ブルネイの携帯電話事情(2) - プリペイドSIMを購入してLTEなどを試す
2014.08.29
Updated by Kazuteru Tamura on August 29, 2014, 15:30 pm JST
2014.08.29
Updated by Kazuteru Tamura on August 29, 2014, 15:30 pm JST
カリマンタン島の北部に位置するブルネイ・ダルサラーム国(以下、ブルネイ)。面積は三重県と同じくらいの小国で、この国の携帯電話事情を知る機会はあまりないだろう。実際に足を運んでプリペイドSIMカードを入手してきたので、ネットワーク事情などを含めて紹介する。
ブルネイには2社の移動体通信事業者が存在する。シェアが首位のDST Communications Sdn Bhd (以下、DST)と2位のProgresif Cellular Sdn Bhd (以下、PCSB)が存在する。この2社はいずれもプリペイドSIMカードを提供しており、外国人でも購入することが可能である。
DSTは2014年8月現在、FDD-LTE方式が1.8GHz帯(Band 3)、W-CDMA方式が2.1GHz帯(Band I)、GSM方式が900MHz帯で提供する。LTE方式による高速な通信もプリペイド向けに解放されているのは嬉しいところである。
DSTはポストペイドサービスのPrimaとプリペイドサービスのEasiを用意しており、プリペイドサービスのEasiを選択することになる。サービス名はEasi Prepaid Starter Packであるが、LTEサービスを利用するには4Gのモバイルブロードバンドと伝えた方が確実だろう。店内には電話番号を選ぶ機械があるので、そこで4Gを選べば問題ない。
購入には身分証明書としてパスポートの提示が必要なため、携帯しておくようにする。また、ブルネイでの滞在地を書く必要があるので、宿泊ホテルの所在地と連絡先を忘れないようにしておきたい。
SIMカードのサイズはNano SIM (4FF)、Micro SIM (3FF)、Mini SIM (2FF)の3種類で、Nano SIMとMicro SIMはデュアルカットとなる。
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Easi Prepaid Starter Packの料金と内容は表1の通りである。支払額は合計で30B$(ブルネイドル:1B$=82.96円(2014年8月29日現在))となり、10B$分の初期残高が付属するが、10B$分の初期残高では使い切ってしまう不安があれば、データパッケージを購入することを推奨する。
▼表1:Easi Prepaid Starter Packの料金と内容
データパッケージは2種類のプランが用意されている。それぞれのデータパッケージを購入できるだけの残高がなければ、チャージしてからデータパッケージを購入することになる。チャージはブルネイ国際空港の両替所など、Easiのステッカーが貼られたところで購入できる。データパッケージの種類と内容は表2の通りである。
▼表2:Easiのデータパッケージプラン
APNはdst.internetで、ユーザ名やパスワードを設定する必要はない。残高の確認は*102#である。1.8GHz帯のFDD-LTE方式に対応した端末であれば、LTE方式の通信を利用できる。バンダルスリブガワン市内は概ねLTEエリアとなっており、たまにHSPA+/W-CDMA方式に落ちる程度である。EDGE/GPRS/GSM方式に落ちることは一度もなかった。
LTEサービスの帯域幅は20MHz幅をで、通信速度は理論値が下り最大150Mbps/上り最大50Mbpsとなる。スピードテストアプリで通信速度を測定できるが、大手のスピードテストアプリは遮断されているため、日本のスピードテストアプリなど世界ではマイナーなスピードテストアプリを使って通信速度を測定できる。ただ、日本のスピードテストアプリなどを使うと応答速度が遅くなるので注意しておきたい。
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DSTはAndroid端末とiOS端末にDST MBBというアプリを提供しており、チャージなどをアプリで行うことができる。DSTのアプリでは通信量や有効期限なども確認できるので、DSTのプリペイドSIMカードを使うのであればインストールしておくと便利だろう。
▼Airport Mall内にあるDSTの店舗。ここでDSTのプリペイドSIMカードを購入した。
▼DSTのSIMカード。
▼ブルネイ国際空港の両替所ではEasiのステッカーが貼られており、チャージが可能である。SIMカードは販売していない。
▼DSTのLTEに接続して通信速度を測定した。下りは40Mbps以上、上りは30Mbps以上を記録した。
▼DSTのアプリをAndroid端末で使う。開通日時、有効期限、プラン、通信量を確認できる。アプリで各種設定の変更もできる。
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PCSBはB-Mobile Communications Sdn Bhd (以下、B-Mobile)を買収したことで誕生した新生の移動体通信事業者である。2014年7月1日よりブランドをPCSBとして営業している。PCSBがB-Mobileの事業を引き継いで移動体通信サービスを提供する。B-Mobileの設立自体が2005年と比較的遅く、サービスは2.1GHz帯(Band I)のW-CDMA方式のみとなる。
プリペイドサービスはB-Mobile時代と同じくYES! Zoom Starter Packが用意されている。
SIMカードの価格は30B$で、4B$のバウチャーが付属する。データ通信はYES! Zoomに用意されている4種類の定額プランから選択可能で、各プランの料金と内容は表3の通りである。なお、プリペイドSIMカードの購入にはパスポートの提示が求められるので、忘れないように注意しておきたい。
▼表3:PCSBのデータプラン
PCSBの場合は開通手続きが必要で、179に発信して開通する。定額データ通信プランを購入するためには、トップアップカードを購入してからトップアップする必要がある。必要な額のバウチャーを店頭で購入してから、USSDコードまたはSMSでトップアップを行う。USSDコードは*178#に続けて12桁のPINを入力して発信、SMSでは178に12桁のPINを入力して送信する。12桁のPINはトップアップカードに記載されている。
残高は*180#で確認できる。PCSBは2014年7月1日より完全にPCSBブランドに切り替えているが、トップアップカードはB-Mobile時代のものを使用しており、B-Mobileロゴが記載されていた。いずれはPCSBに変えられるので、B-Mobileロゴのトップアップカードは貴重なものとなるだろう。SIMカードのサイズはMicro SIM (3FF)とMini SIM (2FF)のデュアルカットを用意しており、Nano SIM (4FF)は用意していない。
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PCSBはB-Mobileから生まれ変わったことで、B-MobileからPCSBにSIMカードの変更を受け付けているが、その影響でしばらくはSIMカードを変更する利用者で混雑すると思われる。ただ、新規でSIMカードを発行する場合は、SIMカードの変更とは異なるカウンターで待たずに手続きを行える場合もあるので、整理券を発行する前に店舗のスタッフなどに聞くと良いだろう。
▼Times Square内にあるPCSBの店舗。ここでプリペイドSIMカードを購入した。
▼PCSBのSIMカード。非常にシンプルで少々面白みがない。
▼トップアップカードにはB-Mobileのロゴが見られる。
▼PCSBのネットワークで通信速度を測定したが、上りは1Mbpsも出ないことが多い。画像のアップロードなどを頻繁に行うのであればDSTの方が実用的に使えるだろう。
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ブルネイでは移動体通信事業者の店舗が非常に少なく、2014年8月時点でDSTは8ヶ所、PCSBは5ヶ所のみである。店舗が少ない上に公式ウェブサイトに記載されている住所で検索してもヒットしないことが多い。
DSTは公式ウェブサイトに店舗の位置を示した地図を掲載しているが、その位置は大きく誤っている。そのため、空港から徒歩圏内のAirport MallにあるDSTのSignature StoreまたはAirport Mall隣のTimes SquareにあるPCSBのTimes Squareケアセンターのどちらかで購入しておいた方が無難だろう。なお、PCSBは本社併設の店舗で購入可能であるが、DSTは不可なので注意しておきたい。
営業時間は全店舗で統一されておらず、曜日によって異なる場合や日曜日が休業の場合もある。また、ブルネイはイスラム教国であり、ラマダーンの時期は変則的な営業時間となる。そのため、ブルネイを訪問する前に営業日を確認しておくことを推奨する。
ブルネイではSIMカードの購入は簡単であるが、SIMカードの購入前に店舗の少なさや営業日時が少し障壁となるかもしれない。
▼ラマダーンの時期は営業時間が異なるため、Times Square内にあるPCSBの店舗では張り紙で告知していた。
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登録はこちら滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。