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石巻市でホワイトスペースやエリアワンセグなどを活用した防災システムの実証試験

2012.11.15

Updated by Naohisa Iwamoto on November 15, 2012, 19:01 pm JST

「耐災害性の強い放送系技術を用いた防災システムの研究開発」の実証試験が宮城県石巻市で始まる。総務省からマスプロ電工が受託した研究開発で、ホワイトスペースやエリアワンセグ技術を活用して災害時にも情報を確実に届けるための助けとする。これに関連した動きとして、マスプロ電工では携帯電話事業者3社の協力を得て緊急速報メールとエリアワンセグの連携の実証実験も行う。マスプロ電工は2012年11月12日に、協力する携帯電話事業者ではKDDIが2012年11月15日に、それぞれ発表している。

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総務省から受託した研究開発では、主に2つの内容の実証試験を行う。1つは「ホワイトスペースを活用したSFN中継装置に関する研究」、もう1つは「ホワイトスペースを活用した情報伝達システムの研究」。ホワイトスペースは、放送などを目的に割り当てられているが、条件によって他の目的に利用可能な周波数帯域のことを指し、これを活用して災害時の情報伝達手段に用いる研究である。

前者は、中継局と親局が1つの周波数を使って放送するSFN(Single Frequency Network)の方式を使ってエリアワンセグの無線中継をする研究。沿岸部など長距離にわたるエリアを最大5段のSFN無線中継でカバーする。河川の防災カメラ映像や防災行政無線の音声、データ放送を利用した地域の避難情報などの伝達を想定している。

後者は、ホワイトスペースを利用した災害時向けの無線通信システムの研究。ケーブルの断線などがない無線通信で、災害時の情報伝達路を確保する。実証試験では、ホワイトスペースを利用して(1)防災カメラの映像伝送と制御、(2)エリア放送の中継装置の監視と制御--を行う。いずれも双方向無線通信システムを構築し、エリアワンセグによる放送型のシステムとのホワイトスペースの共用に関しても検証する。

一方、KDDIはマスプロ電工と協力して緊急速報メールとエリアワンセグの連携に関する実証実験を実施するとアナウンスしている。マスプロ電工によれば、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社の協力を得て行う実証試験とのこと。緊急速報メールを受信したメール画面にワンセグ起動ボタンを表示することで、すぐに災害情報などを放送しているエリアワンセグに利用者を誘導でき、重層的な情報提供に役立てる。

【報道発表資料】
マスプロ電工、宮城県石巻市で「耐災害性の強い防災システム」の実証試験を開始(マスプロ電工)
緊急速報メールとエリア放送を連携させる研究開発への協力について(KDDI)

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。