画像はイメージです original image: iushakovsky / stock.adobe.com
日本の生産性が低い理由はロシアと相似
Why Japan's IT efficiency is so low
2022.07.04
Updated by Mayumi Tanimoto on July 4, 2022, 07:00 am JST
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Why Japan's IT efficiency is so low
2022.07.04
Updated by Mayumi Tanimoto on July 4, 2022, 07:00 am JST
ロシアのウクライナ侵攻を見ていて思うことがあります。西側諸国の基準に比べ、ロシアは恐ろしく人を大事にしない、ということです。
戦闘には、訓練が不十分で教育レベルも十分ではない人種的少数派の若い兵士を投入。彼らは、期限切れの軍用糧食に古い兵器、恐ろしく安い給料で戦わされています。イギリスの調査によれば、時給10円というデータもあるほどです。 ほぼ奴隷待遇です。
派遣される兵士は、シベリアや南部のイスラム圏の若い人達で、教育レベルも低く、元々現金収入が極端に少ない地域出身なので、兵士になって病気の治療費用や家族の借金の返済をするのです。ロシアには、そういう地域格差、人種格差が存在するのです。
軍事に限らずロシアは、西側諸国に比べて様々なことが恐ろしく非効率的で、これはITに関しても同様です。ロシアは、日本やドイツのレベルの工作機械を自国で作ることもできないので、輸入が途絶えた今、兵器を作ることさえも難しくなっています。
なぜ、かつて冷戦期には大国といわれたロシアがこんなに非効率になってしまったのか。私は、その根源には、ロシアが人を大事にしてこなかったというのがあると思うのです。
実は私は、学生時代からロシア人と付き合いがあり、一時期同居していたほどです。ロシア人の友人もおり、ロシアだけではなく旧ソ連諸国も実際に訪問しています。実家は、ロシア人のホストファミリーまでやっていました(ただし、政治的にロシアを支援しているわけではありません)。
実際に見たロシアは、理不尽と非効率が蔓延っており、最先端のはずのIT業界でも同じなのです。ソ連崩壊後もそれはそれほど変わらず、賄賂とコネがなければどうにもなりません。官僚主義、コネの横行、非効率さを嫌って、やる気のある人はアメリカやイギリスに移民してしまいます。
才能がある人間は大事にはされません。誰を知っているか、が重要です。一生懸命やっても大事にされないので、創造的なサービスを作り上げたり、品質の良いサービスを運用しようと言う気も起きません。
その結果、企業も国も付加価値の高いものを提供できなくなり、産業全体どころか国全体が沈んでいきます。それが、今のロシアです。
このロシアに相似なのがわが国です。
日本は、IT技術者やプロジェクトを管理する人々をどのように扱ってきたでしょうか。元請け事業者が大きなマージンをとって、実際に手を動かす下請けの人々にかなり無理な要求をし、ひどい労働環境で働かせてきた結果が今日です。そんな現実について、大手企業の幹部も、人権活動家も、リベラルなマスコミも、政府も、皆、目を瞑っているのです。
IT業界の下請けや孫受けでデスマーチに明け暮れる人々は、シベリアやロシア南部の兵士の若者と同じです。労働条件は悪くても、生活のために選択肢がないので耐えるほかない。しかし、能力がない人々ではありません。ただ搾取される構造、非効率な構造の中で働かざるを得ないというだけです。
一方、同じ仕事をしても、イギリスやカナダやアメリカでは2倍から4倍の賃金がもらえるのです。日本とアメリカやイギリスのIT業界の人々の比較は、まるでロシア軍とNATO軍の比較のようです。NATOやアメリカの兵士なら、同じ年齢、同じようなスペックでも、遥かに高い賃金をもらえ、最新の兵器を使えるのです。
日本には、ロシアと同じく優秀な人々がたくさんいます。でも、やる気のある人は既にどんどん海外に出てしまいつつあります。
日本では、労働環境があまりにも悪いため、新しい製品を作ることもできないし、家族を養いながら継続して質の高い労働をすることができないのです。そんな環境でGoogleやTwitterが産まれる訳がありません。確かに日本からもロシアからも、先進的なITサービスや製品は生まれておらず、どこかの国のコピーだらけです。
そもそも、働き方を変えるべきだといっている政府が、下請け業者や内部のIT担当にひどい働き方を押し付けているのですから本末転倒です。金色の便座を備え付けたヨットを持っていたりするロシアのオリガルヒと変わりません。
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登録はこちらNTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。