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多様な翻訳が可能な科学は、創造的活動のソースとなる

2023.06.08

Updated by WirelessWire News編集部 on June 8, 2023, 07:02 am JST

人は自分の習慣や規範的思考を変えるのに、明示的なトリガーを必要とする

画期的なものや人、出来事に出会ったとき、人はそれを境にそれまでの考え方やふるまいを変えることがある。よく著名人のインタビューなどで「あなたを変えたひと言は何ですか」のような質問を耳にするが、誰かが何の気なしに言ったアドバイスや、モットーのようなものが自分の中に強く残り、その後の行動を変容させることがままあるのだ。もちろん、機が熟していた、たまたま変わる時期に来ていた、と考えることもできるが、そうした積み重なりにおいてあるひと言がきっかけとなって作用したことに変わりはない。

教育の現場で日々投げかける言葉のうち、どれが学生の大きな成長のトリガーとなるかは誰にも読めない。どれもが学生のマインドセットを変える起点となるポテンシャルを持っている。些細なひと言が刺激となり大化けして、誰かにとっての「創造的翻訳」、つまりポジティブな変化を起こすかもしれないのだ。

おもしろいのは、人が自分の習慣や規範的思考を変えるのに、何かしら明示的なトリガーを必要とする傾向である。このシリーズで紹介してきた翻訳学的には、きっかけとなる情報コンテンツを「起点テキスト(いわゆる原文)」、それによって生み出された思考や行動を「目標テキスト(訳文)」と見立てることができる。その間の変化を実現する行為がトランスレーションであり、両者の差がシフト(変容)である。

古くから行われてきた創造的な翻訳

さて今回は、起点テキストと目標テキストが等価性(同じ意味)を持つことにとらわれずに自由な表現を産み出す創造的(クリエイティブ)翻訳の話をしたい。前回、サイエンスコミュニケーションの話題に触れたが、ある科学的事象を、子供にも納得できるように易しく表現し、伝える必要があるとしよう。アインシュタインは、6歳の子供にもわかるように説明できなければ理解したとはいえない、と言ったが、科学的法則そのものは多くの場合、シンプルかつ明確である。

とはいえ、たとえば分子や原子のように、肉眼で見えないものを子供は知るはずがないし、概念的なものも伝えにくい。では、どうやって表現するか。子供の目線に立ち、知っていること、周りにあるものを活用し、具体例をもってくる、似ているものにたとえる、事象を目の当たりに見せるなど、科学とその子供が生きている世界をつなぐしかけが必要だろう。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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