な重要インフラで、遠隔から生産システムを集中監視するSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)システムが使われているが、これは攻撃者の格好の標的となっている。しかし、ステルスネットワークを用いれば、ハッカーがエンドデバイスを見つけることができなくなり、セキュリティが担保される。この技術を利用することで、コネクテッドカーをハッカーが見つけられないようにするというわけだ。

その他のIoTプラットフォームサービスについても、IoT ゲートウエイにHIPソフトウエアを、データセンターなどのIoTプラットフォームにHIPスイッチを導入することで、LPWAN(Low Power Wide Area Network)や携帯通信網を暗号化通信によるオーバレイネットワークで覆い、エンドデバイスを守ることが可能となる。

自動運転車を高精度な位置情報で制御

二つ目が、自動運転車の車両制御のための位置情報の精度を上げるソリューションである。計測エンジンの実際のGNSS測定値(GNSS:Global Navigation Satellite System、衛星測位システム)と、インターネットの補正値を組み合わせて、正確な車両位置を提供するサービスなどが開発されている。

例えば、米国のFreeWaveの技術とSwift Navigationの技術とを組み合わせれば、自動運転車の高精度位置制御を実現できる。FreeWaveのFreeWave Radiosは、自動運転向けのRTK-GPS(リアルタイムキネマティックGPS)として、既知点からの補正観測情報を携帯電話や無線を利用して移動局に送信し、移動局の位置をリアルタイムで測定することができる。Swift Navigationは、自律走行用に設計された高度なモジュラー位置決めシステムを開発しており、同社のStarlingナビゲーションエンジンソフトウエアは、ハードウエア測定エンジンの実際のGNSS測定値とインターネットの補正値を組み合わせて、正確に車両位置情報を取得できる。

Swift navigationは、サンフランシスコで自動走行の実証検証を行っており、それまで10m程度だった測位の誤差を数センチまで減らせることを実証した。Swift Navigationの車両測位システムは、車線またはサブレーンレベルの位置を必要とする次世代の自律型車両アプリケーションを実現するために、必要な精度を提供できる。この実証実験のテストハードウエアは、GNSS信号をさまざまなGNSSレシーバーに配信する4ポートパッシブRFスプリッタに接続したアクティブなGNSSアンテナで構成されている。さらに、Verizon USBセルラーモデムを使用するWi-Fi無線ルーター、イーサネットケーブルを介してラップトップPC(車内設置)に接続することでインターネットに接続している。

出典:High-Precision GNSS Autonomous Driving Localization Test White Paper
出典:High-Precision GNSS Autonomous Driving Localization Test White Paper

車両情報をリアルタイムに取得・管理

コネクテッドカーのセキュリティを高める三つ目の対策として、車両情報をリアルタイムに取得・管理するソリューションを紹介する。これは、OBD(On-board diagnostics)と呼ばれる、自動車に搭載されるコンピュータ(ECU)が行う自己故障診断を用いたものだ。

テリロジーが資本提携したネクスは、OBD II型自動車テレマティクスデータ収集ユニット「GX4x0NC」を提供している。業界最多の国内 1200 型式以上の車に対応し、様々な特殊車両にも設置が可能だ。取得可能な走行データは、瞬間燃費、車速、加速度、GPSによる位置情報などの10 種類の基本データと、車種により最大 38 種類のその他の車両情報となる。

このような複数のソリューションを組み合わせることで、セキュアなシステムを作っていくことが可能となる。テリロジーでは、これらの技術やソリューションを提供することで、コネクテッドカーや「つながる工場」に安心・安全を守るためのセキュリティ環境構築のサポートをしていきたいと考えている。

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須田英太郎(すだ・えいたろう)

東京大学教養学部卒(文化人類学専攻)。東大新聞オンライン編集長を経て、現在は東京大学新聞社マーケティング・プロデューサーを兼務。カワサキ・スーパーシェルパと、RidleyのTritonSを愛用。