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【島薗進氏による私塾】死にゆく人と愛の関係を再構築する技術:第6回 語れない苦悩、分かちあえない悲嘆、死者との対話―自死の精神医学とグリーフケア―

【島薗進氏による私塾】死にゆく人と愛の関係を再構築する技術:第6回 語れない苦悩、分かちあえない悲嘆、死者との対話―自死の精神医学とグリーフケア―

2021.11.08

Updated by Susumu Shimazono on November 8, 2021, 14:28 pm JST

2021年12月2日、グリーフケアを学ぶための私塾第6回を開催します。今回のテーマは自死(自殺)。「人はなぜ自殺するのか」等の著者であり、一般社団法人日本うつ病センター・六番町メンタルクリニック院長である張賢徳氏をゲストに迎えます。自死遺族を支える皆様やご本人様、ケアワーカーや自死そのものを深く知りたいという方々にとって数々の学びを得られるイベントとする予定です。

これまでの講座で「悲しみを響き合わせること」は重要なグリーフケアのファクターであることが示されてきましたが、自死は別れのなかでも一際「語り合いにくい」とされています。しかしオンラインイベントである当塾では、語り合いにくい自死についても何か希望の糸口が見えるものとなるかもしれません。

当塾は参加者様同士の交流を歓迎しますが、今回につきましては個別のご相談には応じられませんのでご了承ください。

前回までに続き、聞き手は医療・科学ライターの小島あゆみ氏が担当。医療現場を取材するなかで培った知見を基にグリーフケアを学ぶお手伝いをします。奮ってご参加ください。
また、お申込みいただいた方が当日お時間に都合がつかなくなった場合には、動画アーカイブでオンデマンド視聴を提供しますので、ご安心ください。

お申し込みは、こちらからお願いします。

メインスピーカー・島薗進氏より:自死者の孤独と遺された者の悲嘆という困難

死別の悲嘆からの立ち直りが困難な場合がある。精神分析的なアプローチが主流で、悲しみを表現することを通じて死者への執着を取り去っていくことが重要だとされてきた。だが、実は死者との絆は大切であり続け、「継続する絆」を通してこそ、「喪の仕事」がなされるのだと考えられるようになってきている。

日本は自死者が多いとともに、死者との交流を大事にする文化がある。その意味で「継続する絆」を尊んできたと言える。だが、現代ではそのような文化が薄れてきていて、グリーフケアの文化が弱ってきているのかもしれない。悲嘆を分かち合うことがしにくい自死遺族の困難は、苦難に向き合う現代人の困難を典型的に表しているのかもしれない。日本では自死が多いことの理由とともに宗教的な側面から考えていきたい。

ゲストスピーカー・張賢徳氏より:自殺者の心理、遺族の心理

自殺に代わる言葉として自死が使われることがある。自死には行為の能動性、さらに言えば、理性的な決断による行為というニュアンスが含まれると私は感じている。それは果たして自殺の実態に合致しているのだろうか?精神医学的に見ると、自殺者の90%以上が自殺時に何らかの精神科診断がつく状態であったことが判明している。精神科診断がつくことと完全に理性を失うことは同義ではないが、例えばうつ病でよく見られる過剰な悲観思考や心理的視野狭窄は、理性が保たれている状態とは言えない。それが大多数の自殺者の心理の実態であり、それこそが自殺予防の最大の論拠だと考えられる。他方、理性的な自殺があることも事実である。理性的な自殺の是非については一精神科医の了見を越えているが、自殺ではない終わり方のほうがよいと思う。

どのような形の自殺であれ、遺された者の心に大きな傷を残し、悲嘆は長引く。一般にグリーフケアのゴールは、故人のいない世界での新しいアイデンティティの確立だと言われている。その際のキーワードとして「統合」が挙げられるが、私は、故人との対話に着目している。

プログラム

19:00 島薗氏によるトーク
19:40 張氏によるトーク
20:30 ダイアログ
20:50 質疑応答
※プログラムの内容・順番・時間などは予告なく変更となる可能性がありますのでご了承ください。

開催スケジュール等

●日 程:2021年12月2日(木曜)19:00~(約2時間のトーク&ディスカッションの後、交流会を検討しております)
●会 場:Zoomを利用したオンラインイベントです。
お申込みはこちら
http://ptix.at/LHnFkQ
   お申込みいただいた方には、前日までに参加URLをメールにてお送りします。

●参加料:¥3000(税込)
※チケットの購入期限は当日12月2日の18:00までとさせていただきます。
●主 催:WirelessWireNews編集部(スタイル株式会社)

ゲストプロフィール

張賢徳(ちょう・よしのり)張賢徳(ちょう・よしのり)

1991年東京大学医学部医学科卒業後、帝京大学医学部精神神経科学教室に入局。1997年英国ケンブリッジ大学精神医学博士号取得。2008年から2021年3月まで帝京大学医学部教授・附属溝口病院精神科科長。2021年4月より帝京大学溝口病院精神科客員教授。2021年9月より一般社団法人日本うつ病センター・六番町メンタルクリニック院長。

専門は臨床精神医学と自殺学で社会心理学や宗教学にも関心を寄せている。現在、日本自殺予防学会理事長、日本臨床死生学会副理事長、日本外来精神医療学会常任理事、日本うつ病学会理事、日本祈りと救いとこころ学会理事なども務める。主著は「人はなぜ自殺するのか」(勉誠出版)、「うつ病新時代―その理解とトータルケアのために」(平凡社新書)、「自殺予防の基本戦略」(責任編集、中山書店)。

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島薗 進(しまぞの・すすむ)

1948年東京都生まれ。東京大学文学部宗教学科卒業。同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学名誉教授。上智大学グリーフケア研究所所長。おもな研究領域は、近代日本宗教史、宗教理論、死生学。『宗教学の名著30』(筑摩書房)、『宗教ってなんだろう?』(平凡社)、『ともに悲嘆を生きる』(朝日選書)、『日本仏教の社会倫理』(岩波書店)など著書多数。