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グーグルのモトローラ買収を支持するHTCの「建前と本音」

2011.08.22

Updated by WirelessWire News編集部 on August 22, 2011, 10:05 am JST

米国時間15日に発表されたグーグル(Google)によるモトローラ(Motorola)買収に関し、Android OSを採用する端末メーカー各社は「Androidのエコシステムを、ほぼこれまで通りの形で維持していく」というグーグルのラリー・ペイジ(Larry Page)CEOの公約を前向きに受け止める姿勢を示している。そのなかで、現在韓国サムスン(Samsung)に次ぐAndroid端末の販売台数を誇る台湾HTCも、公式にはグーグル支持を打ち出しているが、実際には事はそれほど単純ではないようだ。

HTCのピーター・チョウ(Peter Chou)CEOは、米国時間19日に行われたWall Street Journal(WSJ)とのインタビューの中で、同社が今後もAndroid端末に力を入れていくとの姿勢を強調している。このインタビューで、チョウCEOは、モトローラ買収によりグーグルが手に入れることになる多数の無線通信関連技術の特許が、特許関連の訴訟においてAndroid OSの防衛に役立つとの肯定的な意見を述べている。

また同氏は、自社開発OS「Bada」をも擁するサムスンを引き合いに出しながら、HTCではサムスンに倣ってOSの自主開発を進める可能性は低いとし、他社製スマートフォンと差別化を図りつつ、今後もグーグルならびにマイクロソフト(Microsoft)との協調関係をテコに事業を進めていくと述べた。さらに、他社のとの差別化戦略については、OS単体ではなくエコシステムの構築を通して進めていくとし、事業の成長に向けた企業や技術の買収を今後も続けていくと述べている。

そのいっぽうで、HTCはモトローラというハードウェアメーカーを内部に抱え込むことになるグーグルへの警戒感から、自社Android端末用のブートローダー公開を進める構えだと、Computerworldでは報じている。

HTCでは今年に入り、OSやファームウェアに手を加えることを可能にするブートローダーの公開を公約していた。同社はこの狙いについて、アプリケーション開発者や端末所有者に対し、さらなる開発のきっかけや自由度を与えることと説明しているという。

ただし、モトローラ以外のAndroid端末メーカーの間には、グーグルがモトローラを傘下に収めた場合、新バージョンのOS開発にあたって、モトローラが他社より先に情報提供を受けるなどの便宜が図られる可能性に対する警戒感があるとされている。そうした点から、OSレベルでの改変を可能にするブートローダーの公開は、グーグルに対して一定の牽制力を持つと考えられる。また、これと同様の動きは、すでにサムスンにも見られる。同社は先ごろ、もっとも人気の高いAndroid OS改変用ツールの開発者を雇い入れたことを明らかにしていた。

HTCでは、米国市場向けにまず「HTC EVO 3D」に対応するブートローダーを提供、その後欧州市場で販売している「HTC Sensation」などへも対応ツールを提供していくという。

Androidの勢いに乗り、いまのところは「勝ち組」となっている両社だが、グーグルのモトローラ買収に備えて、しっかりと「保険」をかけはじめているといえよう。

【参照情報】
HTC unlocks its phones, but probably not just to irk Google - Computerworld
HTC CEO Embraces Google Despite Motorola Deal - WSJ.com
HTC's Peter Chou committed to Android and Windows Phone, says Google-Motorola deal is 'good news' - TNW
【図・グラフ】モトローラを抱え込むグーグルのジレンマ(米アナリストの試算)
グーグルのモトローラ買収 - Android端末メーカー各社にとっての「損と得」
パンドラの箱を開けるグーグル - 「モトローラのハードウェア部門売却説」浮上の理由

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