この夏、「アイスバケツチャレンジ」でにわかに注目を集めたALS(筋萎縮性側索硬化症:きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)や、閉じ込め症候群など身体を動かすことができない病気の人のために、脳波計測器を利用しようという動きがある。
脳波(EEG)を計測するヘッドバンド型の民生用デバイスがいくつも登場していて、睡眠の質やストレスのレベルなどを測ったり、集中力アップや瞑想(メディテーション)を行う際の自分へのフィードバックに使ったり、あるいはハンズフリーでガジェットを操作したり、手を使わないゲームのコントローラーにしたりとさまざまな用途が試されている。
フィリップスとアクセンチュアが発表したプロトタイプに採用されたのはEmotive社のInsightという2015年に市販される予定のヘッドセット。これをタブレットにつないで、さらにグーグルグラスのようなウェアラブルなディスプレーを組み合わせ、利用者が「左」とか「下」といった簡単なコマンドを「考える」ことでカーソルを移動することができ、メニュー画面を使ってスマートテレビやスマートライトなどフィリップスの家電製品をコントロールすることが可能になるというコンセプトの実証が行われているそうだ。
予め登録したメッセージを電子メールやショートメッセージとして送信することも可能になる。緊急通報に限らず、家族や医療従事者との意志疎通にもある程度は寄与できるのではないだろうか。
mobilehealthnewsの記事によると、両社のプロジェクトでは、ALSを手始めに、閉じ込め症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、脊髄障害などの患者のケアと自立的な生活に役立つアプリケーションに拡げていく計画があるそうだ。
人工呼吸器を使っている患者の場合、地震や台風などで停電した場合の備えが難しい。脳波によるコントローラーも電力に頼るソリューションであるゆえ、災害時など長時間停電時のバッテリー問題の解決も併せて重要と思われる。
【参照情報】
・フィリップスのニュースリリース
・Accentureのニュースリリース
・Philips, Accenture prototype app would let ALS patients mind control their devices
・日本ALS協会のウェブサイト
おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)
登録はこちらNTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。 訳書:「Asterisk:テレフォニーの未来」