7月5日（現地時間）、Orangeブランドで知られるフランステレコム（France Telecom）が5ヵ年計画を発表した。4つの達成目標を十字軍にでもなぞらえてか、"conquest"（征服、遠征）という言葉で表現している。

1.従業員のプライドの征服（the conquest of the employee pride）
フランステレコムは2008年以来、50名以上の自殺者を出したことで職場環境や労働条件が大きな問題となってきた。新たな管理スタイルや人事制度などで従業員のモラルとプライドの回復を図ると同時に、複雑化したITシステムも刷新する。2012年までに従業員も1万人増やすという。

2.ネットワークの征服（the conquest of networks）
ここしばらく、フランステレコムはコンテンツ（サッカーの独占放送権など）やアプリケーション、さらにはインターネット広告などへの進出に躍起になっていたのだが、ネットワーク・インフラストラクチャーの充実という通信事業者の原点回帰を明確に打ち出した。2015年までにフランス国内で20億ユーロ（1ユーロ＝110.29円換算で約2,206億円）を投じて光ファイバー網を整備する。LTEの整備や、アフリカの太陽光発電式モバイル・アンテナを敷設するOryxプログラムのような「グリーン」ネットワークにも投資する。最近、フランステレコムは経営不振に陥っていた高級紙ルモンドを買収するのではないかと見られていたが、6月29日には撤退を表明している。

3.顧客の征服（the conquest of customers）
サービス品質と顧客接点の品質を上げることで、特に既存顧客の満足度を向上する。顧客にとっての「マルチメディア・コーチ」（マルチメディア活用の指南役）を目指すという。医療や教育分野、また、モバイルペイメントやモバイル送金などにも注力する。グローバルの顧客数は現在の約2億から50％増やして2015年までに3億を目指すという。

4.国際開発の征服（the conquest of international development）
新興国における売上を2015年までに倍増する。2009年末の時点で19カ国で操業している同社の新興国における顧客数は約5,000万、売上は34億ユーロ（約3,750億円）。主にアフリカや中東での成長を期待しているようである。例えば、エジプトで47％のシェア（1位）を持つ携帯電話会社のMobinilはフランステレコムの子会社だが、7月4日にはライバルのOrascom Telecom Holding（北朝鮮の携帯電話会社チェオ（CHEO）の75％を保有）からLinkdotNetというインターネットサービスプロバイダーを買収するなど、「征服」に向けた地固めをしている。

これらの新機軸にはすでに公表済みのものも含まれるが、新CEOであるStephane Richard氏の強いリーダーシップの下で行われた大きな方針転換と言えそうだ。

同氏はFinancial Timesに対して、「モバイルネットワークにおけるデータトラフィックの爆発的な増加により、（定額制で）無制限の料金プランでは経営できない」と語っており、「新たな」（つまりは定額制ではない）プランへの変更を検討していることを明らかにした。6月になって米AT&Tに端を発し、英O2（スペインのTelefonica傘下の携帯キャリア）が追随した定額制廃止の動きだが、Orangeに拡がれば、さらに大きなうねりになって各国に伝播しかねない。

【参照情報】
・France Telecom Unveils New Strategy -Telecom News Wire
・1年半で23人の自殺者を出したフランステレコムの待遇に、労組がスト決起
・France Telecom CEO Makes Content Strategy U-Turn -WSJ.com
・Mobinil Shareholders Approve Acquisition of Egypt's LinkdotNet -Businessweek.com
・仏紙ルモンド、左派系に売却へ　政権寄りグループが撤退 -asahi.com
・France Telecom hints at new web fees -FT.com
・米AT&T、スマートフォン向け定額制プランを廃止へ -ケータイWatch
・英キャリアO2も、スマートフォン向け定額データプランを廃止 -ITmedia News