細かすぎて伝わらない日本の携帯キャリア
Japanese mobile carrier: Too detailed, too complicated
2015.10.29
Updated by Mayumi Tanimoto on October 29, 2015, 07:58 am JST
Japanese mobile carrier: Too detailed, too complicated
2015.10.29
Updated by Mayumi Tanimoto on October 29, 2015, 07:58 am JST
このブログの初回記事ではロンドンのヒースロー空港のプリペイド携帯SIM自販機のシンプルさをお伝えし、読者の方からは驚きの反応がありました。日本の自販機や携帯キャリアの説明に比べ、驚くほど無骨というかシンプルなので、びっくりした方が少なくなかったようです。
なぜそこまで説明がシンプルかというと、ロンドンもといイギリスというのは、人口の12%ぐらいが外国生まれで、それがロンドンだけに限ると50%を超えるという多国籍なところだからで、英語がわからないのが当たり前というのが前提だからです。
ちなみにその12%とか50%というのは長期在住者、つまり、永住権を持っていたり、就労許可を持っていて、長期滞在している人、イギリスと二重国籍、三重国籍、人によっては四重国籍の人も含みます。
これに短期滞在の留学生、出張者、 年に3,400万人ほどの旅行者を含めると、それはそれはすごい割合になります。外国人旅行者の数は10年前に比べるとなんと1,000万人も増えています。ちなみに外国人旅行者世界一はフランスで年間8,300万人、イギリスは世界8位ほどです。日本は年間1300万人ほどで、これは世界の33位です。外国人旅行者の数ではおもいっきり中国に負けていますので、ネトウヨの皆さんはもっと怒ったほうがいいでしょう。良い国ならもっと大勢の人が遊びに来るはずです。
ところで外国人が多いと、暗黙知や地元の「常識」は伝わりませんし、説明や広告、製品名も単純にしなければ伝わりません。文化的背景が違う上、現地語が流暢ではない人がほとんどですし、全く理解しない人もいます。そんな状況だと消費者相手の携帯キャリアのサービス説明や広告も単純になります。
例えば以下はイギリスのMVNOで、プリペイドSIMのサービスが中心のgiffgaffですが、サイトはこのように単純です。
いきなり「へいゆー」(「おい、お前」)で始まり「なんで二年縛りに契約するの?」という短い文章。主語、動詞、述語一個で、英語超初心者でも理解できる単純さです。その下に
SIM注文
SIMをアクティベート
という2つのボタンがあります。ここまでボタンが少ないと間違えようがありません。
以下は外国人移民にターゲットを絞ってプリペイドSIMを提供しているLebaraですが、ここのサイトもかなりシンプルです。サイトに登場する人々も、政治的に正しい人種構成になるように注意をしています。英語がわからないユーザーも多いのでサービスが絵でわかるようになっています。
次は一応大手キャリアの3です。ここはプリペイドSIMが安い上に、特定の国でのローミング無料サービスをやっており、海外渡航が多い人には人気です。
ここのサイトも恐ろしく単純で、トップページ左には「店」「サポート」「みつける」の3つの説明しかなく、サイトの下の方に行くと「みんなうちの会社のネットワークって超最悪って思ってる」というすごい言い訳が書いてあります。携帯キャリアでさえも自虐ギャグをやるという英国センスが発揮されています。
同じく大手のEEのサイトもかなりシンプルです。
Virginのサイトは若干わかりにくいのですが、ここのユーザーはISP、ケーブルテレビ、固定電話、携帯をセットで入れている人も多く、イギリス人や永住者ユーザーも多いので、若干細かい説明にしても問題がないのでしょう。しかし日本のキャリアのサイトと比べるとかなり単純です。
以下には日本国内の大手キャリアやMVNOのサイトを並べてみましたが、イギリスのキャリアと比べると説明が細かく、掲載されている情報量が多いので、トップページだけでも情報を理解するのに時間がかかります。日本語ネイティブではない外国人が見た場合は中級者でもわけがわからないでしょう。
説明が細かく書かれている、理解に時間がかかる書き方をする、ということは、すなわち、顧客側の理解力や言語能力が高いことの裏返しなわけです。しかし、言語が流暢ではない人、文化的な背景が異なる人が増えた場合は、「説明の説明をする人」が必要になったり、顧客からの謎のクレームがくるということがあります。
運営コストとサービスレベルの適正化に多大な負担がかかるので、説明やらルールは最初から単純にしておいたほうが楽だ、ということがイギリスのキャリアのサイトを眺めると分かります。
ちなにに私はイギリスだけではなくイタリアや日本で、数十カ国の人対象にオペレーションをやったり、運用ルールを書く、コンプライアンス体制を整える、契約書を書くなどの業務をしてきましたが、多様な人がいるため業務用文書であっても、英語圏の中学2年制程度でも理解できる語彙と内容に留めるようにしています。(専門用語はさすがに単純化できませんが)
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登録はこちらNTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。