ベライゾンの勝訴がやぶ蛇に - ネット中立性問題で規制強化を警戒する米ISP業界
2014.10.06
Updated by WirelessWire News編集部 on October 6, 2014, 10:49 am JST
2014.10.06
Updated by WirelessWire News編集部 on October 6, 2014, 10:49 am JST
米国のブロードバンド業界各社が、ネットワーク中立性の問題に関し、米連邦通信委員会(FCC)を訴えて勝訴したベライゾン(Verizon)の判断にひそかに激怒している・・・そんな話がNational Journalサイトに掲載されている。
同記事によると、米ISP各社の間では、現在FCCが進めているネットワーク中立性に関する新たなルール作りで、携帯通信事業者も対象に含まれる可能性が浮上してきていることから、このルール見直しのきっかけをつくったベライゾンのFCC提訴について「経営判断を誤った」といった不満の声が高まっているという。また、FCCでISP事業を現在の「情報提供サービス」から、公益事業並みに規制の厳しい「通信サービス」に分類し直す動きがみられることにも各社が警戒感を募らせているという。
2010年に施行されたネットワーク中立性に関する規制では、ISP事業者に対して、ネットトラフィックの差別的取り扱いを禁じる項目が含まれていたが、ただし対象は固定線(有線)のプロバイダーに限られ、帯域に限りのある携帯通信網経由のネット接続は対象外とされていた。ベライゾンはそれに対し、FCCにはそうしたルールを定める権限がないなどとして、米連邦巡回裁判所に提訴。今年1月にはこの裁判でベライゾン側の主張を認める判断が下され、FCCではそれ以来新たなルール作りを進めてきている。
FCCのトム・ウィーラー(Tom Wheeler)委員長は、この件に関し、今年5月にはいわゆる「ファーストレーン」(トラフィック配信コストを負担したコンテンツ・プロバイダーのトラフィックを優遇する措置)をISP事業者に認める内容などを盛り込んだ提案を発表していたが、この提案に対してはウェブサービス提供者や消費者保護団体などから強い反発の声が上がっていた。また先月締め切られた一般からのコメント募集でも、FCCに対して370万件以上のコメントが寄せられていたが、その大多数が「ファーストレーン」導入を批判するものだった。こうした批判を受けて、現在ウィーラー委員長にはこの問題で規制の強化を求める圧力が高まっているという。
National Journal記事によると、同委員長は9月にラスベガス(であったCTIA関連のイベント)で、携帯通信業界は2010年から現在までに様相が激変しており、「インターネットにアクセスするための重要な経路として、消費者はモバイルブロードバンドにますます依存するようになっている」などと述べ、携帯通信網を規制対象に含める考えを示唆していたという。
同記事には、携帯通信業界のロビイストらがこうした規制強化を阻止すべく政府関係者などに働きかけを行っているものの、負け戦の様相が強まっているといった一節や、現状では新しいルールの内容が2010年のそれと同様のものになればISP各社にとっては御の字、といった一節もある。
【参照情報】
・Why the Broadband Industry Is Secretly Furious With Verizon Over Net Neutrality - National Journal
・ISPs "secretly furious" at Verizon, scared of stronger net neutrality rules - Ars Technica
・Rival ISPs fuming about Verizon's takedown of old net neutrality law - Fierce Wireless
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