September 30, 2026
清水 亮 ryo_shimizu
新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。
2026年のOpenAI DevDayが開催された。
注目を集めるキーノートスピーチでは、ChatGPT 6、さらに月額500ドルのChatGPT Pro Maxプラン、そして24時間働き続けるエージェントであるdots、Jevと同等の意思決定モデルなどが華々しく発表された。
この発表に対して、早朝から見ていた筆者に湧いてきたのは、歓喜でも驚きでもなく、哀れみに近い感情だった。
いまやChatGPTは、AI選択のファーストプライオリティにはない。
例えば、プログラミング能力ではClaude Opus 5.5またはSonnet 5.5が以前優れているし、開発「速度」に関してはGoogleのAntigravityが頭一つ二つ抜けている。もはやOpenAIのCodexを積極的に使わなければならない理由はほぼない。
たとえば、X.comのひつじ氏による「日本語地図ベンチ」では、Claude Sonnet 5.5とChatGPT6-Sol(高)との比較をしている。
ここではClaude Sonnetが12分かかり、ChatGPT6-Sol(高)は3分程度で処理を完了している。しかし、ChatGPT6-Sol(高)は、高速に推論することを目的としたモデルではなく、時間をかけてでもじっくり正しい結果を導くようなモードであることに注意して欲しい。
結果は惨憺たるものだ。素早く仕事を終えたChatGPT6-Sol(高)による日本地図は、北海道の形をみれば一目瞭然だが、とても日本地図とは呼べないものだ。
時間はかかったがClaude Sonnet 5.5のほうの地図はだいたいあっている。
どちらも外部の地図や地形データを参照していないので、まったくの記憶力だけでみてもClaude Sonnetのほうが賢いことになってしまう。
さらにひどいと思ったのは、悪名高い5時間制限、つまり、5時間以内に使って良いトークン数の許容量を撤廃され、すべての機能の「全部入り」が使えることを歌い、さらには高速にChatGPTシリーズが使えると喧伝されているChatGPT Pro Maxプランは月額$500(約8万円)もするにもかかわらず、2分の使用で週のリミットの2%を消費してしまうという報告まで現れた。だとすると50回の使用、つまり二時間弱程度の使用で週のリミットを使い切ってしまうことになる。
そしてMetaのMuse、ManusのCueがある今、既視感の漂うdotsを見せられても新鮮味はない。
Claudeがひたすらコーディングモデルとして自社のモデルを磨き上げ、GoogleがGMailをはじめとするGoogle Driveなどの付加価値としてAntigravityを磨き上げているのに比べると、OpenAIはゴテゴテと何がやりたいのか焦点が定まらない。
そうでなくてもここ数年、鳴物入りで登場したOpenAIの新製品やサービスは、次々と閉鎖されている。
以下はChatGPT自身にまとめさせた、OpenAIの閉鎖またはリニューアルしたサービスだ。

OpenAIは、まるでX.comに蔓延る「プロ驚き屋」のためにネタを提供し続けているピエロのようだ。仕事上、AI関連のサブスクにはお金を払うことにしている筆者でもさすがにこの内容で月500ドルは払う気がしなかった。どうせすぐにやめてしまうだろうからだ。dotsも、いつまでやるのかわからない。Pulseもいつのまにか終わっていた。
GPTs Storeとはなんだったのか。エージェントがチャット内で決済を完了すると言っていた取り組みも一向に進んでいるように見えない。
目的を絞り込んでいるスタートアップであるAnthropic(Claude開発元)と、もともと多様なリソースを持っていて、人員も豊富なGoogleがそれぞれの強みを尖らせている間に、OpenAIは結局なにがしたいのかわからないぼんやりとした経営を漫然と続けているように見える。
コーディングエージェントとしても、Googleドライブの利用料金内でも十分使えるAntigravity(Googleのコーディングエージェント)に対して、OpenAIのコーディングエージェントであるCodexは信じられないほど早く「リミット」に達してしまう。
筆者は過去にClaude CodeのMAX 20Xプラン($200/月)に3つ加入していたが、このうち一つをChatGPT Pro MAXに切り替えようとは全く思えない。
さらにいえば、Claude CodeとAntigravityの二つが使えていれば充分だとさえ思える。AstraだとかSolだとかじゃないと絶対にできないことってなんなんだろうか。
加えて言うと、Codexは使い勝手も悪い。いまだにユーザーのパーミッションをしつこく取ろうとする。Claude CodeとAntigravityは同じコマンドラインオプションが使える。わかりやすく言うと、Googleの方がユーザーに寄り添っているのだ。遥かに。
さらにオープンウェイトの波も忘れてはならない。DeepSeek V4.1 Flashは信じられないほど優秀だ。それが無償で手に入るのはもっと未来のことだと考えていた。しかしこれは現在のことだ。きっとさらに良くなるだろう。
もしも僕が今も経営者として多くのエンジニア集団を束ねていたとしたら、DeepSeek V4.1 Flashを使うように強く進めるだろう。仮にクラウドで使うとしても利用料金はずっと安い。

全員にClaude Code MAX 20Xを付与するのは少し経済的負担が大きいが、社内にファシリティがあれば無制限にプログラマーにDeepSeek V4.1 Flashを使わせることができる。足りなくなれば機材を買い足せばいい。これから先、ローカルAIは良くなることはあっても悪くなることはない。筆者は6年前の機材でもDeepSeek V4.1 Flashを実用的に動かすことに成功した(https://note.com/shi3zblog/n/nd5fc5341b342)。
クラウドの向こう側のAIがとまったら仕事も止まるなんてゴメンである。
DeepSeek V4.1はきつくても、Qwen3.8 27BならMacや、ちょっとした民生用GPUが乗ったマシンでも快適に動く。ほとんどの仕事は、たぶんそれで十分なはずだ。
筆者がClaudeではできるけどDeepSeekV4.1には難しいと思ったタスクは、任意軸回りの回転公式、通称ロドリゲスの公式という概念を説明するピクセルアートのアニメーションを書かせた時だけだ。
現在公開中の映画「オデュッセイア」と対をなすホメロスの「イリアス」をドット絵のアニメーションにしろというタスクは見事にクリアした。
これと同じプログラムを同じ時間で書ける人間のプログラマーは存在しない。
となれば、果たしてクラウドのAIに一体いくら払う必要があるのだろうか。
さらにいえば、これまでクラウド上のAIサービスで、特に高価だった動画生成も、MiniMaxH3というオープンモデルでほぼ賄える。だとすると、クラウドの時代はいよいよ終焉に近づいているのではないだろうか。
今日のDevDayが、筆者にはまるで鎮魂歌のように聞こえた。