スプリント、T-モバイルの買収を検討 - 来年前半にも提案の可能性(WSJ報道)
2013.12.14
Updated by WirelessWire News編集部 on December 14, 2013, 11:13 am JST
2013.12.14
Updated by WirelessWire News編集部 on December 14, 2013, 11:13 am JST
ソフトバンクが今年7月に買収した米スプリント(Sprint)が競合する米T-モバイル(T-Mobile USA)の買収に向けた準備を進めており、来年前半にも提案を行う可能性があるとWSJが米国時間13日に報じた。
WSJによると、スプリントでは現在この買収が独禁法違反にあたらないかどうかなどについての調査を進めているという。また5月に株式上場していたT-モバイルの時価総額が現在200億ドルを超えていることから、規模の点でソフトバンクが約8割の株式を取得したスプリントの買収を上回る可能性もあると同紙は記している。
AT&Tが2011年に進めようとしていたT-モバイルの買収計画では、約390ドル億ドルという条件も示されていた(この計画が市場寡占を懸念する米司法省などの反対にあって失敗に終わっていたことは既報の通り)。
米携帯通信市場で第3位のスプリントと第4位のT-モバイルの合併が実現した場合、
同市場で長く続いている「2強+その他」の構図が崩れ、「3強態勢」に移行する可能性も高まる。WSJによると、各社の長期契約加入者件数はベライゾン・ワイアレス(Verizon Wireless:以下、ベライゾン)が9500万、AT&Tが7200万に対して、スプリント+T-モバイルでは5300万になるとしている。また今年9月末までの売上について、ベライゾンが500億ドル強、AT&Tが450億ドル強、スプリント+T-モバイルが358億ドル(スプリント 219億ドル、T-モバイル 139億ドル)というグラフもある(売上は各社の携帯通信事業のみ)。
また、各社によるLTE網の展開計画と進捗状況については、すでにPOP(カバーする人口)が3億を超え初期段階を完了したベライゾンがAWS帯をつかったキャパシティ増強に重点を移す一方、AT&Tでも今年末に2億7000万、来年半ばには3億に達する見通しを示している。また当初の計画を上回るペースでが進んでいるとされるT-モバイルでは、9月末時点でカバー人口が2億300万に達し、来年にはさらに2億2500万まで拡大する考えを示しているほか、一部の大都市圏では大容量の回線提供にも着手している。
それに対して、スプリントも1.9GHz帯を使ったLTE網のカバー人口が今年末に2億に達し、来年半ばにはこれが2億5000万まで拡大する状況となっているものの、高速・大容量の「Sprint Spark」サービス(800MHz帯、1.9GHz帯、2.5GHz帯を組み合わせて利用)はようやく5つの大都市圏で提供がはじまったばかり。また同社がクリアワイヤ(Clearwire)買収を通じて手にした2.5GHz帯(120MHz超)についても、「2014年末までにカバー人口1億」という目標が明らかにされているがサービスの本格展開は来年以降という状況となっている。
さらに、T-モバイルは今年に入って、「脱通信キャリア」("Uncarrier")戦略を掲げ、他社に先駆けて端末代金割引(subsidy)を廃止するなど新たな施策を打つ出してきており、その結果2四半期続けて新規加入者(プリペイド加入者を含む)が100万人を超えるなど、新たな戦略が奏功していることも伝えられている。
2011年のAT&TによるT-モバイル買収計画は、上位2社による市場の寡占を懸念にした米司法省などの反対にあって不成立に終わっていたが、WSJでは、その後司法省が航空業界での大型合併ーーアメリカン航空(American Airlines)とUSエアー(US Airways)の合併を認めていたことをふまえ、同省がスプリントーT-モバイル合併に対して、より柔軟な姿勢を示す可能性もあると記している。但し、FCCのトム・ウィーラー(Tom Wheeler)委員長が、現在の(ナショナルキャリア)4社態勢を望ましいとする見方を先ごろ行った講演のなかで示していたことも指摘している。
また、スプリント、クリアワイヤの獲得に失敗していたディッシュ・ネットワーク(Dish Network)が、スプリントに対抗して、T-モバイル獲得に乗り出す可能性もあるとWSJは記している。
この話題にふれたThe Vergeでは、買収実現により生じる技術面の課題に着目し、とくにスプリントの3G網(CDMA方式)とT-モバイルの3G網(UMTS方式)がしばらくは併存せざるを得ないことをふまえて、T-モバイルによるメトロPCSの買収や、AT&Tによるリープ・ワイアレス(Leap Wireless)の買収に比べても、はるかにたいへんな統合作業になる可能性が高いと記している。
(2012年8月時点での各社周波数帯保有状況 via Dairywireless)
[参照情報]
・Sprint Working on a Bid for T-Mobile - WSJ
・T-Mobile Shares Jump on Report That Sprint Is Mulling Offer - Bloomberg
・Sprint is preparing bid for T-Mobile, WSJ says - CNET
・Can Sprint really buy T-Mobile? - The Verge
・T-Mobile's Wacky Plan to Trash the Wireless Business Model - Businessweek
・Sprint's Hesse: Spark tri-mode LTE service could eventually provide real-world speeds of 150-180 Mbps - Fierce Wireless
・Verizon Wireless's 4G Blitzkrieg - Businessweek
・UPDATED: T-Mobile to expand LTE coverage beyond 225M POPs
・Sprint's Hesse: Spark tri-mode LTE service could eventually provide real-world speeds of 150-180 Mbps - Fierce Wireless
・SoftBank is lighting a fire under Sprint - I'll be waiting for the results - Fierce Wireless
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