Updated by 中村 航 on October 20, 2025, 06:11 am JST
中村 航 wataru_nakamura
1985年生まれ。福岡県福岡市出身。翻訳者。テクノロジーやファッション、伝統工芸、通信、ゲームなどの分野の翻訳・校正に携わる。WirelessWire Newsでは、主に5G、セキュリティ、DXなどの話題に関連する海外ニュースの収集や記事執筆を担当。趣味は海外旅行とボードゲーム。最近はMリーグとAmong Usに熱中。
宇宙から流れてくる電波の中に、個人や企業、政府の重要データが暗号化されないまま混ざっている―そんな驚くべき実態を、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の研究チームが明らかにした。研究者らはわずか800ドル(約12万円)の機材で衛星通信を傍受し、暗号化されていない通話、電子メール、さらには軍事関連データまで受信できたという。
この実験では、カリフォルニア州ラ・ホーヤの建物屋上に市販の衛星受信機を設置。オープンソースのソフトウェアを用い、北米および隣接海域上空を周回する衛星の無線通信を3年間にわたって収集した。その結果、範囲内の通信衛星のおよそ半分が保護されていないデータを送信していることが判明。これらのデータの中には、航空機乗客の機内Wi-Fiでのブラウジングデータ、電力会社や海洋石油・ガスプラットフォーム企業の内部メッセージ、さらには米軍やメキシコ軍などの通信も含まれていたという。
今回の発見で注目すべき点は、研究者らが通信を意図的に傍受したわけではなく、単に送信されている信号を受信したに過ぎないということだ。それにもかかわらず、容易に機密情報を取得できたことは、世界的な衛星インフラにおける重大なセキュリティ上の欠陥を浮き彫りにしている。
研究を主導したUCSDのAaron Shulman教授は「情報機関のように、はるかに高性能な受信装置を持つ組織が、同じ未暗号化データを何年も前から解析していた可能性は高い」と語る。研究チームは今回の発表により、民間企業や政府がより強固な暗号化技術を採用するきっかけになることを期待している。
参照
Don’t Look Up: There Are Sensitive Internal Links in the Clear on GEO Satellites
This $800 experiment caught unencrypted calls, texts, and military data from space | TechSpot
Private messages to military data: Satellites are leaking secrets, study shocks