コペンハーゲンに留学中の仁科と友人たち(1925)。左から右へ、仁科、デニソン( D.M. Dennison:米)、クーン( W.Kuhn:スイス)、クローニヒ( R.Kronig:オランダ)、レイ( B.B.Ray:インド)。コペンハーゲン大学Niels Bohr Archiveより掲載許可。
What did Dr. Yoshio Nishina bring back from the Niels Bohr Institute?
Updated by シュレディンガーの水曜日事務局 on October 1, 2025, 22:00 pm JST
シュレディンガーの水曜日事務局 Schrödinger
オンラインイベント「シュレディンガーの水曜日」の運営事務局です。東京工業大学・物質理工学院・原正彦研究室で始まった、WirelessWireNewsが主催するオンライン・サイエンスカフェです。常識を超えた不思議な現象に溢れた物質科学(material science)を中心に、日本の研究開発力の凄まじさと面白さを知っていただくのが目的です。
日本の量子科学・現代物理学の基礎を築き、さらに戦後の日本の科学立国の礎を築いた仁科芳雄博士(理化学研究所第4代所長:1946~1948)の業績の源泉は1920年代の欧州留学にあります。
仁科は1921年8月、理化学研究所の留学生としてヨーロッパ留学へ出発。英国ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所にて、アーネスト・ラザフォードに師事し、その後、ドイツのゲッチンゲン大学を経て、1923年3月にボーアへ手紙を書いて留学を希望する旨を伝え、1923年4月にデンマーク・コペンハーゲン大学理論物理学研究所のニールス・ボーアのもとで研究を始めました。ボーアが1921年に開設したこの研究所には、シュレディンガー、ディラック、クライン、パウリ、ハイゼンベルクらをはじめとする若き俊英の物理学者たちが集い、新しい物理学の構築を目指して熱い議論が日々繰り広げられていました。仁科はそこへ飛び込んだ、ということになります。
ここで身に着けた「自由闊達で楽しい討論と対話を行う“コペンハーゲン精神”」を日本に持ち帰ったことが、理化学研究所を“研究者のための自由な楽園”へと導き、日本の素粒子物理学を世界水準に引き上げ、仁科の主催する研究室からは朝永振一郎や坂田昌一を始めとする優秀な研究者が巣立っていき、仁科の影響を直接・間接にでも受けていない素粒子物理学者は日本にはほぼいない、という状態になりました。さて、1928年12月に帰国するまでの7年間、量子科学の創成期の真っ只中を経験した仁科は、何を学び、何を感じたのでしょう。
昨日(2025年9月下旬)、田主 裕一朗(科学振興仁科財団 理事・事務局長)、油谷 泰明(理化学研究所OB)、原正彦(東京科学大・名誉教授)の3氏が、その足跡を辿る旅を追体験し、当時の最先端の科学者に積極的にコンタクトし卓越したコミュニケーション能力を発揮したとされる仁科博士の思いを探る旅に出かけてきました。具体的な訪問先はコペンハーゲン大学・ニールス・ボーア研究所、ケンブリッジ大学・キャベンディッシュ研究所、ラザフォード・アップルトン研究所、そして(英国)国立シンクロトロン光源科学施設「ダイアモンド・ライト・ソース」です。
今回の「シュレディンガーの水曜日」はこの3氏による複数のデンマークと英国の研究所訪問記を豊富な写真付きでご紹介します。現在のニールス・ボーア研究所やキャベンディッシュ研究所で行われている最先端研究の様子、日本国内の研究環境との決定的な違い、などについても言及させていただく予定(むしろこちらがメインの話題になるかもしれません)です。2時間に渡って「3人の短い旅行について雑談する」お気楽なオンラインイベントです。奮ってご参加ください。
名称 | 「シュレディンガーの水曜日」 理化学研究所・仁科芳雄博士はニールス・ボーア研究所から何を持ち帰ったのかー仁科芳雄の足跡を追体験して感じたこと |
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開催日時 | 2025年11月19日(水) 19:00~21:00 |
話題提供者 (敬称略) | ![]() (公財)科学振興仁科財団 理事・事務局長 名古屋大学大学院理学研究科物理学専攻で原子核理論、特にハドロン理論を研究し博士(理学)取得。名古屋大学博士研究員を経て、広島大学博士研究員、東北大学助教として、半導体デバイスの研究に従事。2014年に(公財)科学振興仁科財団事務局長に就任し、仁科芳雄博士のふるさと岡山県里庄町で顕彰事業を推進。曽祖父は仁科博士と高等小学校で同級生。 |
![]() 慶應義塾大学法学部卒、1977年理化学研究所入所、経理部会計課、国際協力課長、英国RAL(ラザフォード・アップルトン研究所)支所事務主幹、横浜研究所研究推進部次長、播磨研究所研究推進部長、人事部長、外務部長、中国北京事務所長などを歴任。 | |
![]() 東京科学大学 名誉教授 東京工業大学大学院理工学研究科有機材料工学専攻、有機超薄膜の相転移などを研究し工学博士を取得。理化学研究所と東京工業大学にて、ナノテクノロジーや自己組織化、生物コンピュータ、生命の起源などの研究に従事。退職後、ドイツ・アーヘン工科大学のシニアフェロウなどを経て、現在、英国ロンドンに在住。「シュレディンガーの水曜日」世話人を兼務しつつ、アート・インスタレーションと新しい科学の可能性を探索している。 | |
![]() 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授、一般社団法人 日本物理学会第79期および80期会長、同学会物理遺産選定委員会委員長 日立製作所基礎研究所研究員、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻助手、同助教授、同准教授を経て現職。専門は固体表面およびナノスケール構造の物性・トポロジカル物質。2018年から2023年まで公益社団法人・物理オリンピック日本委員会理事長。「シュレディンガーの水曜日」のメンバー。 | |
実施形態と参加方法 | Zoomウェビナー(Webinar)を利用したオンラインイベントです。 お申し込みはこちらから |
参加料 | 無料 |
申込期限 | 2025年11月19日 (水)の午前11時まで |
主催 | 「シュレディンガーの水曜日編集委員会」/スタイル株式会社 |
※プログラムの内容・時間などは予告なく変更となる可能性があります。ご了承ください。