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ユーザーとキャリアの協業でカバレッジを広げるキャリアIQの技術

2010.08.19

Updated by WirelessWire News編集部 on August 19, 2010, 11:30 am JST

Carrier IQ社ウェブサイト
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携帯の基地局をどこに設置すればどういうカバレッジを達成できるか事前に知ることは携帯電話会社にとっては大変重要なことだ。世界的に広く用いられているのは、3次元の建物・地形データに、基地局の場所をプロットし、電波の伝播状況をシミュレーションするレイ・トレーシング(ray tracing)の手法だ。

一方、日本の都市部では、初期の設備が大型だったこともあり、建物の屋上などに基地局を設置したくてもビル所有者との協議が難航する場合があった。そのため、どちらかといえば、設置できるビルに設置をして、方位や伏角(下向きの角度)を調整することで、各基地局の電波がカバーするセルがすき間なく並ぶように調整する方法が一般的のようだ。基地局からの電波が届かない地下や建物の陰のエリアでは、リピーターと呼ばれる中継装置によって電波を飛ばし、カバレッジを拡げる努力が行われている。

また、電波状況の調査も重要で、各携帯キャリアはアンテナを搭載した自動車を走らせたり、調査員に歩かせたりして、電波の状況を確認しているほか、電話やウェブサイトからの利用者の申告を受け付けたり、専用アプリケーション配布による品質調査などを行っている。しかし利用者からしてみれば、携帯を主に使うのは移動中で、ある場所で電波状況が悪ければ、別の場所で試すのが普通で、いちいちキャリアにどこでつながらなかったなどと報告する人は少ない。そのため、キャリア側は常に「つながりにくい」の批判に応えるべく、人海戦術で品質調査を行わざると得ない。

これは日本に限らず各国でも同様なのだが、この悩みを解決するのが、2005年に設立されたシリコンバレーのベンチャー企業キャリアIQ(Carrier IQ)社が開発したIQインサイト・サービス・アナライザーIQ Insight Service Analyzer)などの、携帯サービスのパフォーマンス分析システムだ。

同社のシステムには携帯電話機やスマートフォンの「協力」が不可欠。対応機種(これまでのところワールドワイドで10社5,000万9000万台が対応)を使ってユーザーが通信を行うと、デバイスが自動的に位置情報や通信品質などの生データをシステム側に送信してくれる。システム側でこれを地図上などに表示すれば、携帯キャリアはリアルタイムに自社サービスの状況を知ることができ、基地局やリピーターの設置場所の計画を立てることが可能になる。

ユーザーは動き回って普通に携帯を使うだけでキャリア側にサービス品質向上に役立つ情報を提供することができ、携帯キャリア側は従来、ユーザーからの申告や、携帯キャリア側の「勘」に頼っていた基地局拡張を、実データに基づいて実行できる。ユーザーとキャリアの「協業」によるカバレッジ拡張手法と言えそうだ。

今後、iPhoneやAndroid端末がキャリアIQに対応していけば、帯域不足に苦しむ各国の「スマートフォン・キャリア」からの注目が同社技術に集まるに違いない。ちなみに同社はベンチャーキャピタルから6月に1200万ドル(1ドル=85.44円換算では約10億2528万円)を調達し、これで調達額はIntel、住友商事、Accel Partnersなど合わせて総額で5500万ドル(約46億9920万円)に達している。

※8/19 18:35: 対応端末台数を修正しました。

【参照情報】
Carrier IQ社ウェブサイト
Carrier IQ Lands $12M in Funding(Wireless Week)
Carrier IQ raises $12M to tell carriers how they're doing (VentureBeat)
聞かせて!FOMAの電波状況(NTTドコモ)
iphone 4/ 3GS 電波チェッカー(ソフトバンク)
au携帯電話のエリア対策について(KDDI)

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