スティーブ・ジョブズ氏、「Wi-Fiキャリア」構想を検討 - 米業界の重鎮が明らかに
2011.11.16
Updated by WirelessWire News編集部 on November 16, 2011, 08:36 am JST
2011.11.16
Updated by WirelessWire News編集部 on November 16, 2011, 08:36 am JST
アップル(Apple)共同創業者兼前CEOで10月に死去したスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏が生前、Wi-Fiなどに使われている周波数帯を利用して、既存の携帯通信事業者にとって代わる独自の無線通信網の展開を検討していたことが明らかになった。
この話はトリロジー・パートナーズ(Trilogy Partners)というベンチャーキャピタルの会長を務めるジョン・スタントン(John Stanton)氏が、米国時間14日に開かれたLaw Seminars Internationalでの講演のなかで明らかにしたもの。
Computerworldによると、スタントン氏とジョブズ氏は、2005年から2007年にかけて、この免許の要らない周波数帯を利用したネットワークの構想について、「かなりの時間」を費やして実現可能性などを検討したという。
「ジョブズ氏は(アップルが)携帯通信キャリアにとって代わることを欲していた」("He wanted to replace carriers" )ものの、結局この構想を断念したとスタントン氏は語ったというが、具体的な構想の中味や断念した理由についてはComputerworldでは触れられていない。
先ごろ出版されたウォルター・アイザクソン(Walter Isaacson)氏によるジョブズ氏の公認伝記本には、"end-to-end"という言葉が再三登場し、ジョブズ氏がアップル製品に関するユーザーの経験を可能な限りコントロールしたがっていたことが指摘されている。また、初代iPhoneが2007年6月に発表されたことを考え合わせると、ジョブズ氏はかなりぎりぎりまでこの「自前のWi-Fiキャリア」のアイデアを捨てきれなかったという可能性も浮かんでくる。
スタントン氏は講演のなかで、ジョブズ氏のWi-Fiネットワーク構想は実現されなかったものの、iPhoneの成功によってアップルが結果的に携帯通信業界に大きな影響力を及ぼす存在になったとし、「私がキャリア(の立ち場)だとしたら、(iPhone登場から)これまでに起こった劇的なパワーシフトに懸念を抱くだろう」と述べたという。さらに、携帯通信事業者に対するアドバイスとして、「実績のある端末やサービスに大きな投資を行うよりも、新しいものに賭けてみる」ことを薦めたという。
スタントン氏は、AT&Tに買収された旧マッコウ・セルラー(McCaw Cellular)の社員第1号で、のちには自らウェスタン・ワイアレス(Western Wireless)、地域キャリアのボイスストリーム(Voicestream:T-Mobile USAの前進)などを立ち上げた実績などをもつ人物。Vociestream時代にはAndroidの前進となるDanger(スマートフォン"Sidekick"のメーカー)に投資した経験もあるほか、最近ではクリアワイヤ(Clearwire)の取締役会会長も務めている。
【参照情報】
・Jobs wanted own network with unlicensed spectrum - Computerworld
・Steve Jobs wanted to build a wireless carrier, but gave up - TNW
・Steve Jobs wanted to 'replace' carriers using Wi-Fi spectrum - CNET
・混迷を深める米携帯通信業界 - クリアワイヤ、ビル・モローCEOの退任を発表
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