倒れている人を見かけたら、肩を叩いて、まずは小さな声で、徐々に声を大きくして反応があるかどうか確認する。反応がなければ周囲の人を呼んで、助けを求める。一人は119番通報して救急車を呼んでもらい、もう一人はAED(自動体外式除細動器)を探して持ってきてもらう。その後、倒れている人の胸と腹を10秒ほど観察して、呼吸があるか確認する。呼吸がなければ、胸骨圧迫(いわゆる心臓マッサージ)を1秒間に100回のリズムで30回行い、人工呼吸を2回行う。1秒間に100回というのは「365歩のマーチ」くらいのテンポだそうで、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を繰り返して、AEDが届いたら電源を入れ、音声ガイダンスに従って直ちに衣類をはがして右鎖骨と左脇にパッドを貼って、電気ショックを与える。
もし、近くにAEDがなかったら、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を救急隊到着まで続けることになるが、時間の経過と共に蘇生の可能性が低くなっていってしまう。
AEDの設置は各国で進められているが、ドイツの非営利組織Definetzは設置台数を増やすのではなく、必要な場所に必要な時にAEDを届けてしまう方法を考えて、Height Tech社と共同でコンセプト・マシンを開発した。
除細動器(defibrillator)とヘリコプターを合わせた造語でデフィコプター(Defikopter)と名づけられた無人機は、GPS搭載スマートフォンのアプリの指示でAEDを空輸する。距離にして10キロまで時速70キロで飛ばすことができるというが、販売開始時期やアプリの提供時期などは不明。現地まで障害物を避けながらどうやって飛ばすのか、着陸はどうするのかも気になるところだが、どうやら現地ではAEDをパラシュートで投下するので、少なくとも着陸は心配しなくてよいのかもしれない。
利用するには、倒れている人を見つけた人が、デフィコプターのことを知っていて、アプリを事前にインストールしていなければならない訳で、普及させるには宣伝費が相当かかるのではないか。価格も未定のようだが、26,000ドル(およそ260万円)ほどになるという記事もあるし、無人機であっても誰かが映像をモニターしていなければ飛ばせないという規制もあるようで、ドイツでの実用化にはまだまだ越えるべきハードルが多いようだ。しかし、人の命を救いたいという活動であるし、実用化の目途が全く立たないまま3ヵ月かけて開発したとも思えない。いつかデフィコプターがAEDなど緊急物資を運ぶために空を飛び交う日が来るのかもしれない。
【参照情報】
・Definetzのウェブサイト
・Health from above: a drone to deliver defibrillators to heart attack victims
・Drone could deliver defibrillators to heart attack victims
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