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コロナで考える強い組織とは一体何なのか

Think about what makes organizations strong

2020.10.29

Updated by Mayumi Tanimoto on October 29, 2020, 15:28 pm JST

コロナ禍で働き方が大きく変わっていますが、先日、ハッと考えさせるようなツイートを読みました。

それは、ハンガリーで柔道の指導をしておられる方のツイートで、「日本の強豪校というのは、個人競技の柔道であっても、みんなで一緒に頑張りましょうと部員同士が協力しながら士気を高めていき、一体感が高いので全体のレベルが上がるのだ」というような内容でした。

つまり、柔道のような個人競技であっても、所属する学校の「コミュニティとしての役割」が個人の力の底上げや心理面でのサポートで大きな役割を果たしているわけですね。

欧州だと、どうしても個人主義的に傾きがちなので、例えば誰かにトラブルがあったり不調だったりした場合、みんなで励まそうと言う雰囲気はなく、一体感もありません。学校やクラブ全体で底上げしよう、頑張りましょうという雰囲気がないといえるのです。

この指摘は、ビジネスの場でも私も実感することです。

日本の組織というのは、構成員みんなでまとまって組織的に動くところがあり、一緒にやりましょうと励ましたり士気を高めることで、全体を底上げしていきます。

これには連帯責任を求めたり、個人の業績がはっきりしないという短所もあるわけですが、全体のレベルが上がり組織として強くなるという長所もあります。これが個人プレーが可能な金融業界やIT業界でも見られるところが面白いところです。

ところがイギリスを始め欧州では、特に個人プレーの業界は、「みんなで意識を高めましょう」であるとか「みんなで頑張りましょう」という意識が低いために、誰かが不調だったりトラブルに陥っていても、そのまま放置されてしまうことがあります。

また、お互いのフォローアップをしないため、誰かが失敗をしたり、分からないところがあっても、助言する人がいなかったり手助けする人がいないので、全体的な効率が高まりません。プロジェクトが遅延していても、手が空いている他のメンバーが助けるわけでもなく、放置されてしまってお客さんが困るという事が良くあります。

これが、全体力を重視する日本だと、必ずフォローする人が現れてうまく解決されるわけです。実は、こういったフォローの体制というのは、日本企業の成果物が期日通りに提供されたり、細かい部分に瑕疵がない、品質が高いなどといったことにもつながっています。連帯して皆が目を配っていたり、構成員の気力が落ちないように注意をしているので質が高まるという仕組みです。

もちろん、個人の業務配分を明確にし、個人責任でやる方が工数計算やプロセスの明確化などでは便利ではありますが、一方で組織全体としての品質やスピード、臨機応変に動けるか、といった点では犠牲になることもあるので、どちらにも長所と短所があります。

ここ20年ばかりの日本では、日本はもっと個人主義になるべきだ、集団主義を止めるべきだという意見が目立ってきています。しかしコロナ騒動では、日本的な組織力や個人主義ではない組織的なミッション重視のアプローチが良い防疫につながりました。

日本的なやり方にも個人主義的なやり方にも良い部分があるので、どちらも良いとこ取りをして日本の力を高めるような方向に向かうと良いと思っています。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。