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アメリカ・モービル、欧州での事業拡大を新たに画策 - 蘭KPNの株式買い増しを打診

2012.05.09

Updated by WirelessWire News編集部 on May 9, 2012, 12:47 pm JST

世界一の大富豪として知られるカルロス・スリム(Carlos Slim)氏が率いるアメリカ・モビル(America Movil)が、欧州通信市場への積極進出の機会をうかがっているようだ。

ラテンアメリカ最大の通信事業者であるメキシコのアメリカ・モビルは、同社が少数株主となっているオランダの携帯通信事業者KPNについて、株式保有比率を引き上げる考えを示したという。これはスリム氏が7日に明かしたもので、具体的には現在4.8%となっているアメリカ・モビルの持ち分を、28%まで引き上げたいとするもの。ただしKPN側からは、一株あたり8ユーロという提示条件が低すぎるとする声明が出されているとBloombergは伝えている。なお、KPN側ではすでにゴールドマン・サックスとJPモルガン・チェイスという米投資銀行2社とアドバイザー契約を結び、この件を検討しているという。

KPNはオランダに本拠地とする通信事業者で、本国のほか、ベルギーのベース(BASE)、ドイツのイープラス(E-Plus)、スペインのシーミョ(Simyo:フランステレコムのオレンジの回線を使ったMVNO)といった携帯通信サービスを展開。昨年末時点の加入者数は蘭、独、ベルギーの3ヶ国で4450万人(うち3660万人が携帯通信サービス加入者)。しかし、ここ数年は欧州内での激しい競争などから経営的に厳しい状況に陥り、先月には2013年までに最大で5000人規模の人員削減を行う計画を明らかにしていた。またベルギーのベースについては売却も視野に入れていると伝えられていた。さらに、3月末時点で約2300万人の加入者をもつ独イープラスも、昨年実施された800メガヘルツ帯のオークションで周波数帯を獲得できずに終わり、競合する他の3社から取り残された格好となっている。

いっぽう、アメリカ・モビルでは過去にスペインやイタリア市場への参入を試みながらこれらが失敗に終わり、近年でもポーランドやセルビアへの進出を検討していることが伝えられていた。

アメリカ・モビルのカルロス・ガルシア・モレーノ(Carlos Garcia Moreno)CFOは、同社のラテンアメリカ市場での成長の余地が小さくなってきたとした上で、KPNを足がかりに欧州の携帯通信市場への進出をさらに進めたい考えを示し、またアジアでなく欧州へ進出する理由については、「文化的に近いため」と説明しているという。

現在ラテンアメリカ市場で第2位のスペインのテレフォニカ(Telefonica SA)と争っているアメリカ・モビルだが、欧州市場への参入が進めば、欧州内でも両社の競争が激化するとの見方も出ている。

アメリカ・モビルの今回の動きについては見方が分かれており、深刻な不況の影響などから全体的に評価が下がっている欧州のキャリアを有利な条件で手に入れられるとする前向きな捉え方があるいっぽう、。競争が激しく、規制も厳しい上、今後の成長もそれほど期待できない欧州市場への進出・事業拡大を疑問視する見方もあるという。

なお、アメリカ・モビルの株価は8日に8.2%下落し、2008年10月以来最大の下げ幅を記録したという。

【参照情報】
Slim Takes Alierta Rivalry to Europe With KPN Offer - Bloomberg
KPN Says America Movil's Offer for Stake Is Too Low - Bloomberg
America Movil seeks to raise KPN stake - FT
Carlos Slim Makes a Move on Europe - WSJ
メキシコのアメリカ・モビル、蘭KPNへの追加出資を計画 - ロイター

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