[2013年第17〜18週]2012年度の携帯3社の決算出そろう、KDDIで今度はLTEに通信トラブル
2013.05.07
Updated by Naohisa Iwamoto on May 7, 2013, 12:00 pm JST
2013.05.07
Updated by Naohisa Iwamoto on May 7, 2013, 12:00 pm JST
大型連休を挟んだこの2週間には、大手携帯電話事業者3社の2012年度通期決算が発表された。好調を維持して大幅な増益だったソフトバンクに、復活を遂げたKDDIも増益で続く。NTTドコモはMNP転出に苦戦する状況からまだ抜け出せず増収ながら減益の決算となった。KDDIは4月中旬に起こったiPhoneなどのメールトラブルの原因と対策を発表したが、その直後に今度は4G LTEサービスでトラブルが発生する事態に見舞われた。2週間のトピックを整理していこう。
まず、携帯電話3社の決算発表から。増収減益のドコモ、増収増益のKDDIとソフトバンクと、明暗が分かれる結果となった。
▼2012年度(2012年4月〜2013年3月)の3社の決算概要
NTTドコモの2012年度(2012年4月〜2013年3月期)の通期連結決算は、増収減益。売上高は前年同期比5.4%増の4兆4701億円、営業利益は同4.3%減の8372億円だった。純利益は、前年同期比6.8%増の4956億円となった。パケット収入が前年度比6.1%増の1兆8939億円に上ったほか、総販売数は2355万台(前年度比6.6%増)、スマートフォン販売数は前年度比50.7%増の1329万台に達した。Xiの契約数も前年度末比で5.2倍に上る1157万台となり、スマートフォンとXiによる収益基盤を確立した。しかし、MNPによる転出には通年苦戦を強いられ、Xperia Zなどのヒット作が登場した第4四半期でようやく純増に転じる状況だった。2013年度の連結業績は、売上高が3.8%増の4兆6400億円、営業利益が0.3%増の8400億円を見込んでいる(関連記事:NTTドコモ 2012年度決算および2013年度の取組み)。
KDDIの2013年3月期(2012年4月〜2013年3月期)の通期連結決算は増収増益だった。KDDIでは2013年3月期を「成長起点の年」とし、完全復活を印象づけた。売上高は前年同期比2.5%増の3兆6623億円、営業利益は同7.3%増の5127億円、純利益は同1.2%増の2415億円だった。連結営業利益が5000億円を超えたほか、au通信ARPUが月次ベースで底を打ったこと、「auスマートバリュー」「auスマートパス」などが好調な3M戦略で競争優位性をほぼ確立できたことを掲げる。2013年度の業績予想は、J:COMを4月から連結化することもあり、売上高が13%増の4兆1400億円、営業利益が22.9%増の6300億円のいずれも2桁の成長を見込んでいる(発表資料:KDDI 2013年3月期決算)。
ソフトバンクも、2013年3月期の連結決算が増収増益だったと発表した。売上高は前年度比5.5%増の3兆3783億円、営業利益は同10.3%増の7450億円、純利益は同7.8%減の2894億円だった。売上高は3期連続で過去最高、営業利益も8期連続で過去最高を記録した。iPhoneをベースにした純増数トップの勢いを維持しながら、ウィルコムやイー・アクセスといった買収企業とのシナジーが効果的に表れている。2014年3月期の業績としては、国内営業利益(国際会計基準)はガンホー連結化に伴う一時益の約1500億円を含むものの1兆円超の大台に載せるとの見通しを示し、NTTドコモの営業利益を超えて国内No.1になることを掲げた(発表資料:ソフトバンク 2013年3月期決算説明会)
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KDDIは2013年4月25日、4月16日から19日にかけて発生したiPhone/iPad/iPad miniのEメールトラブルの内容と対策について発表した。Eメールリアルタイム送受信システムのバージョンアップに伴い、3つの問題が発生したことが要因だという。KDDIによるとトラブルは、Eメールリアルタイム送受信システムのバージョンアップ作業に伴い、3つの問題が発生したことに起因する。現行サーバー(マスター/レプリカ)から新サーバー(マスター/レプリカ)への移行でトラブルが発生した。今後はバージョンアップなどの作業実施におけるミスをなくすため、対象設備だけでなく周辺設備まで含めたシステム全体の事前検証を行うほか、障害発生時の復旧の迅速化に務めるとしている(関連記事:KDDI、iPhoneなどのEメールトラブルはシステムバージョンアップ作業に原因)。
そのトラブルが記憶に新しいKDDIで、大型連休に4G LTE端末で通信サービスが利用しづらい状況が生じた。トラブルは4月27日の16時01分から22時18分にかけて。東京都、神奈川県、山梨県の一部で、4G LTE対応端末の一部ユーザーにLTEでのデータ通信サービスがご利用しづらい状況が発生した。27日のトラブルは、ソフトウエアのバグが原因だという。決算説明会でKDDIの田中孝司社長は、「iPhoneなどのトラブルとは独立した事象ではあるが、障害が連続していることに皆さまが疑問を抱いていることと認識している。私自身が先頭に立って再確認し、障害を起さないよう最善の努力を尽くす」と語った(発表資料:関東の一部地域で4G LTE対応端末のLTEデータ通信サービスがご利用しづらい状況について(4月27日 22時30分現在))
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その他の主要なトピックを見ていこう。
NTTドコモは、スマートフォンを便利・安心に使えるようにするためのサービスをまとめた「ドコモ サービスパック」を5月中旬から提供開始する。スマートフォンを便利に使えるようにする月額525円の「おすすめパック」と、安全に使えるようにする月額630円の「あんしんパック」の2種類のパッケージを用意する。おすすめパックには、ニュースや天気予報など約100のコンテンツが使い放題になる新しいサービスの「スゴ得コンテンツ」と、「iコンシェル」「クラウド容量オプション プラス50GB」が、あんしんパックには、「ケータイ補償 お届けサービス」「スマートフォンあんしん遠隔サポート」「あんしんネットセキュリティ」が含まれる。おすすめパックは、KDDIで好評の「auスマートパス」に対抗するサービスに位置づけられる(関連記事:NTTドコモ、コンテンツ使い放題の「おすすめパック」と安心利用のための「あんしんパック」を提供)。
NTTドコモは、ベンチャー企業の起業支援プログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」の第1回プログラム参加チームの6チームを決定した。参加チームは約5カ月間のサービス開発期間の後に成果を発表する。第1回プログラムは「グローバル・スタンダードになりうる、モバイルを活用したサービス」をテーマに2月7日〜3月11日に募集を行い、124チームからの応募があった。選ばれた6チームは200万円の助成金、オフィススペースなどの提供、経営やサービス開発に対するアドバイスなどが受けられる(関連記事:ドコモ、ベンチャー企業を支援する「ドコモ・イノベーションビレッジ」第1回の参加6チームを決定)。
ベンチャーとの連携では、KDDIも手を打っている。eコマースプラットフォームの開発・提供を手がけるOrigamiは、同社が開発したeコマースプラットフォーム「Origami」を日本で提供開始すると発表した。ソーシャルな要素を持つeコマースサービスを提供することで、スマートフォンを利用した新しい買い物体験をユーザーに提供する。このOrigamiにKDDIなどが出資したのだ。すでに500以上のブランドがOrigamiへの出店を申し込み、アカウントを順次開設している段階。Origamiを利用するには、同社が提供するiPhoneアプリを使う。今後、Android端末向けのアプリの提供やPCでの利用にも展開する計画だという(関連記事:eコマースをSNSと融合させた新プラットフォーム「Origami」発進、KDDIらが出資)。
最後に通信インフラの調査について。日経BPコンサルティングは、全国1000カ所と大規模な「全国LTEエリア調査」の結果を発表した。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルの3社の5端末でLTEの接続エリア、速度の実態を調査したもの。LTEでつながるエリア化率は、NTTドコモのXperia Zが97.4%でトップ。KDDIのHTC J butterflyが95.6%と僅差で続いた。3位以下はソフトバンクモバイルのiPhone 5(90.9%)、KDDIのiPhone 5(87.1%)、ソフトバンクモバイルのAQUOS PHONE Xx(73.5%:SoftBank 4G)の順となった(関連記事:LTEエリア化率はドコモがトップ--日経BPコンサルティングが全国1000カ所の大規模調査)。
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