WirelessWire News Technology to implement the future

by Category

地図情報の変容・測位空間の拡充(1)位置情報サービスのデータベース

2013.02.12

Updated by on February 12, 2013, 17:30 pm JST

空間情報化は、「ジオアプリ」としてのスマートフォン、それを下支える「測位空間」、データベースである「地図情報」の三位一体で進み、思いもよらぬサービスを出現させていく。第二部では、まず「地図情報」を、最後に「測位空間」を取り上げていく。

地図の変容

地図の歴史は言葉より古く、文明とともに進化してきた。ただ、ここ20年、デジタル化が進み、拡張するインターネットに取り込まれ、地図は大きく様変わりしている。
この間、国内でこうした動きを技術的に牽引してきたのはGIS(Geographic Information System)や地図業界である。一方、ウェブ上では、Googleが提供する地図が社会インフラとなり、インターネット、そしてスマートフォンが普及するに至って、これを使いこなすユーザー自身が地図の世界を変えつつある。

広く知られているように、検索数最大のコンテンツは地図である。すでに目的地へのナビゲーションは、ネットユーザーの基本行動であり、マッピングは情報提供の基本手段となっている。こうしたウェブ上の新しい習慣を起点に、地図は再編されつつある。
ナビゲーションとマッピング。どちらも"ルート"あるいは"ピン"という別コンテンツを地図に重ね合わせた地図サービスである。例えば、ルート情報を取り上げてみよう。これは点と線の集合であり、少なくともすべての点に位置情報が付与されなければルートは表示できない。各点の位置情報は、ネットワークデータといわれるデータベースをもとに、最短経路を解析して生まれる。

ネットワークデータとは、道路を点(ノード)と線(リンク、あるいはウェイ)の集合ネットワークととらえ、それぞれの点と線に必要な情報を紐づけたデータベースである。線には、距離、接続ノードの位置情報、幅員、車線、進行方向、表層状況、勾配など数多くの属性データが紐づけられている。共創地図プロジェクトのOSM(Open Street Map)には、何と1万項目を超える属性データが登録されている。最短経路を解析するケースでは、距離や進行方向などの線の属性データをもとに経路が割り出されるのである。

また、地図上に表示されている建物であれば、同様のデータベースに多角形(ポリゴン)の情報群として格納され、色や線の太さなどを決める「見え方情報(表示規定情報)」に基づいて表示される。画像と思われがちな地図も、その多くがデータからその都度生成されたものである。このように、ルート情報や建物情報だけとっても、GISで培われた地図関連技術は奥が深い。

地図活用アプリ

ただ、一般的な地図利用シーンであるスマートフォン、それも地図活用アプリにおいては、これら地図関連技術に加えて、異なる分野の技術が必要になる。例えば、通信技術であり、センサーやメモリーといった端末側の性能であり、ローカル(端末)とサーバーとの資源配分であり、インターフェースである。地図サービスに対するユーザーの満足度は、むしろこうしたユーザーに近い技術の影響の方が大きいといっても過言ではない。紙の地図は実に多くのコンテンツ階層で構成されているが、ウェブでも多くの異分野技術が連動しながら一つの地図サービスを形作っている。

下図は、典型的な地図利用アプリの構成図である。最終的にクライアント端末のアプリで統合され表示される描画地図も、サーバー側では地図APIとコンテンツDB、クライアント側では各種センサー情報が別系統であることがわかる。

もちろん地図データを購入してアプリサーバーに収めることもできるが、豊富な選択性やコストバリューの観点から地図APIが選択されることが多い。

一方で、地図情報は比較的容量が大きいことから、安定的な地図表示には広帯域の通信環境が必要である。外国人に観光アプリを利用してもらうため通信を避けたい場合や、他人任せの通信環境依存を嫌う場合などは、外部の地図APIに頼らずローカル側に地図データを持たせることもできる。

201302121730-1.jpg

3階層の地図サービス

このように、少なくともウェブ上の地図には複数の技術階層がある。これは、インターネットの技術階層OSI参照モデルに似ている。通信技術や複製技術の塊であるインターネットは分けようと思えばいくらでも細分化できるものの、技術間連携の最適化を狙って7つの階層を設けている。ウェブ上の地図サービス、もう少し絞り込んで地図活用アプリを考えた場合、まずは技術階層を3つに分ける必要がある。

上図にあるように、コンテンツ情報と地図情報は別系統で管理されることが多い。アイコン情報をサーバーからとり、一方、地図画像は地図APIからとるといった構成が一般的である。さらに、より詳しい位置関連情報が必要な場合、ネットワークデータを直接参照したり、センサー情報を複合的に利用することになる。

このような構造を技術階層に落とし込んだのが下図である。一番深い部分にあるのが「データ階層」、その上に「画像階層」、最上部にあるのが「コンテンツ階層」である。なお、階層名は便宜的なものである。

201302121730-2.jpg

それぞれの階層で扱う情報については、次回整理する。

(次回に続く)

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら