グーグル、モトローラを125億ドルで買収へ - 特許関連強化はプラス、ハードウェアベンダーとの関係は微妙に
2011.08.16
Updated by WirelessWire News編集部 on August 16, 2011, 00:12 am JST
2011.08.16
Updated by WirelessWire News編集部 on August 16, 2011, 00:12 am JST
グーグル(Google)が米国時間15日、モトローラ(Motorola Mobility)の買収を発表した。買収額は約125億ドル(現金での支払いが条件)で、2012年前半に完了の見込み。
モトローラといえば、グーグル「Android OS」を搭載した初代「Droid」の開発に手を貸し、太いパイプを持っていたベライゾン・ワイアレス(Verizon Wireless:以下、ベライゾン)の後押しを取り付けて、同スマートフォンをヒット商品に仕立て上げた、グーグルにとってはある意味で借りのある存在。グーグルでは自社ブランド端末「Nexus」の販売に際して、米国のどの通信キャリアからも中立な立場をとるという選択を下したが、これが結果的にうまくいかず、この状況を打開するために、ハードウェア設計やマーケティングのノウハウを持つモトローラの力が大いに役立ったという過去がある。
また、長らくヒット商品を生み出すことができず、自社端末事業の将来をAndroid OSに賭けたモトローラ、そしてライバルのAT&Tにアップル(Apple)「iPhone」の取り扱いを独占され、これに対向できるスマートフォンを探していたベライゾン、それにグーグルの3社の思惑が一致したこの試みが成功を収めたことが、今日のAndroidスマートフォンの隆盛につながっている。
だが、その後世界の大手端末メーカーがAndroid OS採用を決めるなかで、同OS陣営のなかでのモトローラの相対的地位が低下。米国市場を中心に事業を展開する同社だが、なかでも一番の頼みの綱としていたベライゾンが「Droid」ブランド端末の後継機種をHTC製品にしたほか、サムスン(Samsung)「Galaxy S」などの取り扱いを行うようになり、さらに今年に入っては「iPhone」の取り扱いも開始したことで、潤沢なベライゾンのマーケティング予算の流れ先に変化が生じたこと、またT-モバイル(T-Mobile USA)がAT&Tによって買収される可能性が生じたことなどから、モトローラの先行きには悲観的な見方も出されていた。
さらに、同社はタブレット市場でiPadへの対抗を目論んでAndroid搭載端末「XOOM」を2月に投入していたが、これまでの出荷台数は約69万台と当初の期待ほど振るわず、値下げやより廉価なバージョンの投入を余儀なくされていた(なお、同期間における市場シェア首位のiPadの販売台数は約930万台)。
モトローラの第2四半期(4-6月期)決算は売上こそ前年同期比28%増となったものの、4G対応端末の投入のずれ込みなどを理由に現四半期の業績については弱気な見通しを示していた。
こうした流れをうけ、モトローラの大株主である投資家のカール・アイキャン(Carl Icahn)氏は、同社に対して保有する特許の売却を検討するよう促していたという。なお、GigaOMによれば、元々携帯電話の発明にも関わったモトローラの特許ポートフォリオは、サムスンやHTCのそれと比べて格段に強力なものだという。
グーグルにとっては、推定で数十億ドル単位の価値があるとされるこれらの特許取得が、今回明らかにしたモトローラ買収の目的のひとつ、という見方は複数の媒体による記事で共通するところ。グーグルは以前から、スマートフォンで競合する各社に比べて関連特許の保有数が少ないとの指摘が出ていたが、既報の通り、6月末に実施されたノーテルの特許売却オークションでは、アップルやマイクロソフトなどがつくるグループに敗れ、またAndroid OSをめぐる特許侵害で同社自体や採用端末メーカー各社が法廷で守勢に立たされている。
いっぽうで、これまでAndroid携帯端末メーカー各社に対して中立の立場を維持してきたグーグルは、特定のハードウェアベンダーを傘下に収めることで、他のメーカーとの間に築いてきた関係を損なうリスクを抱え込むことになる。同社は現時点で、モトローラを独立した事業部門として維持し、この部門に対してグーグルからAndroidをライセンス提供する形をとる、としている。また、Wall Street Journalでは、Android部門責任者であるアンディ・ルービン(Andy Rubin)氏の話として、「これまで通り、すべてのAndroid採用端末メーカーと協力していく」と記している。
しかし、たとえば世界最大のスマートフォン市場であり、モトローラにとっては売上の多くの部分を占める米国市場で、同社とサムスンやHTCが競合しているといった現実があるなかで、これらのAndroidメーカー各社がどう競合もしくは棲み分けしていくかについてはいまのところ言及は見あたらない。
グーグルとしては、たとえば(Android OSの)新たなバージョン開発に際して、モトローラだけに特別な便宜を図っていないかどうかをサードパーティに証する方法を考案・実施するなどして、このあたりの「透明性確保」を常に求められることになりそうだ。
いっぽう、サムスンやHTCなど他のAndroid陣営各社からすれば、グーグルに「はしごをはずされた」という想いを抱かざるを得ないものの、Android以外の現実的な選択肢として残るのはマイクロソフトのWindows Phone OSだけであり、しかも同社がノキア(Nokia)との関係強化を進めていることから、今後は難しい選択を迫られる可能性が高い。
さらに、グーグルがOS/ソフトウェアとハードウェアの両方を手にすることで、アップルと同様の「統合型」ビジネスを展開しようとしている、という見方もWSJでは紹介されている。
【参照情報】
・Supercharging Android: Google to Acquire Motorola Mobility - Google Official Blog (ラリー・ペイジCEOの投稿)
・Google to Acquire Motorola Mobility - Google (プレスリリース)
・BOMBSHELL: Google Buying Handset Maker Motorola Mobility For $12.5 Billion - Business Insider
・With Motorola purchase, Google buys a seat at the patent table - GigaOM
・Google to Buy Motorola Mobility for $12.5 Billion - WSJ.com
・Google to Acquire Motorola Mobility for $12.5 Billion - Bloomberg
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