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その地の気候風土を体で覚えている暇はない

2022.10.26

Updated by Toshimasa TANABE on October 26, 2022, 18:02 pm JST

ずいぶん前のことであるが、横浜の金沢八景の穴子漁師と長野県の高原レタス農家を取り上げたテレビ番組を見たことがある。

穴子漁師は、「オレはこの辺の海は知り尽くしている。オレの勘によれば今日はここだ。明日の朝は大漁だぜ!」と、塩ビパイプに餌を仕込んで、何百本も海に投下していた。実際、大漁だったが、外れる時もあるらしい。まさに海の恵みを前提とした博打のような人生である。

一方のレタス農家は、「畑は全部使わないんですよ。1/3は来年のため、もう1/3は再来年のために土づくりをしています」と語っていた。

対照的な自然との向き合い方であるが、この「海を知り尽くしているが故の勘」と「1/3ずつに分けての土づくり」というところが、ノウハウであり知恵ともいえる部分であろう。

自然相手の仕事は、1年に1回しかその季節と季節に応じた作業を実際にやってみて学ぶことはできない。つまり、定年も過ぎてから農業などを始めたところで、練習は10回できるかどうか、なのである。趣味や家庭菜園程度ならばそれで良いだろうが、生業となるとそんな悠長なことはしていられないはずだ。

生まれ育った土地ならば、その地の気候風土について多少のことは知っているだろうが、移住先でこれまで経験したことのない気候風土の下で何かを始めようとするならば、二十四節気を一通り体験するだけで1年がかりになってしまう。

ここで、AIやデータが役立つのではないか、などと考えてしまうのだ。問題は、その地域に固有の気候風土の知識ベースをどう構築するか、ということだろうが、60代や70代の引退間近の皆さんの知識を聞き出すのに、最後のチャンスとなりつつある、ということはなんとなく感じられる。

第1次産業は、携わる人が減ったり、高齢化したり、後継者が不足するなどの問題があるが、若い世代にゼロから始めろというのは酷である。特に既得権の有無でスタートのステージは大きく変わるし、経済的な問題だけではなく知識やノウハウについても、いま既に携わっている人からそのまま受け継ぐのに勝るやり方は無いように思える(飲食業などについても全く同じ構図に見えるが)。

DXについての論考を展開する「モダンタイムズ」には、過去のデータから災害を予測したり身を守ったりするための解説記事や第1次産業向けのDXソリューションの紹介記事が、いくつか掲載されている。以下に、関連する記事をいくつか紹介させていただく。

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「本当のDX」を考えるウェブメディア『モダンタイムズ』創刊「本当のDX」を考えるウェブメディア『モダンタイムズ

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田邊 俊雅(たなべ・としまさ)

北海道札幌市出身。システムエンジニア、IT分野の専門雑誌編集、Webメディア編集・運営、読者コミュニティの運営などを経験後、2006年にWebを主な事業ドメインとする「有限会社ハイブリッドメディア・ラボ」を設立。2014年、新規事業として富士山麓で「cafe TRAIL」を開店。2019年の閉店後も、師と仰ぐインド人シェフのアドバイスを受けながら、日本の食材を生かしたインドカレーを研究している。