フランスの大手通信事業者イリアド(Iliad)が、ブイグテレコム(Bouygues SA)の買収に向けた交渉を進めているという話をLe Parisien紙が現地時間8日付で報じたという。
この話を採り上げたGigaOMによると、両社の間では現在売買金額などをめぐる交渉が進んでおり、ブイグテレコム側の希望額は80億ユーロ、それに対してイリアド側からは50億ユーロの条件が出されているなどとされている。
ザビエル・ニール(Xavier Niel)氏が率いるイリアドは、「Free」というサービス名で固定線(光ファイバー)のブロードバンド接続や有料テレビ配信、Wi-Fi接続に軸足を置いた無線通信/携帯電話サービスなどを提供しており、モバイル通信分野では低価格路線を打ちだして急激に加入者数を伸ばしている。英調査会社TCLの調べによると、イリアドが2012年はじめに開始した同社のモバイル通信サービスは、昨年第3四半期に約740万人の加入者を数え、市場シェアの11%を占める規模まで成長しているという(事業者別では、フランステレコム(France Telecom)の「Orange」、ビベンディ(Vivendi)のSFR、ブイグテレコムに続く第4位)。またイリアドの参入以来、携帯通信事業者間の価格競争が激化し、その影響で既存業者の業績がさらに悪化したことなども伝えられていた。
さらに、仏携帯通信市場では先ごろ、メディア・通信企業のビベンディ(Vivendi)が傘下の携帯通信事業者SFRをケーブル事業者のアルティス(Altice)に売却する計画を発表したばかり。この件では、アルティスとブイグテレコムがSFR買収に名乗りを上げていたが、ブイグテレコムによる買収には独占禁止法違反の懸念もあり、結局アルティスが売却先として選ばれた(計画実現には仏規制当局の承認を得る必要がある)。なお、ブイグテレコムはSFR買収に向けた条件として、同社が保有する通信インフラの一部をイリアドに譲渡するとの案を提示していたという。またアルティスへのSFR売却が発表された際には、単独での生き残りが難しくなるブイグが携帯通信事業の売却を検討するとの可能性も指摘されていた。
SFRをアルティスにさらわれた格好のイリアドとしては、生き残りに向けたてこ入れ策としてブイグテレコムを獲得したいところ。またこの買収が実現すれば、同社がフランステレコムから借り受けている携帯通信網の部分を、自前の回線に切り替えることも可能になるといった指摘もある。
【参照情報】
・Report: France's Free Mobile in talks to buy rival Bouygues Telecom - GigaOM
・Iliad, Bouygues discuss tie-up: Le Parisien - Reuters
・Phones Still Ringing In France - WSJ
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