インターネットユーザのリアルタイム行動分析サービスを提供する米ミックスパネル（Mixpanel）社（カリフォルニア州Mountain View）がiPhone向け分析ツール（iPhone SDKライブラリー）を発表した。

▼iPhone SDKライブラリーの利用イメージ

ちょうど1年前の2009年7月23日に始まったミックスパネルの分析サービスはWebサイト向けのGoogle Analyticsや、モバイルを対象にしたフラーリ(Flurry)社の分析サービスよりもずっと詳細にユーザの行動が分かり、A/Bテストやファネル分析（訪問者の離脱を調べる）が、簡単なコードでミックスパネルのAPIを叩くことで、綿密に行える。

ミックスパネルのサービスは、同じ出資者（Y Combinator）を持つスタートアップのPosterousやHeyZapなどが使っているほか、SlideやJustin.tvなど大手も利用しており、特にソーシャル・ゲーム開発メーカでの活用が多いようだ。Slideは出資もしており、また、PayPal共同創業者のMax Levchin氏もミックスパネルに50万ドル（1ドル＝87.01円換算で約4,350万円）を投じている。

ミックスパネルの分析ツールを使うと、例えば、ソーシャル・ゲームでは初期登録（サインナップ）の際にユーザに適切なチュートリアル（ゲームの遊び方の説明）を提供し、最初の段階で使い方に習熟してもらうことで、リテンション率（その後もゲームを続けてくれる率）が高くなることなどがはっきり分かる。

チュートリアルを試し始めたユーザが次のステップへ進むコンバージョン率は95％以上と際立って高いという。チュートリアルは通常、多くのステップに分けられているが、チュートリアルを始めてくれれば、最後まで完遂してくれるユーザが37.9％にも上るそうだ。ゲーム開発者からすれば、手間をかけてでもチュートリアルを作る価値があるということだろう。

ミックスパネルのiPhone分析が注目されるのは、アップル（Apple）のCEOであるSteve Jobs氏が、6月にカリフォルニア州Rancho Palos Verdesで開催されたD8カンファレンスで、ミックスパネルのライバルであるフラーリ社を強く非難したからだ。

今年1月、フラーリは自社のアクセス解析ツールを利用して、アップルが極秘裏に開発中の「タブレット」のオンライン・テストを「覗き見」した上に、これを公表してしまった。これによるとゲームのテストが際立って多く、エンターテイメント、ニュース、書籍などのアプリケーションも多くテストされていることから、新製品が仕事用というよりも遊びに重きが置かれているのではないかと「分析」していた。この発表はアップルの新製品（iPad）発表のわずか3日前だが、Jobs氏の逆鱗に触れる結果となった。

これに対してミックスパネルはアップルの設けた規約を注意深く調べて、自社の分析がアップルの規約にまったく抵触しないことを確認済みで、ミックスパネルを使ってiPhoneのアプリケーションのユーザ行動を解析しても、アップルから提供禁止などの処分を受けることはないとのこと。

iPhone分析ツールはすでに各社から出ている（Flurryのほか、Distimo、Motally 、Medialetsなど）。さらに、Web解析の分野で評価の高かったミックスパネルの参入で、iPhoneの使い勝手が向上するかも知れない。

・Mixpanel（ウェブサイト）
・Tracking iPhone applications - Mixpanel
・Mixpanel brings its analytics tools to the iPhone - VentureBeat
・Mobile app analytics without angering Apple: Mixpanel comes to iPhone - GOMO News
・D8 Video: Steve Jobs Explains His iAds Restrictions (And Blames Flurry) - All Things Digital
・Mixpanel: Social Game Developers Use Tutorials to Get Crucial Early Retention - Inside Social Games
・Apple Tablet: The Second Stage Media Booster Rocket（フラーリ社のブログ）