Hitachi's Radial Gap Amorphous Motor 、combines High Speed Rotation with High Efficiency.
January 26, 2026
日立製作所「協創の森」の現場から hitachi_editor
日立製作所・研究開発グループのメンバーが研究開発中の技術について語ります。
モーターは世界の電力消費の約半分を占めると言われています。したがってモーターの高効率化が実現できれば、カーボンニュートラル実現の大きな助けになります。日立製作所 研究開発グループでは、長年にわたってアモルファス金属を用いた高効率なモーターの研究開発を続け、一般的なラジアルギャップ型と異なるアキシャルギャップ型のモーター構造を開発し、空気圧縮機に搭載して製品化しています。さらに、ラジアルギャップ型にもアモルファス金属を適用することで、モーターの高速化と高効率化の両立を実現する研究も続けています。このアモルファスモーターの開発の狙いと今後の目標を、グリーン&コネクティブイノベーションセンタ コネクティブドライブシステム研究部の床井博洋リーダ主任研究員と竹内啓祐研究員に伺いました。(本記事は、日立製作所・研究開発グループ「研究の現場から」の抄録です。全文はこちら)
床井:ラジアルギャップ型のアモルファスモーターの開発に取り組む中で、ターゲットにしたのはオイルフリースクリュー空気圧縮機のモーターです。空気圧縮機は、空気の力で物を移動したり、塗装や加工をしたりする機器で、工場の消費電力の20~30%を占めています。空気圧縮機には、給油式とオイルフリー式の2種類があります。給油式は空気を圧縮するスクリューローターに油を入れて、冷却と隙間の制御をしています。一方のオイルフリー式は油を入れずに超高速回転させることで圧縮します。20,000r/min(回転/分)を超えるような高速なモーターが必要ですが、最もハードルが高い分野で技術開発をすることで横展開がしやすくなることを狙っています。
オイルフリーの空気圧縮機では、一般的には3,000r/min程度のモーターの回転をギアで増速していますが、今回開発をめざしているのは、モーターそのものを高速化するものです。空気を圧縮するエアエンドと呼ばれる部分に求められる24,000r/minの高速回転をモーター直結で動かすことができれば、モーターの小型化が可能になり、全体として高効率なシステムが作れるのです。2024年には、オイルフリーの空気圧縮機を20,000r/min以上で駆動できるラジアルギャップ型のアモルファスモーターが完成し、実用化に向けた動作試験を開始しました 。同時に、空気圧縮機として従来比5分の1の小型化も実現しています。

ラジアルギャップ型アモルファスモーターを開発するためには、複数の技術の組み合わせが必要でした。その1つはアモルファス金属を部分的に利用する分割構造の採用です。ローターの周囲を円筒状に取り囲むステーターには、コイルを巻き付けるための複数の歯(ティース)があります。電磁鋼板のステーターではティースを含めた形状を打ち抜きで作れましたが、加工が難しいアモルファスでは複雑な形状を作るのは困難です。そこで、ローターから出てきた磁束が集中し多くの鉄損が発生するティースの部分だけに、アモルファス金属を採用することにしました。その他の部分は電磁鋼板を組み合わせることで、製造性と低損失が両立できる分割構造を採用しました。

床井:ラジアルギャップ型アモルファスモーターを開発するためには、複数の技術の組み合わせが必要でした。その1つはアモルファス金属を部分的に利用する分割構造の採用です。ローターの周囲を円筒状に取り囲むステーターには、コイルを巻き付けるための複数の歯(ティース)があります。電磁鋼板のステーターではティースを含めた形状を打ち抜きで作れましたが、加工が難しいアモルファスでは複雑な形状を作るのは困難です。そこで、ローターから出てきた磁束が集中し多くの鉄損が発生するティースの部分だけに、アモルファス金属を採用することにしました。その他の部分は電磁鋼板を組み合わせることで、製造性と低損失が両立できる分割構造を採用しました。
竹内:私は主に、高速ローターで問題になる部分の設計に携わっています。超高速で回転するローターには、遠心力による応力が集中するため、形状の工夫により応力集中を分散させるよう設計しました。また、回転軸の共振周波数と、回転周波数が一致して共振すると、回転軸が変形してしまうため、シャフトの長さや軸受の種類、間隔を最適化することで共振を防ぐ設計が必要です。複数の共振パターンに対応できるよう、使用する回転周波数の領域よりも共振周波数が高くなるようにして調整しました。こうした一連の設計では、100,000r/minといった超高速回転で稼働する掃除機用モーターの研究開発の経験が生かされました。さらに、軸受の摩擦により発生する熱を低減させるため、高放熱なオイルジェット潤滑を採用しました。モーターが高速回転すると、弱い勢いでオイルを噴射しても空気の動きで弾き飛ばされてしまいます。噴射の角度や速度、ノズルの位置などを設計しながら、実機で確認して知見を蓄積することで設計を固めていきました。高速回転だと規定の寿命を満たすための設計の難易度が高まります。回転するローターは質量にすこしでもアンバランスがあると、遠心力で力が偏ります。ローターのバランスの精度と寿命の関係、さらにローターを支える軸受に耐荷重の高いものを用いるなど、さまざまな研究開発を進めた成果として、ラジアルギャップ型のアモルファスモーターを作ることができました。
床井:今回の研究開発は、チーム全体の総力を結集した成果です。構造・軸支持・冷却など超高速回転を可能にする設計に竹内さん以外にも、磁気回路のトルク・損失の算定や、鉄心・コイル・磁石など主要部品の設計、事業部連携や量産を見据えた検討、電気絶縁の作り込みやコイル・コアの一体化などの製法、高速で安定してモーターを駆動するための制御技術など、多くのメンバーが携わっています。毎週オンラインで進捗と課題を共有しています。どの分野に対しても精通しているメンバーがいるのが日立の強みだと感じています。
(撮影:服部 希代野)
