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過去の気象解析データで山岳事故をなくせ
「逗子開成高校八方尾根遭難事故」に学ぶ冬山登山の心得

2023.12.05

Updated by WirelessWire News編集部 on December 5, 2023, 07:00 am JST

今井明子(以下、今井):今回は冬山登山のお話を伺いたいと思います。逗子開成高校八方尾根遭難事故はどのようなものだったのかを教えていただけますか。

大矢康裕(以下、大矢):1980年12月から翌年の3月というのは実は豪雪の年で、昭和56年(1981年)に発生した豪雪ということで、「五六豪雪」と呼ばれています。

その五六豪雪の始めのほうで起きたのが、逗子開成高校八方尾根遭難事故です。この事故では、神奈川県にある逗子開成高校という私立高校の先生1人と山岳部の生徒5名のパーティーで、北アルプスの八方尾根に入って行方不明になり、全員が死亡しました。捜索活動も難航して、発見されたのは翌年の5月でした。

今井:そんなに時間がかかったとは! 雪が融けてから見つかったのでしょうか。

大矢:いえ、発見されたタイミングではまだ融けていませんでした。しかし、発見された場所が最終的に滞在したテントのあった地点からかなり離れていたので、八方尾根の周囲の非常に広い範囲を調べてようやく見付かったんです。

この登山では、山岳部のメンバーは、まず1980年の12月25日に、北アルプスの後立山連峰のひとつである唐松岳に登るために電車で白馬駅に向かって出発しました。そして翌日の26日に白馬駅を下車し、八方尾根を登り始めました。

この八方尾根は、下のほうはスキー場で、後には1998年の長野オリンピックのスキージャンプやアルペンスキーの会場にもなりました。ですから、麓からはロープウェイとリフトを使って八方池山荘という通年営業の山荘まで登れます。そして、そこから歩いて第二ケルンというところまで行き、テントを張りました。

この翌日の27日が遭難した日です。27日は既に午前9時の時点で天気が荒れ始めていたのですが、なぜかパーティーがテントを出発したのは11時頃でした。第二ケルンから唐松岳方面に向かって本気で登ろうと考えるとこんな遅い時間ではなく、明るくなり始めた朝の7時ぐらいには出発しないと間に合いません。

なぜこんな遅い時間に出発したのかは、パーティーの皆さんが亡くなっているので真相はわかりません。ただ、もう雪で頂上まで登れないことは分かっていたので、先生としては途中まで行って引き返し、生徒に「冬山ってこんなものなんだよ」ということを体験してもらおうと思って出発したのかもしれません。しかし、案の定、時間切れになってしまったので、途中の第三ケルンというところにまで来て引き返そうとしたのだと思います。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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