December 10, 2025
岩元 直久 Naohisa Iwamoto
WirelessWire News編集長。日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。ITジャーナリスト、フリーランスライターとしても雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。
VPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)は、太陽光や蓄電池、EV(電気自動車)など、地域に点在する小さな電源や負荷をまとめて「1つの発電所」のように取り扱う。VPPの安定稼働には、発電量の変動が大きい再生可能エネルギーと需要のバランスを取る需給調整技術が必要になる。このVPPの需給調整技術の開発に取り組むグリッドと電気通信大学は、量子技術と古典技術を融合した最適化手法が、本格研究フェーズに入ったと発表した。
具体的には、両者の「仮想発電所(VPP)需給調整におけるリスクヘッジ型量子古典確率最適化手法の開発」プロジェクトが、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のステージゲート審査を通過し、本格研究フェーズへと移行した。
このプロジェクトは、VPPの需給不確実性の最適化に、ゲート方式の量子技術を応用。100万通り以上のシナリオを扱うような計算で、電力の安定供給とリスク制御を両立させる。2025年10月までに実施した初期仮説検証フェーズでは、量子技術を使った確率分布生成やシナリオ予測で、古典的手法との比較を通じて有効性を確認したという。
今回の本格研究フェーズでは、(1)量子生成モデルと変分最適化を統合したモデルで、大規模なVPP全体の最適化を検証、(2)クラウド上の量子計算環境での実機検証、(3)厳密解法や近似解法、量子アニーリング、量子インスパイアードなど他の手法と比較した際の提案手法の優位性の検証--を進める。
グリッドは、最適化AI技術で社会インフラの課題解決を目指す。VPPの需給不確実性の課題解決もその1つで、技術の実用化によるエネルギー需給の安定化、CO2排出量削減、電力市場における効率的な取引促進に寄与する。研究開発は2027年3月末まで実施し、2029年からの社会実装を想定している。
【報道発表資料】
・NEDO事業「量子・古典ハイブリッド技術のサイバー・フィジカル開発事業」 ステージゲート審査を通過し、本格研究フェーズへ