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AIはハイプなのか?

Is Ai Hype ?

2024.07.01

Updated by Mayumi Tanimoto on July 1, 2024, 17:08 pm JST

ヨーロッパ最大のサイバーセキュリティ関連のカンファレンスであるInfoSecEuropeに行ってきました。今年のカンファレンスで人気を集めていたのがやはりAI関連の話題ですが、昨年や一昨年に比べるとAI熱が若干落ち着いてきたような印象を受けました。

あるカンファレンスの参加者は、実際にイギリスや欧州で実務に携わっている方々だったのですが、企業でAIを導入してみると思ったほど実用性がなく、また十分なデータが蓄積されていないので思ったような結果が出ないというのです。

例えば、GuildhawkのCEOで創業者であるJurga Zilinskiene氏は、「実は機械学習というのは、1950年代から存在している非常に歴史が長いもので、AIは決して新しいものではない。ビジネスは長年、機械学習について考えてきた」と指摘するのです。

つまり、実はAI的な仕組みというのは、コンピュータが使われるようになった初期の頃からあるわけですが、実務で使えるようになるためのデータの蓄積が不十分であったり、それを取り出す仕組みが今ほどは発達していなかったので使い物にはならなかった、ということです。

Jurgaさんだけではなく、他のカンファレンス参加者も、現在のAIはあまり賢いものではなく、いくらプロンプトを工夫しても思ったようなアウトプットは出てこないし実務ではとても使えないものが多い、指摘します。

とにかく、良いデータセットがなければ良いインプットが出てこないという基本的なことをあまり意識していない組織が多いようです。AIといっても所詮はコンピュータですから、入力したデータの質が良くなければアウトプットもそれなりです。

Blockmoorのインフォメーション&サイバーセキュリティのディレクターのイアン・ヒル氏も「組織は情報通信の基本に立ち返ってみるべきだ。コンピュータはゴミみたいな情報を入れたら全く使えないアウトプットしか出てこない。それをよく考えるべきだろう。ChatGPTのようなツールは、現時点ではビジネスではまだまだ実用性がない」と指摘します。

それにしても、AIツールを売ろうとしているベンダーが多く出展しているこのようなカンファレンスで、こういう単刀直入な意見が出てしまうところが非常にヨーロッパ的ですね。このカンファレンスの参加者がユーザー企業だったというのもあると思うのですが、AIに関してはサプライヤ側の見解だけではなく、ユーザー側の見解ももっと検討されるべきでしょう。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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