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予防できない認知症。自分を疎外するのは、老いや死を受け入れない態度である

2023.01.30

Updated by WirelessWire News編集部 on January 30, 2023, 06:57 am JST

多くの人は、弱さと共に生きることになる

医療技術の進歩は目覚ましい。「多くの病気が治るようになった」ということは素直に喜びたい。いまだに治ることのない病気や障碍を持つ人のことを決して忘れてはならないが、人は戦争や事故にあわない限り、多くの場合に健康で長寿の人生を送れるのだ。これは歴史上類を見ないことであり、人は神のごとくなった(ホモデウス)という論点は、確かに一面の真実ではある。

しかし、光があれば影がある。高齢者の現実の医療に長年携わってきた立場からは、もう一つの真実も語らねばなるまい。健康に気をつけていれば、いつまでも心も体も健康で元気いっぱいで過ごせる、というのは虚構である。人間は、長く生きれば身体は自然に弱り、認知機能は低下するものだからだ。

多くの病気が治るようになった、と先に書いた。確かに死ぬことは大幅に減った。しかし、病気の合併症や後遺症がなくなるわけではない。例えば、糖尿病の治療や管理は進歩した。したがって、多くの人が網膜症(目が見えない)、腎症(透析)、神経障害(しびれなど)と共に生きねばならないのだ。現代社会の高齢者の多くは障碍と共に生きている。私たちは、長く生きれば障碍と共に生きるという現実に直面しつつある。

「本来なら元気いっぱいだ」と思い続けて生きることは幸せか?

しかし、それに目を背ける現代人は多い。筆者は高齢化する団地で集いの場を作り、医師による健康相談を行っている(いわゆる医療アンメットニーズを探索するという研究の一環である)。相談内容は、膝痛、腰痛、尿もれ、若いころのように元気に過ごせない、といったものが多い。よく聞くと、重大な身体疾患はなく「年のせい」としか言いようがないのだが、「テレビでは治ると聞いた」と言って、怒りと共に様々な医療機関を渡り歩いている。

多くの場合、彼らは孤独な人々である。「テレビではヒアルロン酸やら尿もれパッドやらのCMばかりですよね。みんな困っているのです」というと、はっとした顔をする。そして、「同年代の方と交わりましょう、みんな困っているということが分かります。あなただけではないのです。あなたは孤独ではありません」と伝えると分かってくれることが多い。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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