[2013年第25週]BYODのソリューションが続々、「パケ詰まり」はソフトバンクが優等生?
2013.06.24
Updated by Naohisa Iwamoto on June 24, 2013, 11:30 am JST
2013.06.24
Updated by Naohisa Iwamoto on June 24, 2013, 11:30 am JST
この週には、携帯電話やモバイルPCを業務利用するためのソリューションが続けて発表されている。いずれも、クラウドを利用したりゲートウエイを加えることで、最小限の設備投資で安全なBYOD(Bring Your Own Device)やリモートアクセス環境を構築できるものだ。モバイルネットワークに接続しているのにデータがやり取りできないといった、いわゆる「パケ詰まり」の実態調査が行われ、ソフトバンクモバイル網がiPhone、Androidともにパケ詰まりを起こしにくいという結果が発表された。
まずこの週に発表された法人向けのソリューションから紹介する。日立ソリューションズは、モバイルPCの盗難・紛失から情報漏えいを防ぐ「モバイルPC 盗難・紛失対策サービス」を7月1日から提供する。モバイルPCのデータ消去や操作ロックを遠隔から操作できるほか、電話での依頼により24時間365日の捜索・回収支援サービスを受けられる。サービスは、クラウドサービスとして提供するため、導入企業はサーバーなどの用意が不要で、エージェントソフトをモバイルPCにインストールするだけでサービスを受けられる(関連記事:日立ソリューションズ、モバイルPCの盗難・紛失から情報漏えいを防ぐサービス)。
富士通研究所は、パソコン向けの業務アプリケーションの画面をそのままリモートのスマートフォンやタブレットで表示して業務が可能な「高速シンクライアントゲートウエイ技術」を開発した。この技術では画面データの転送量を既存技術の10分の1に削減可能で、既存システムにゲートウエイを加えるだけでBYODなどの活用が可能になる(関連記事:富士通研、PC向け業務アプリをスマホで利用できるゲートウエイ技術を開発)
法人向けのクラウドサービスを安全に社外から使うソリューションを、e-Janネットワークスが提供する。同社は法人向けリモートアクセスサービス「CACHATTO」(以下、CACHATTO)の最新版「CACHATTO バージョン5.1 R1」の提供を開始し、クラウドサービスの「Microsoft Office 365」と「Google Apps for Business」を正式にサポートする。端末データを残さないほか、企業内の認証基盤を経由したアクセスのみの許可、端末からの汎用ブラウザによるインターネット経由での利用の禁止などにより、BYODでクラウドサービスを利用する際のセキュリティーを高めた(報道発表資料:「CACHATTO」が「Office 365」と「Google Apps for Business」を正式にサポート)。
▼CACHATTOとOffice 365/Google Apps連携図
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いわゆる「パケ詰まり」の実態はどうなっているのだろうか。MMD研究所(モバイルマーケティングデータ研究所)が興味深い調査結果を発表した。それによると、パケ詰まりを起こしている確率を示した「パケ詰まり率」は、iPhone5でKDDI版が20.4%、ソフトバンクモバイル版が2.3%と大きな差がついた。Android端末では、NTTドコモが4.9%のパケ詰まり率だったのに対して、KDDIとソフトバンクモバイルの2社の端末ではパケ詰まりが起こらず0.0%という結果だった。この調査の結果からは、キャリアーとしてはソフトバンクが全般的にパケ詰まりしにくいインフラを提供していることと、端末ではAndroidの方がパケ詰まりしにくいと見ることができそうだ(関連記事:パケ詰まりはiPhoneではKDDI、Androidではドコモが顕著--MMD研究所調査)。
▼Androidのパケ詰まり率は、docomoが4.9%、au・SoftBankは0.0%
パケ詰まりは困るが、つながる場所が増えることもインフラ整備としては重要。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスの4社は、2013年6月21日に東京のベイエリア走る東京臨海新交通りんかい線の全区間で携帯電話サービスを開始した。駅構内だけではなく、駅間のトンネル内でもインターネット接続やEメールの送受信が可能になった。東京では東京メトロや都営地下鉄などの地下鉄、多くの私鉄の地下区間などでで携帯電話サービスが利用できるようになっているため、りんかい線は地下区間で携帯電話が利用できない数少ない路線だった(報道発表資料:りんかい線全区間での携帯電話サービス開始について)。
LTEの積極展開へ一手。NTTドコモは、LTE方式に対応する小型基地局装置を開発して運用を始めた。これまでのLTE基地局装置と比較すると、大きさが10%以下、重さ、消費電力がそれぞれ20%以下、25%以下となる小型軽量化と省電力化を達成した。NTTドコモのXi基地局数は、2013年3月末時点で2万4400局。今回開発した小型基地局装置も含めて、2013年度中に約5万局まで増設する予定だ(関連記事:ドコモがLTE小型基地局装置を開発、基地局5万局化を推進)。
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コンシューマ向けのサービスや端末に関連するニュースも多くあった。1つはスマホを安心して使えるバックアップのサービスの話題。スマホのデータを手軽にmicroSDカードにバックアップできるアプリ「auバックアップ」をKDDIが提供開始した。スマートフォンに保存されているアドレス帳や画像、ムービー、ブックカーク、カレンダー、Eメール(@ezweb.ne.jp)、楽曲、発着信履歴、ユーザ辞書の各データを、microSDカードへ簡単な操作でバックアップし、復元できる。また「au Cloud」アプリの機能を拡張し、これまで保存できた写真と動画に加えてアドレス帳とEメール(@ezweb.ne.jp)のバックアップを可能にした(報道発表資料:「auバックアップ」アプリと「au Cloud」アプリでスマートフォンのデータを簡単・便利にバックアップ)。
端末関連では、EMOBILEブランドでサービスを提供するイー・アクセスが、LTE対応スマートフォン「STREAM X(GL07S)」を、7月25日からソフトバンクモバイルの3Gサービスエリアでのサービスに対応させるというニュースがあった。これによりは、EMOBILEサービスエリアに加えて、「SoftBank 3Gエリア」(全国人口カバー率 99.99%)でも使えるようになる。申し込みや手続きは不要で、月額3880円でソフトバンクモバイルのエリアも含めたサービスを利用できる(報道発表資料:7月25日(木)よりLTE対応スマートフォン「STREAM X(GL07S)」がSoftBank 3Gエリアでも利用可能に)
また、UQコミュニケーションズは、同社のWiMAXサービスで利用できるモバイルルーター「AtermWM3800R」(NECアクセステクニカ製)に新しいファームウエアを提供したと発表した。Wi-Fi通信の省電力強化を進めた「パワーセーブ通信機能」により、連続動作時間が初期値の約8時間から、約10時間へと延長される。操作性の向上も含まれており、購入者の利便性が高まるアップデートだ(関連記事:「AtermWM3800R」、新ファームウエア提供で連続動作時間を10時間へ2時間延長)。
日本通信は、SIMロックがかかっていたため出荷を停止していた「b-mobile4G WiFi3」の出荷を6月21日に再開した発表した。同製品は「SIMロックフリー」をうたって6月14日に発売を予定していたが、発売日当日に「メーカーから当該の製品にNTTドコモのSIMロックがかかっていると報告があった」ことを理由に急遽出荷を停止した。本来の要件を満たした商品の準備が整ったことから、販売を再開する。NTTドコモ、ソフトバンクモバイル、auのSIMで利用できる(関連記事:日本通信、「b-mobile4G WiFi3」の出荷を再開)。
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