UAE（アラブ首長国連邦）の電気通信規制局（Telecommunications Regulatory Authority(TRA)）が、カナダのResearch In Motion（RIM）社のBlackBerryのデータ通信が違法だとの見解を明らかにした。データを国外に（つまりカナダなどに）蓄積することが、2007年に成立した「安全、緊急事態、国家安全保障」（Safety, Emergency and National Security）に関する法律に違反するという。BlackBerryのUAE上陸は2006年なので、この法律の1年前ということになる。

当局によると、UAEにおけるBlackBerryの全面的な禁止も検討されているそうだ。外国の事業者に電子メールが管理されることが、国家安全保障上、容認しがたいとのこと。25日に出されたTRAの声明によると、データを即座にUAE国外へ送ってしまい、外国の事業者の管理下に置いてしまうデバイスは、UAE国内ではBlackBerryのみ。また、利用者がBlackBerryのアプリケーションを悪用（misuse）すると、社会的、法的、かつ、国家安全保障上の影響をUAEに与えることになるそうだ。

UAEでBlackBerryと言えば、昨年7月に起こったスパイウェア事件が思い出される。UAE政府が60％を保有する電気通信事業者であり、モバイルのオペレータでもあるEtisalatは、UAEでBlackBerryサービスを提供しているのだが、あろうことか自社のユーザに対してネットワークのアップグレードと称してスパイウェアを送り込んだというのだ。当初はアメリカのスパイウェアと報じられていたもので、メールなどがBlackBerryから漏洩するおそれがあるとされた。

結局この「スパイウェア」はエラー発生が多かったばかりか、ソースコードの難読化がお粗末で、データをスヌープするコードがはっきり分かってしまったため、大事に至らず、「失敗」したのだが、RIMにとってはUAEが鬼門になっているようだ。そもそも電子メールをセキュアに送受できることがBlackBerryの強みなわけで、メールが違法とされてはRIMとしては立つ瀬がないのではないだろうか。

BlackBerryといえば、インドでは、6月末に、SkypeやBlackBerry、グーグル（Google）のGmailについてテロ対策で暗号情報を当局に提示するよう電気通信局Department of Telecom（DoT）から指示があったが、その後についても報じられている。7月初旬から15日以内と報じられたデッドラインが過ぎているのだが、26日になってRIM社からDoTに対して会談を求める書簡が出されたようだ。

UAEやインドの動きの影響もあってか、RIM社の株式は27日、4.2％下落した。

【参照情報】
・RIM Ends Down 4.2% As Comments By Foreign Governments Weigh -WSJ.com
・UAE Says BlackBerry Data Handling Violates the Law - PCWorld
・TRA: Ongoing efforts to Regulate BlackBerry and safeguard users' personal data（規制当局TRAの声明）
・Etisalat Blackberry upgrade 'spyware' - TheNational
・BlackBerry snoopers can explain everything Etisalat downloads smoke and mirrors - The Ragister
・UAEの『BlackBerry』にスパイウェア：メール等が漏洩する可能性
・UAE telecom body raises issue of BlackBerry misuse - gulfnews
・BlackBerry makers seek meeting with DoT - The Hindu Business Line
・インドは本気でSkypeやBlackBerryをブロックするつもりなのか
・India gets tough with Blackberry, Skype - gulfnews