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IoT向けSIMの値下げからエッジカメラまで、ソラコムが新サービス・製品を発表

2019.07.03

Updated by Naohisa Iwamoto on July 3, 2019, 10:30 am JST

IoTプラットフォームを手がけるソラコムは、年次のプライベートイベント「SORACOM Discovery 2019」に合わせてIoTサービスの料金改定、機能強化から新しいIoTデバイスの提供まで多くの発表を行った。ソラコムが掲げる「IoTテクノロジー民主化」を推進するためのパーツを幅広く用意し、IoTプラットフォームの拡充を図る。

IoTプラットフォームを支えるコネクティビティレイヤーでは、セルラー回線を利用したIoTデータ通信サービス「SORACOM Air for セルラー」を大きくアップデート。世界130カ国で利用できる従来の「グローバルSIM」を「SORACOM IoT SIM」と名称変更し、中心的なサービスに据える。

国内ではNTTドコモネットワークに加えて、KDDIのネットワークも1枚のSIMで利用できるマルチキャリア化を実施し、同時にデータ通信料金を値下げする。これまでの国内通信ではドコモネットワークを利用した0.2米ドル/MBが必要だったが、KDDIネットワークを利用した際には0.02米ドル/MBへと10分の1の水準に下がる。

海外でも83カ国で値下げを実施し、例えばヨーロッパを中心とした21カ国ではこれまでの0.08米ドル/MBを、0.02米ドル/MBへと低廉化し、利用しやすい環境を作る。ソラコム 代表取締役社長の玉川憲氏は、「2019年6月にSORACOM Air for セルラーが100万回線を突破し、そのスケールメリットを生かして低コスト化が可能になった」と説明する。また、これまでドイツだけに設置していたローカルブレークアウトポイントを日本と米国にも設置することで、国内や米国のユーザーの通信遅延を低減させる施策も実施する。

一方で、コネクティビティレイヤーでは高速通信や大容量通信への対応も進める。これまでSORACOM Air for セルラーでは、上限速度が2Mbpsに制限される速度クラス(s1.fast)が最速だったが、8Mbpsまで利用できる新しい速度クラスの「s1.4xfast」を追加し、デジタルサイネージやネットワークカメラなどで高速通信を求めるユーザーに提供する。また、ネットワークカメラなどの大容量アップロードに適応する新料金プラン「plan-DU」を提供する。ドコモのネットワークを利用したサービスで、月額1200円で10GB、月額2900円で50GBのアップロード通信量をバンドルした料金プランを用意する。

ネットワークレイヤーとアプリケーションレイヤーでは、新サービスを続々と提供する。ネットワークレイヤーの新サービスは「SORACOM Napter」で、IoTデバイスに外部からSSH、RDPなどでセキュアにリモートアクセスできる仕組みを提供する。これまでIoTデバイスへのリモートアクセスにはサーバー環境の準備や構築などが必要だったが、SORACOM Napterを利用することで簡単にIoT SIMを利用したデバイスに一時的なリモートアクセスが可能になり、IoTデバイスの設定変更や、遠隔操作/管理が容易になる。

アプリケーションレイヤーの新サービスも複数アナウンスした。1つはデータ収集・蓄積に適した「SORACOM Harvest Files」で、ユーザーはIoTデバイスから収集した画像やログなどのファイルを、サーバーやストレージを自前で用意せずにクラウドに送信することで、保存から可視化までの作業が完了する。もう1つは、IoTデバイスからAWS LambdaやMicrosoft Azure Functions、Google Cloud FunctionsなどのFaaS(Function as a Service)のビジネスロジックに直接連携できるようにする「SORACOM Funk」の提供。可視化や機械学習などのプログラム(関数:Function)と連携して、クラウドの潤沢なリソースを活用したソリューションの構築が可能になる。

デバイスのレイヤーでは、2つのアナウンスがあった。1つがボタンを押すだけでクラウドにデータを送信できる「SORACOM LTE-M Button」シリーズへの、位置情報取得機能の追加。携帯電話基地局の情報を利用した簡易位置測位を可能にし、ボタンを押したときの位置情報を取得したというニーズに応える。もう1つは遠隔からセルラー通信経由でアルゴリズムを更新可能なエッジ処理カメラ「S+ Camera」のトライアルパッケージの提供。プログラムの実行機能を備えたカメラに、通信モジュールやSIMカード、電源などを一体化し、電源を入れるだけで稼働する。エッジで実行するプログラムは、遠隔から選択してデプロイする。エッジプロセッシングを実現する新サービス「SORACOM Mosaic」を利用して、アルゴリズムの更新やカメラの管理・操作を実現する形だ。

この他にも、SORACOM AirとユーザーのシステムをセキュアにつなぐVPG(Virtual Private Gateway)を利用する際のコストを引き下げるVPGの料金改定、開発モジュールの「M5Stack」に向けた通信拡張基盤「M5Stack3G拡張ボード」の提供、IoTサブスクリプションマーケットプレイスとして東京センチュリー、ソラコム、ビープラッツが共同で運営する「IoT SELECTION Connected with SORACOM」の7つの新ソリューションの提供など、盛りだくさんの発表があった。

ソラコムは、IoTを誰もが手軽に利用できるようにと、ユーザーやパートナーの声を聞きながら2015年のサービス開始から進化を目指してきた。この間、2週間周期で開発、リリースを続け、新機能のリリースは106回にもおよぶ。一方で、様々なユーザーの声に対応できるこうした多様なサービスや機能の提供が、今回の発表を見るだけでもエンドユーザーにとってわかりやすい構成になっているかは判断が難しい。認定済みで116社、申請を含めると530社を超えるパートナーの「SORACOM Partner Space」(SPS)などを通じて、エンドユーザーがやりたいことに直結したソリューションの提供に磨きをかけていく必要も今後は高まっていきそうだ。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。